第8話 冒険者登録出来ました
優気は、カルマに言われた通り2人の事を話した。自分が転生者であることは上手く隠しながら。
「つまり、今君の隣に座っているのはモンスターで、しかも1人は伝説級の存在だと」
「はい、そうです。あっ、でも、大丈夫です。2人ともちゃんと自分で考えて行動して何が悪いのとかも分かっているので」
「そ、そうか。ははは、これは予想以上だった。九尾の存在だけで十分驚いたけど、まさかフェンリルもテイムしてるなんてね」
「何か問題がありましたか?」
エルは、笑ってこそいたが優気の話しを聞いて流石に動揺を隠し切れていなかった。
「う~ん、問題というか、伝説級とは言わないまでもフェンリルも相当厄介な存在でね。モンスターの中でもランクはSランクなんだよ。ちなみに、伝説級はランクが測定不可能なモンスターのことね」
「2人って、そんなに凄い存在だったんだね」
「人間が勝手に付けたランクなど気にしていませんが、優気様が褒めて下さるのなら悪くないものですね」
「狐より下なのは気にくわないが、確かに主殿に褒められるのは嬉しいですね」
「うん、2人とも凄いよ」
優気は、2人の頭を優しく撫でてあげた。頭を撫でられ2人とも、心地良い表情を浮かべていた。
「本来なら危険な存在な筈なのに、目の前の光景はとてもそんな感じには見えないな」
「でも、エルさんはそんなに驚いている感じはありませんね」
「いや、頭の整理が追いついていないだけかな。大声で叫びたいくらいには驚いているよ」
「・・・それだけ驚く話しなのに信じてくれるんですか?」
「確かに信じられない話しではあるけれど、君は嘘を付ける人間じゃないでしょ?」
「流石に僕も嘘を付かないような人間では無いですけど」
「ふふふ、とにかく君のことは信用出来る人間だと判断したよ」
「そうですか? エルさんにそう言って貰えて嬉しいです」
「本当は、もう少し話しを聞きたかった所だけどまた今度にさせてもらうよ」
「分かりました」
「それじゃあ・・・」
エルは、胸のポケットからカードを取り出し優気に見せた。優気は不思議そうにそのカードを見る。
「これは?」
「君の冒険者カードだよ」
「えっ!?」
驚いている優気にエルは持っていた冒険者カードを渡した。カードを受け取った優気はマジマジとカードを見る。カードには、名前や職業などが書かれていた。
「うわぁ、これが冒険者カードか」
「良かったですね、優気様」
「うん!」
「そんなに喜んで貰えるとは思わなかったな」
「すみません、初めて見た物だから何かこうワクワクしてしまって」
「気にしないで、むしろ新鮮な反応が見れて良かった。最近じゃ、冒険者になること事態は簡単だから君みたいに喜んでいる人はいなくてね」
「何だか、少し恥ずかしいな」
エルには気にしない様に言われたが、恥ずかしさで顔が少し赤くなり体温も上がっているのを感じた。まだ、少し顔が熱かったが両手で持っているカードをもう一度、今度は大人しくしながら見ていた。よく見ると、Fという文字が書かれているのが分かった。
「エルさん、カードに書いてあるFというのは一体何ですか?」
「ああ、それは君の冒険者ランクだよ」
「冒険者ランクですか?」
「そう。さっきモンスターのランクについて話したけど冒険者にもランクがあってね、一番下がFランクで順番に上がっていって一番上がSランクていう風になっているんだ」
「なるほど、じゃあ僕は冒険者になったばかりだからFランクからスタートってことですね」
「その通り、ランクを上げるには基本的にギルドからの依頼を多く受けることで上げられるよ。普通に過ごしている分にはFランクのままでも十分だとは思うけど」
「ランクを上げると何か良いことでもあるんですか?」
「ギルドからの依頼を達成するとそれに見合った報酬を貰えるわ。難しい依頼ほど報酬も上がるけど、そういった依頼を受ける為には適切なランクを持っていなきゃギルドからは許可を出せないことになってるんだ」
「え~と、つまり・・・」
「もし、Cランクの依頼を受けたい時は冒険者のランクが最低でもCじゃなきゃ受けられないことになるわ。BやAランクでも受けられるわね」
「このままの僕のランクだと同じFランクの依頼しか受けられないけど、Eランクに上がった場合は、EとFの依頼をどっちでも受けて良いことになるってことですか?」
「うん、実際ランクの高い人でもあえて低めの依頼を受けてコツコツと報酬を貰っている人もいるよ」
「危険なことは出来るだけ避けたいですもんね」
「普通はね。でも、逆に危険な依頼ばかりを受ける冒険者達もいるんだ。毎回、凄い傷だらけで依頼の報告をしに来るよ」
「・・・何だか、凄いですね」
「私は、遠くから見ていることがほとんどだから良いけれど、受付にいる子達は大変だろうな」
「け、怪我をしないように頑張ります」
「是非、そうして欲しいな。冒険者だから怪我をしないなんてことは無いだろうけど、そうやって心掛ける事で最悪の事態は回避出来る可能性があるかもしれないから」
「少し怖くなってきました」
「大丈夫です。優気様に降りかかる災いは、全てこのカルマが祓ってみせます」
「私もです、主殿。何があろうと全力で貴方を守ってみせます」
「ありがとう、カルマ、シルファ」
「確かにその2人がいれば、大丈夫かもしれないわね」
「はい!」
「他にも冒険者ランクを上げるとプラスになることはあるけれど、それは君がランクを上げて行く度に教えることにするよ」
「分かりました、ありがとうございます」
「冒険者カードはもう発行したから依頼は今から受けられるけど、どうする?」
「そうですね・・・」
優気が依頼をすぐに受けるかどうか悩んでいると、ぐぎゅるるるる~~~~! という大きなお腹が鳴った音がした。音がした方を見るとシルファがお腹を両手で抑えて少し恥ずかしそうにしていた。
「す、すみません、主殿」
「全く、お前という奴は」
「し、仕方ないだろう。抑えきれなかったのだ」
「気にしないで良いよ。依頼のことは、ひとまずお昼ご飯を食べてから考えることにします」
「うん、その方が良いと私も思うよ」
もう鳴らないようにと必死にお腹を押さえているシルファに呆れた顔を向け注意をしているカルマ。優気とエルは笑顔でその様子を見ていた。
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