第45話 勇者カミヤと新イブリオン

「はい、先生。これは、釣ってきたグロマを軽く炙って、カルパチョ風にしたやつです」


「うん、美味しい。流石にマスターだね。やっぱりマスターの料理は、美味しいよ」


「ありがとうございます」



 ここは、リューギャー王国、王宮の1室。マスターが、借りてキャットハウスリューギャー支店を開いたのだった。うん、やっぱりマスターの料理は、美味い。そして、マスターが、話しかけてくる。


「そう言えば、先生、見に行きました? 新イブリオンの映画?」


「いや、まだですね。でも、時間ありそうだから見に行こうかな」


「是非、良かったですよ〜。早く見に行ってください。話したいな〜」


 新イブリオン。とは、創世神話をモデルにした、アニメ映画で、今回いよいよ完結するらしい。わたしも、その前までの作品は、見たので、自然とその話になった。



「そう言えば、マスターは、神の子達が成長しないって、新設定出てきたじゃないですか? あれって」


「そうですね〜」


 その時だった。わたしの隣に座っていた、勇者カミヤが、話し始める。


「そう言えばさ〜、マスター! 明日からリューギャー王国のお偉いさん達が、俺のこと、近くの温泉街に連れてって くれるんだって!」


「へ〜。良かったですね。で、先生あの設定ですが」


「それでさ〜。どこか美味しい店あるかなって思って、マスター知ってる?」


「知りません。ちょっと意外ですよね。まあ、今回の結末見れば納得すると言うか」


「それでさ〜、マスターさ〜。リューギャー王国のお偉いさんさ〜。スゲェのよ。金持ってんのよ。財閥だよ」


「なるほど〜。早く見に行って話したくなってきましたよ、新イブリオンの話」


 わたしが、そう言った時だった。勇者カミヤが、カウンターに置かれていた。木彫りの置き物を掴んで、話し始めた。


「マスター、先生さ〜。俺にとって新イブリオンは、これだから」


「カミヤさん、どういう意味ですか?」


「だって、見た事ないからさ〜。俺にとっての新イブリオンは、これなの」


「はあ?」


 わたしと、マスターは、顔を見合わせて、一応考えるも、意味が分からなかった。


「こういうのが、戦ってんだろ、イブリオン」


「いや、違うんですよ」


「先生、カミヤさんに説明しても無駄ですよ。どうせ、興味ないんですから」


「そう、興味ない。で、さ、マスターさ〜」


 マスターが、少しムカッとしたのか、少し強く言い放つ。


「カミヤさん、興味無いんだったら、黙っててもらって良いですか?」


「なんでよ〜。俺の話も聞いてよ〜」


「だったら、もう少し先生と話したら聞きますから」


「そっか。でさ〜。久しぶりなんだよ、温泉さ〜。楽しみでさ〜」


「はあ〜」


 マスターの地の底から、響くようなため息が、キャットハウスリューギャー支店に響いた。

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