第43話 勇者カミヤとカジノの冒険

「着いた〜!」


「ようやくですね」


「ほんとだよ」



 口々に話しつつ、飛行船のタラップを降りる。





 そして、出迎えの国王や、役人を見つけると、勇者カミヤを先頭に



「いや〜。遠いね。疲れちゃったよ」


「はい、ご苦労さまでした。まずは、ゆっくりお休みください」


「ダメダメダメ。まずは、こう冷たいビールをきゅうーっとしないと! リューギャーと言えば、オロオンビール。あのスカスカな感じが良いのよ!」



 勇者カミヤが、褒めてるのか貶しているのかわからない感じで話す。



「かしこまりました。早速準備します」






 こうして始まった。勇者カミヤと、その仲間達の歓迎会。リューギャー王国は、海に囲まれた島国。近海で取れた魚と、オロオンビールが振る舞われた。



「ゴクッゴクッゴクップハーッ。やっぱ上手いね、このスカスカビール」



「そうですね。暑いこの国では、ちょうど良い感じですよね」


 と、わたしが、一応フォロー。しかし、あんまり細かいことを気にしないのか、リューギャー王国の人々も気にしていない。そして、マスターと狩人マスターゴトーは、



「マスター、この魚だけ、旨いっすね」


「確かに、この魚だけは旨いですよ。これ、なんて魚ですか?」


「はい、これは、グロマって魚です」


 と、リューギャー王国の料理人が答えると、ゴトー君が、


「この魚って、近くで釣れます?」


「はい、結構普通に釣れますよ」


「マスターいっちょやっちゃいますか」


「良いですね〜。爆釣して、明日はグロマパーティですよ! ハハハハ」




 なんて、盛り上がっていた。




 わたしは、オロオンビールと、泡酒と呼ばれるお酒だけなので、オロオンビール数杯飲んで、部屋に戻ろうかと立ち上がった。すると、




「そう言えばさ〜。リューギャー王国って、あれっ、あんの?」


「えーと、あれとは?」


「あれは、あれだよ、カジノ!」


「ああ、ございます。案内しましょうか?」


「いいね〜。あれっ、先生は? まいっか。オサダさん、行くべ、行くべ!」


「えっ、ちょっと!」




 ガチャガチャと音がして、カミヤさんと、オサダさんが出て行ったようだ。




 わたしは、部屋に戻ると、ベッドに横になった。遠くから、宴会の声が聞こえていた。




「三つ星かざして高々と〜。ビールに託したうちなーの~。夢と飲むから美味しーさー。オジー自慢のオロオンビール!」








 そして、夜中、大爆音で、飛び起きる。見ると、次々と、大きな火球が、夜空に上がっていた。




 わたしは、慌てて着替えると、飛び出して、宮殿の外に出た。宮殿内は、あれだけの轟音にも、飲み過ぎて倒れている人か、さらに飲み続けて泥酔している人かしかいなくて、反応が無かった。






 そして、



「オサダさん! 何が起こったんですか?」


「ああ、先生。すみません。飲みすぎちゃって!」


「えっ!」



 あの大爆音は、緊急事態では無く、ただ酔っ払ったオサダさんが、嘔吐爆炎砲を打ち上げているだけだった。あれっ、そう言えば。



「で、カミヤさんはどうしたんですか?」


「えっ、カミヤ? えーと、あっ一緒にカジノ行って。えーと、まだやってんじゃないんですかね」


「そうですか。だったら良いんですが。じゃあ、早く寝てくださいよ」



 そう言い残して、その場を離れた。




 わたしは、部屋に戻ろうかと思って歩き始めたが、気配を感じ、少し宮殿の外へ出て歩き始めた。そして、



「気配は、この辺ですが」




 すると、小声で



「先生、先生、こっち、こっち」



 わたしは、声がする林の中に入った。すると、そこには、全裸で葉っぱ1枚で大事な部分を隠している。勇者カミヤがいた。



「カミヤさん、何があったんですか? まさか、追い剥ぎに?」


「いや〜。そうじゃなくてさ」


「はい?」


「えーと、オサダさんに頼んだんだけど、戻って来なくてさ」


「はい?」


「あの、カジノですっちゃってさ。で、聖剣をかたに取り返そうとしたんだけどさ」


「それで?」


「先生、怒ってない? ハハ、それで、今度は、聖鎧を」


「で?」


「負けちって」


「負けちって!」


「全裸なっちった」


「はあ?」


「で、お金貸して、最後の大勝負を」


「駄目です! お金貸しますけど、聖剣と、聖鎧を取り返しましょう」


「えっ。はい。よろしくおねがいします」




 こうして、わたしと、葉っぱ1枚の勇者カミヤは、カジノに戻った。こんな時間でも、まだ、カジノは、混んでいた。



 笑いが巻き起こる。



 わたしは、カジノの元締めの座る台に近づき。




「すみません。あそこにいる葉っぱと一応仲間なんですが」


「先生〜。俺、葉っぱじゃないよ〜」




 と、か細い声が聞こえるが、とりあえず無視。



「あ〜。あの葉っぱか。なんか、剣だの、鎧だの、服だのをかたに、お金お貸ししたんだけど。負けちゃったんですよ。どうします?」


「はい、聖剣とか、聖鎧とかをお金払うんで返して頂けないかと」


「えっ。あれって、聖剣と聖鎧だったんですか? そんな大事な物を。わかりました。お貸しした金額でお返ししましょうか?」


「ありがとうございます。助かります」


「えーと、剣が、200万ゴールドで、鎧が300万ゴールド。そして、洋服、下着が」


「あっ、最後のはいりません」


「えっ!」



 勇者カミヤと、元締めの声がかぶる。そして、



「まいど!」



 わたしは、お金を払い聖剣と聖鎧を取り戻した。そして、



「先生〜。これ大事な所出ちゃってるよ」



 プレートアーマーに、ガントレット、そして膝当て、脛当て。それを、全裸で纏うと、大事な所が露出した変態が出来上がった。




「じゃあ、カミヤさん帰りましょう」


「えー。先生。服も返して貰ってよ。これじゃ、帰れないよ」


「わかりました。じゃあ、モザイクになる魔法をかけます」



 そう言って、わたしは、勇者カミヤの露出部分がモザイクになる魔法をかけた。



「これで良いでしょ。帰りますよ」


「先生さ〜。怒ってる? えっ、ちょっと待って。先生〜」

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