第19話 噂でも怖いのは怖いです
冒険者ランクが上がって一週間が
「街の外にある屋敷のことは知っているか?」
「屋敷? ああ、ボロボロで薄気味悪いから誰も近づかないていう」
「そうだ、見た目もそうだが近づくだけで体調を崩す奴がいるらしい。この前は、顔が真っ青になって戻ってきた奴もいたんだってよ」
「まじかよ。でも、そんなことが起きているならそもそもそんな屋敷に近づいたりしないだろう」
「ああ。でも、あの屋敷の近くにはモンスターが多く出没するから依頼達成の為に行く奴が大勢いるらしい」
「だからって、屋敷に近づくのを注意しておけば良いだけの話しだろう」
「この話しの怖い所はそこなんだよ。どれだけ気を付けていても、いつの間にか屋敷の前にいるんだってさ。まあ、体調が悪くなるだけで死人は出てないらしいけどな」
「でも、そんな話し聞いたら屋敷近くの依頼は受けたくねぇな」
屋敷の話しを聞いた男は、依頼が張ってある掲示板から離れて、今日は気分が乗らないと言いながらギルドを出て行った。
「体調が悪くなる屋敷ですか、それの一体何が怖いというのか。理解に苦しみますね、優気様、どうしました?」
「あ、ごめん、僕ああいう、ちょっと怖い話し苦手なんだ。ははは、情けないよね」
「そんなことはありません。優気様が怖いのであればとても恐ろしいものなのでしょう。それでも、私が必ず守ってみせます」
「ありがとう、カルマ、頼りにしているよ」
「はい、お任せ下さい」
「主殿、主殿、私も全力で主殿を守らせて頂きます」
「うん、シルファもありがとう。元気出て来たよ」
「はあ、他の冒険者の方々も優気さん達のようであれば良かったのですが」
ギルドに設置している席で休憩していた優気達の所に、いつの間にかリアが近づいていた。
「リアさん、どうかしたんですか?」
「先程、他の冒険者の方達が話していた噂は聞きましたか?」
「はい、街の外にある古いお屋敷の話しですよね」
「実は、その屋敷の噂が予想以上に広まっていてですね、ギルドの方からも依頼を出してはいたんですが、誰も受けてくれなくて困っているんです」
「依頼の内容はどういったものなんですか?」
「屋敷の周辺と屋敷自体の調査です。モンスターを討伐する訳では無いので、危険な事は現時点では無いんですけど」
「誰も依頼を受けない訳だな」
「はい」
「ランクの設定が高いんですか?」
「いえ、Fランクでも出来るようにしてあります。報酬も少ないのでそれが原因の1つかもしれませんが。噂のおかげで街の人達からも早く調査して欲しいという声が増えてきていて」
「・・・それ、僕が受けても良いですか?」
「えっ? 良いんですか?」
「はい、丁度、依頼を何にするか悩んでいたので。それに、街の人達が困っているなら早く解決しないといけませんしね」
「ううっ、ありがとうございます。優気さんのような優しい冒険者初めてです」
「そ、そんなことは無いと思いますけど」
「そんなことはありません!」
優気の優しさに涙を流していたと思ったら、今度は両手で優気の手をがっしりと握りしめた。
「私は、貴方のような心から優しい人を知りません。優しさSランクです」
「あ、ありがとうございます」
「ランクの低い依頼ではありますが、どうか無事に帰って来て下さい」
「は、はい、頑張ります」
リアに手を握られ、恥ずかしさで顔が真っ赤になった優気。何とか返事を返す事で精一杯だった。カルマは、優気とリアの間に入って、2人を引き離した。
「貴様、優気様に慣れ慣れしいぞ」
「あ、す、すみません、つい」
「ふん」
「えっと、屋敷の調査の依頼は優気さん達が受けるという事で宜しいですか?」
「はい、行ってきます」
こうして、噂になっている古い屋敷の調査に向かう事になった優気達。人が体調を崩したり、いつの間にか屋敷の前にいるという現象が何なのか、原因を知る事は出来るのだろうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます