第12話 初依頼というのは思っているよりも重要です
食事が終わり、ギルドに向かっている最中カルマが優気に質問を投げかけていた。
「優気様、この後はギルドに戻って早速依頼を受けるのですか?」
「うん、そのつもりだよ。何か気になる事でもあるの?」
「いえ、そういうわけでは無いのですが、先程の食事では代金を支払わなかったので金銭には余裕がありますし、急いで依頼を受ける必要は無いのではと思いまして」
「ああ~、確かにお金に余裕は出来たんだけど・・・」
「どうかしましたか?」
「じ、実は、ワクワクしているんだ。冒険者になるなんて元いた世界では考えられなかったから。だから、早く冒険したいなぁ~と思って」
「なるほど、そういう事でしたか」
「ごめんね。僕のわがままに付き合わずに、2人は自由にこの街を見て回っていても良いんだよ?」
「いえ、優気様のやりたい事は私のやりたい事と同じですから。一緒について行きます」
「私も、主殿について行きます。先程は空腹のあまり醜態をさらしてしまったので、主殿の為にこの身を存分にお使い下さい」
「シルファは、大袈裟だよ。気にする必要無いのに」
「醜態を晒すのが先の1回で済めば良いがな」
「何が言いたい?」
「優気様に危険が降りかかろうとした時に、きちんと対処出来るのかという事だ」
「当たり前だ。この身を犠牲にしてでも主殿を守る。貴様は、どうなんだ?」
「私もこの命を失ってでも優気様を守ってみせる」
カルマとシルファの2人が、言い争いをしていると優しい口調だが少し怒りも入っているような声で優気が間に入った。
「2人共、僕のために何かをしてくれるのは嬉しいけど、命を懸けようとしないで。自分の命を大切にして、どんな状況でも生きようとして」
「しかし、優気様、私もシルファも貴方に命を救われました。優気様がいなくなってしまったら私は・・・」
「僕も一緒だよ。僕も2人がいなくなったら嫌だな。まだ、一緒に過ごした時間は少ないけど、大切だと思う気持ちは本当だから」
笑っているが何処か寂しそうな表情をしている優気を見て、カルマとシルファも自分達の発言をもう一度考え直した。
「申し訳ありません、主殿。私も主殿と別れたくありません。なので、自分の命も大切にしながら主殿を守ろうと思います」
「うん、そうしてくれると嬉しいな」
「私は、命を
「僕もずっと傍にいて欲しい。・・・2人ともありがとう。さて、この話はここでおしまい。それに、いきなり命の危険に晒される事は無いはずだよ」
優気は、前を向き少し足早になりながらギルドの方へ向かっていった。
優気達は、ギルドに付きすぐに中に入った。ギルドに入ったは良いが、依頼をどうしたら受けられるのか考えていると、エルが近づいてきた。
「やあ、十分な食事は取れたかな?」
「はい。とても、美味しい食事を食べられる場所に行けました」
「それは、良かった。それで、ここに来たってことは依頼を受けに来たのかな?」
「そうなんです。でも、依頼を受けるにはどうしたら良いのか分からなくて」
「依頼は、基本的にあそこにある掲示板から選んで受付に行って受注することになる」
エルが、指をさす方向を見ると確かに掲示板があり色んな紙が張ってある。冒険者らしい人物達が、実際に紙を選んで受付に持って行っているのが分かる。
「なるほど、それじゃあ僕達も選んで来ます」
「あ、ちょっと待ってくれ」
「はい?」
「君達が来る前に、私が良さそうなのを選んでおいたんだ」
「わざわざ、ありがとうございます」
エルから一枚の紙を受け取り内容を確認する。
「えっと、依頼ランクFで薬草採取の依頼ですか」
「ああ、初めての依頼の中で比較的安全で達成しやすい物だよ」
「へぇ~、そうなんですか。他の冒険者の人達もこう依頼から初めているんですか?」
「う~ん、昔はそうだったんだけどね。最近は、冒険者になるやすぐにモンスター討伐の依頼を受ける人が多くてね。こういう薬草採取の依頼を受ける人は減って来てるかな」
「なら、お前はあまり物依頼を優気様にやらせようとしているのか?」
「こら、カルマ」
「いやいや、余っているのは事実だけど理由は別だよ。モンスター討伐の依頼を受ける人達が増えているとは言ったけど、そのほとんどが大けがをして帰って来ているんだ。Fランクの依頼とは言っても実力にあっていないモンスターと戦えば、無事には済まない」
「実力が無いのだから当たり前だな」
「でも、この薬草採取は割と簡単に薬草が見つけられる上にモンスターとの遭遇も少ない。それに、薬草が採れるエリアは強いモンスターがいないから、冷静に対処すれば十分に討伐出来る」
「なるほど、つまりこの依頼を最初に受けると冒険者の在り方が分かると?」
「そこまで強い効果があるわけじゃ無いけれど、少なくとも知識がある状態でモンスター討伐の依頼を受ける事が出来ると思うよ。つまり、成功率も変わってくる」
「ふむ、確かに私達もこの街の近くのモンスターがどういった物かは知らないからな」
「とはいえ、選ぶのは優気君自身だけどね。どうする、この依頼を受けるかい?」
「はい、もちろん、受けます」
「即答だね。もう少し、悩まなくて良いのかい?」
「だって、エルさんが選んでくれた依頼ですから。冒険者の方々を心配しているエルさんが選んだ依頼なら間違いありませんよ」
「・・・ふふふ、そんな風に言われたのは初めてだよ」
優気の発言に少し驚き、思わず笑ってしまったエル。エルの様子を見て、何か自分が変な事を言ったのかと不思議そうに首をかしげる優気。
「君は、他の冒険者とは何か違う気がするよ」
「そうですか?」
「ああ。その依頼は私が受け付けの方に言っておくから、すぐに出掛けても大丈夫だよ」
「ありがとうございます、エルさん。行こう、カルマ、シルファ」
「はい、優気様」
「了解です、主殿」
優気は、少し興奮気味にギルドを出て、その後をカルマとシルファも追いかけて行った。優気が異世界に来て冒険者になり初の依頼である。
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