第46話 何か変わった?

「マスター最近、何か変わった?」


「えっ! わかります? 髪型変えたんですよ!」


 最近少し落ちこんでたマスターが、顔を上げ、嬉しそうに、話しかける。


 ここは、ザーマシティから遠く離れたリューギャー王国にある、マスターが魔族の侵攻が何故か止まったので、暇な為に始めた呑処キャットハウスの出張店。


 やることなくて暇を持て余したキャットハウスの常連客が、昼間からくだを巻く。


「いや、そうじゃなくて」


「えっ!」


 再び、マスターが、肩を落とす。それに構わず続ける。そう、わたしは、ザーマ神殿に所属する神父……。ということになっている。


「じゃなくて、店の雰囲気かな? 変わってない?」


「そうですかね? 特に内装変えてないんですけど。それより、髪型が……」


「そうか~。変わってないか。なんか違う気がするんだけどな〜」


 わたしは、周囲を見回す。店は、ザーマシティのキャットハウスにそっくりだ。確かに内装に変わりは見られない。


「となると」


 わたしは、今度は、来ている常連客を見渡した。わたしの隣には、狩人マスターゴトー、そして、反対の隣には、バッカスオサダさんがいる。そして、奥のテーブルには、二組のグループが、勇者アオ達と、賢者グレン達だ。



 勇者アオ達は、テーブルで陽気に騒いでいる。勇者アオ、戦士……。


「先生! 何? その目は。誰だっけって顔しないでもらえます。俺、タクです。タク」


 そうだった戦士タク。そして、おやじさん事、剣聖シロ、そして、再加入した狩人ハッタ。ハッタってあんな格好だったっけ?

 腕や顔、見える範囲がタトゥーだらけだ。


「ハハハ! まじ雑魚ですよね先生。弱いやつ程、虚勢はるんですよ」



 とゴトー君が、笑いつつ同意する。心でも読めるのかな?


「先生。声に出てますよ~。心の声が」


 と、マスターに言われてしまった。どうやら心の声が、だだ漏れだったようだ。


「あ。そう。ごめん、ごめん。そして、貧弱な……」


「貧弱言うな! 先生まで言うか。こらっ!」


 何故か、魔術師ユナが、立ち上がって怒っている。何故だろう?


 そして、そろそろと近づいてくる聖女こと、馬鹿弟子は、ほっておいて。


「あっ、ひどい〜。わたしも〜。よ・ん・で」


「はいはい」


「あ〜!」


 騒ぎ立てるが、相手していたら終わらないので、とりあえず無視。


「ひどい〜!」


 これが、勇者アオグループ。そして、もうひとグループは、童貞賢者グレンと愉快な仲間達。


「なんですの。その愉快な仲間達というのは。一緒にしないでくださいな」


 と叫ぶミドリーヌ。相変わらずのすさまじい香水の香りだ。そして、


「失礼な。私も童貞ではありませんよ。この間、濃厚な夜を……」


「そんな話、聞きたくないわ!」


 珍しく怒鳴るゴトー君。


「そうだよね。ゴトー君、この前……」


「マスター、その話はやめて」


「そうか。ごめん、ごめん」


 というわけで、童貞グループも全員いる。さて?


「童貞グループでも、ありませんのよ!」



 その時だった。戦士タクが、


「そう言えば、最近カミヤ見ねーな」


 私と、マスターの視線が合う。


「それだ!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る