第40話 聖女の行進

「現聖女であらされる、マミ様がザーマ神殿を訪れられる。皆で、急いで準備をするように!」


「はい!」







「聖女様も、引退でしょ。その為の巡行って話だよね」


「うん、うん、聖女様も30歳か〜」


「18歳から12年間か大変だったよね」





 なんて、話が聞こえてくる。聖女、天にまします我らが父に選ばれた存在。清らかな身で、様々な奇跡を行い、人々に尽くす存在。元々は、勇者を導き助ける存在だったのだが。今は、教会に所属している象徴のような存在だ。その聖女も、30歳。引退をむかえ、最後の顔見せに回っているのだ。







 そして、当日、聖女様がやってくる。普段は、馬車に乗っているのだが、今回は、なぜか、馬にまたがっている。黒いサラサラの長い髪に、綺麗な大きな愛らしい眼、キメの細かい肌。今でも若々しく、美しい顔。そして、何より大きな胸! 





 馬が歩く度にブルンブルンと揺れている。カミヤさん、見てたらなんて言うんだろうか。しかし、知り合いだが、馬じゃなくて、馬車に乗っていつものように静かに行進すれば良いのに。男性の目が胸に集中し。女性は自分の胸を眺め、ため息をついている。







「先生〜!」


 聖女様は、ザーマ神殿に入ってきた瞬間叫び声をあげて、全力で走ってくる。聖衣の裾が捲り上がり、白い太ももが見えていた。そして、その爆乳が激しく揺れる。バイン、バイン、バイン。



 そして、止まらずにジャンプしてしがみつく。わたしに。大きな柔らかい胸の感触が顔に。ムニュ。




「聖女様が、はしたないですよ」


「え〜、良いじゃん。わたしと先生の仲だし」


「誤解を招くような言い方は、やめなさい」


「は〜い」





 聖女様は、腕を離して降りる。そして、後ろを振り向き茫然としている。司祭に向って。



「出迎え御苦労であった」


「はっ」


「で、明日より、わたしは聖女ではない。新しい聖女が帝都にて就任式を行う。あまり気を使うでない」


「はい、かしこまりました」


「あとは、先生が世話してくれる。わたしの清らかな身も、今日で最後じゃ。ぐへへ」


「は?」


「聖女様!」



 聖女様は、こちらに振り向くと、品を作りつつ、甘えた声でわたしに話かける。




「さあ、先生、い・き・ま・しょ」


「えっ、どこへですか?」


「あー、先生のエッチ。まだ、早いから」


「聖女様! いい加減やめてください!」


「だ・か・ら。キャットハウス行きましょ」


「あーキャットハウスですね。良いですよ」


「やった」





 そう言うと、聖女様は、わたしの腕に手をまわし、胸を押しつける。やめてくれ〜。周囲の司祭が、神父が、シスターが凄い表情で、見ている。







 わたし達は、ザーマ神殿を出て、キャットハウスに向かう。




 そして、扉を開ける。早い時間のため、お客さんは、誰もいなかった。



「先生、お疲れ様、で、す?」


「マスター、お疲れ様」


「マスター、よ・ろ・し・く」


「えーと、よろしくお願いします」


「ああ、こちら一応聖女様です」


「先生、聖女様って呼んじゃいやっ。マミって呼んで」


「はいはい」


「えっと、聖女様ですか、先ほどお見かけしましたが、良いのですか?」


「マスター、何が?」


「出歩かれても良いのかと」


「ああ、明日新しい聖女様が、就任するから、良いんじゃない? 古いのは」


「先生ひどい。古いって! プンプン」





 ああ、頭痛くなってきた。どうもついていけない。ええい、面倒くさい。



「すみませんでした。ええっと、飲み物何にされますか?」


「いつもので」


「いつものって、赤ワインですか? じゃあ、わたしも」


「はいよ!」





 わたしと聖女様の前にワイングラスが置かれる。そして、


「聖女様、お疲れ様でした、乾杯!」


「先生、会いたかった、乾杯!」





 久しぶりの再会で興奮状態だった聖女様も、少し落ち着いてきて、聖女時代の苦労話などで、マスターと3人飲みながら盛り上がってくる。思い出話に花が咲き。わたしも、少し思い出にひたる。





 そして、その時だった。勢い良く扉が開く。



「お疲れ! マスター! あっ先生も!」


「お疲れ様です。カミヤさん」


 カミヤさんは、カウンター席に座りつつ話始めた。



「それよりさ〜、マスター、今日見た? 聖女!」


「えっと」


「あれだよな、すげー胸だよな! 業界風に言うと、パイ乙かいでーだよな!」


「あのカミヤさん」


「馬乗ってから、すげー揺れんの。ブルンブルン言ってたぜ、ブルンブルン」


「カミヤさん!」


「ん、どったのマスター? ああ、あれか、マスターも好きなの?」



 そう言うと、カミヤさんは、自分の胸の前に手のひらを広げ、胸の形を作り、揺らす。



「ゆっさゆっさしてて、触ってみてーなー。柔らかいんかね?」


「カミヤさん! 先生の隣に!」


「あれっ、ごめん先生。女性連れてたの? えっと、どなた?」


「はじめまして、パイ乙かいでーの聖女です」


「えっ、えっええー!」



 カミヤさんの、驚きの声が響く。

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