第二話 盃を交わそう
「出られないって、どういう事だよ……。」
「そのままの意味です。」
驚き、悲観、そして怒り。数多の感情が混ざり、どうにかなってしまいそうだ。
「この霧は私、竹内花音を閉じ込める結界です。先代の神主である私の父が作った結界は強力です。今まで歪みも生じず、二十四年間ずっと稼働している結界です。そう簡単には壊せません。」
花音は何かを睨み付けるような表情で語った。その何かは、俺は深く考えないようにした。いや、したくなかった。
そう考えると、さっきまでの感情なんてバカバカしい。滑稽極まりないものだ。花音の方が重い。
「そんなことより、お酒を用意しましたので一緒に飲みませんか?」
花音は熱燗二本と一瓢の瓢箪をおぼんに載せて縁側に座り込む。
「隣どうぞ。」
と、手招きする。
「今日はよく月が見れます。」
ふと、花音がそんなことを言った。確かに、綺麗な満月だ。だが、その言葉は何か引っかかる。
「霧が濃いのに、何故月が見えるんだ?」
すると花音はコホン、と咳払いをする。
「まあ、創られた世界、ですから。霧はただの幻でしょう。」
淡々と述べ、一口啜る。酒は強いらしく、熱燗一本でも涼しい顔をしている。
すると、瓢箪の酒をいきなりラッパ飲みし始めた。
「お、おい、大丈夫か……?」
だが止めに入った時には、もう遅かった。
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