第31話 ミッタの野望

「俺、自分変えたいんすよ」


「へえー。どうやって?」


「あれっすよ、インドールに行きたいんですよ。人生変わるって言うじゃないですか?」


「うん、聞くけど」


「俺の人生変わるんすよ、インドール行けば」



 あれだね。行っただけで人生変わるんだったら、みんな行っていると思うよ。しかし、面白いものだな。元、魔族がキャットハウスに来て常連になっている。そして、自分を変えたいらしい。





「ふーん。で、なぜ人生変えたいの?」


「それはあれですよ。アミューズメントパーク魔王城で、魔王様の元働いているんですが、逆に安定しすぎていて不安というか。俺って安定を求めてたんだっけ? もっとビックなことできるんじゃないかって?」



 これって、海賊王に俺はなる症候群の方かな? 本人は、ちゃんと努力して、のし上がっているけど、夢見るだけの人は、だめだよね。



「アミューズメントパーク魔王城を辞めちゃうの?」


「いえ、魔王様に言ったら、お前の良い経験になるんだったら、行って来いって。お金も出してくれるそうです」


「へー。良い人だね。魔王様」





 インドール、変わった国だ。天にまします我らが父である神だけではなくて、独自の解釈で神を祀っているのだ。再生は、破壊より始まると言って、破壊神を。逆に何もしないことで調和がもたらされると冥界神を。他にもいろいろな解釈で神を祀っている。



 人々は、様々な形で神に感謝し、神への信仰が日常に根ざしている。聖なる河で沐浴し、神に感謝しつつ過ごす。



 その中で、文明的な日常にどっぶり浸かった人間が、そんなディープな世界に埋没すると、ショックを受け、人生が、変わるんだそうだ。だけど、心構えが変わるとは思うが、人生は変わらないと思う。自分が生きてきた道が人生なのだから。



 わたしも、宗教家の一端。もちろんインドールに行ったことがある。道にはゴミが溢れ、埃っぽくて、だけど人々が生き生きと生活して、活気がある。仕事への行き帰りでは、道幅いっぱいに馬車が並び、人々の怒鳴り声が響く。



 かと思うと、綺麗に整備された馬車専用道路には馬車が1台も走っていない。交通費がとられるからだそうだ。



 わたしも、真面目に働かないといけないと、思ったものだが、生来のめんどくさがりやは、改善しなかったな。



「で、行ってビックになるって目標あるの?」


「はい、もちろんじゃないですか。あれですよ。今は、新人も入ってきて忙しいんで、落ち着いたら、企画やりたいですね」


「それって、アミューズメント魔王城の?」


「当たり前じゃないですか!」



 魔王様、大丈夫ですよ。アミューズメントパーク魔王城は、これからも平和ですよ!

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