第二話 霞掛かる神社

 やけにその日は肌寒かった。薄い上着が欲しくなるほどの寒さだ。


「へっきし!!」


 思わずくしゃみが出てしまうほどだった。日はまだ東の方で、顔も完全に出していなかった。歩みを止めず、幾日いくにちも洗っていない黒髪をかじりながら、どこかに向かって歩く。すると、どんどん辺りが霞んで来た。気付くと、辺り一面に霧が掛かっていた。終わりも見えなければ光も見えない、濃い霧だった。息も切れ始め、体力も削られていった。ここで果てるのかと思ったその時、ぼんやりと赤い門のような物が見えた。それは鳥居だった。


 俺は建物がある事を大いに喜んだ。鳥居なので、恐らくは神社であろう。10段程の石の階段を上ると、こじんまりとした神社と、中々に広い平屋建ての家があった。神社は見た目とそぐわず、5畳の部屋位の広さで、平屋建ての家も20坪位の広さだった。小銭もないので神社には礼拝のみし、平屋建ての家の前に立つ。


「こんにちはー。誰か居ませんかー?」

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