第41話 勇者カミヤの旅立ち
「魔族軍の侵攻は止まらんか?」
「はい、各地から勇者や、冒険者達も集まっているのですが、なかなか強力な軍勢で、侵攻スピードを落とすので精一杯のようです」
「どうしたものか?」
「あの〜」
「どうした?」
「はい、わたくし、噂で最強勇者が、カナリア王国にいると聞いたことがあります。ただ……」
「ただ、どうした?」
「はい、性格が最悪だと」
「う〜ん。やむを得ない。性格悪かろうと、頼むしかあるまい」
「はい、かしこまりました。そして、仲間もいるそうなんですが。あの〜」
「まだ、問題があるのか?」
「はい、あくまで噂なのですが。その仲間が親の前で子を捌く、残虐料理人。食えるんだったら、何でも殺戮、暗黒の殺戮人。首を斬っては付け替えて遊ぶ、悪逆神官。そして唯一の良心。酔っ払い武闘家だそうで……」
「なに! そんなのを我が国に呼んでも大丈夫なのか? う〜ん。しかし、このさい仕方があるまい。滅ぶんだったら、同じこと。さっそくその勇者と仲間達を召喚するのだ!」
「はっ、かしこまりました!」
「マスター。しかし暇ですね〜」
「先生も、ですか? うちの店も大変ですよ。ここまで、冒険者に依存した店だったんですね〜」
ある日、僕はキャットハウスに来ていた。しかし、店に客は僕1人。勇者アオ達も、賢者グレン達も、魔族軍に対する為に旅立ってしまった。なので、常連客は、僕と、勇者カミヤ、そして、バッカスオサダと、狩人マスターゴトーくらいだ。そして、彼らも、主力の冒険者がいなくなった事で、毎日大忙しのようだ。
「これだったら、魔族軍のそばにいって店やった方が、良いですかね?」
「攻められる度に移動するの大変じゃないですか?」
「屋台なんてどうですかね?」
「それだったら、良いかもしれませんね」
「でしょ。では、さっそく準備を」
マスターは、店の裏で何やら始めた。僕は、その音を聞きつつ、静かにワイングラスを傾ける。すると、
「疲れた〜! マスターお疲れ! あれっ?」
「お疲れ様、カミヤさん。マスター裏にいますよ」
「先生、お疲れ! マスター! ビール頂戴!」
勇者カミヤの大声が響きわたり、マスターの響かせていた音が止まり、マスターが入ってくる。
「お疲れ様。カミヤさん。すみません、さっそく準備しますね」
そう言うと、ビールを注ぎ、カミヤさんに出す。
「じゃ、乾杯! そうだ! マスターも何か飲んでよ」
「ありがとうございます。では、頂きます」
こうして、3人で飲み始めたのだが、しばらく雑談しつつ飲んでいると、カミヤさんが、僕達に、手紙を見せる。
「なんかさ、俺リューギャー王国に招待されちゃってさ、やっぱり俺の力が必要だってさ」
「カミヤさんも、いなくなっちゃうんですか。寂しくなりますね」
「いや、マスターや先生にも来てほしいっぽいよ。まあ、俺、文字読めないから、読んでもらった感じだけどね」
そう言いつつ、カミヤさんは、わたしに手紙を渡してきた。
「カミヤさん。文字読めないんですか?」
「いや、一応読めるんだけど。読んでると、蕁麻疹出ちゃってさ」
「そうなんですか」
わたしは、手紙を受け取って目を通した。なになに。
「勇者カミヤ殿、我が国を助けてほしい。そちらに飛空艇を派遣するので、よろしく頼む。なお、評判のお仲間もご同行されたし。残虐料理人。えっと、マスターのことですよね?」
「えっ? 誰が残虐なんですか?」
「暗黒殺戮人。これは、ゴトー君かな?」
「そうですね」
「で、悪逆神官……。誰でしょう?」
「おそらく、先生かな?」
「この人、死にたいんですかね?」
「先生、顔怖い! スマイル、スマイル」
「そして、酔っ払い武闘家。これは、オサダさんですね。で、それぞれに充分な報酬を用意しましたので、是非お越し下さい。リューギャー王国国王オトーリ。だそうです」
「お店暇ですし、行きましょう。屋台飛空艇に積んでも大丈夫ですかね?」
というわけで、勇者カミヤ一行はリューギャー王国に向かって旅立つことになった。
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