第26話 勇者カミヤのドラゴン狩り

 勇者カミヤの件を少し天にまします我らが父、神様に問い詰めたところ、


「勇者カミヤは、古の勇者の転生体だからね。今の世の中じゃ、不安定なんじゃないの」


 って、ことらしい。さらに、


「まあ、4大魔神が暴れなければ必要ないんだけどね彼」


 って、ことらしい。そう言いながら、神様は、意味深にニヤリと笑っていた。どういう意味だろうね?







 大魔王とのヨコファーメ島の決戦から、1週間後。わたしは、少し久々にキャットハウスを訪れた。扉を開けると、マスターの声が、



「お疲れ様です、先生! 少しぶりですね。どこか行ってらしたのですか?」


「お疲れ様、マスター。ちょっと神様の所にね」


「へっ?」



 お店には、カウンターに勇者カミヤ、そして、狩人マスターゴトー、狩人ハッタが並んでいた。そして、カウンターに座ろうとすると、カミヤさんの大声が響く。


「先生、ここ来なよ! ほら、ゴトー君たちちょっとつめてさ!」



 カミヤさんは、わざわざ、ゴトー君たちを立たせて、1個ずつずれさせて、自分の隣の席を開けさせる。わたしは、カミヤさんの隣に、腰をおろす。



「先生、お疲れ! そう言えば、この前はありがとね、わざわざ大魔王退治に付き合ってくれて。あっ、マスター! 先生の分俺につけといてね!」


「はい、わかりました」


「すみません、ごちそうさまです。カミヤさん」


「いいよ、気にしないでよ。お礼、お礼だからさ、俺、どっかのタクみたいに、ちゃんとお礼しない人間嫌いなのよ。俺は、常識人だからさ!」


「はあ」


「では、先生、カミヤさんからの1杯いつもので、良いですか?」


「はい、お願いします」





 こうして、カウンターで、カミヤさん、ゴトー君、ハッタ君達と会話をする。内容は主に、ゴトー君達の、狩の話と、カミヤさんの食べた美味いものの話。そして、



「そう言えば、ゴトー君さー。肉の中で一番美味しい肉って何よ?」


「肉ですか? う〜ん、俺は普通に、牛や、豚肉好きですけど、狩猟系だと、ツノウサギとか、ワイバーンですかね」


「ヘー」


「ああ、そう言えば、俺の師匠が言っていたんですけど、古代竜エンシェントドラゴンの肉、美味いそうですよ。特にまだ、若い竜の肉が。大人になると、肉にくさみが出て、固くなっちゃうそうですが。まあ、古代竜なんて、倒せないから、入手不可能なんですけどね」


「ふ〜ん」



 ゴトー君よ。わたしは嫌な予感しかしないのだけど、大丈夫?









「なんか、カミヤさんが美味しい肉手に入れたみたいなんで、明日は絶対に来てくださいよ!」



 という、マスターの言葉に誘われ、キャットハウスにやってきた。店は、常連客でいっぱいだった。わたしも、ワインを飲みつつ、カウンターで待つ。すると、



「ギャアーーーーー!」


「マスター! 肉持って来たよ、捌いて!」



 何かの鳴き声と、カミヤさんの声が響く。我々は、慌てて外に出る。すると、そこには。





 店の前には、古代竜が置かれ、上空では、さらに大きい古代竜が、カミヤさんと、殴り合っていた。さらに、襲いかかってくる古代竜がもう一匹。すると、狩人マスターゴトー君が、冷静に呟く。



「ああ、カミヤさん、古代竜の子供狩って来たんですね。それを追いかけて、古代竜の両親が追ってきたと」





 古代竜の母親っぽい方が、炎を吐く。わたしは、キャットハウス周囲に結界をはる。古代竜の父親と、カミヤさんの戦いは、カミヤさんが押していた。聖剣も使ってない。



 母親に向かって弓矢を放ちながら、ゴトー君がたずねる。さすがのゴトー君の矢も、古代竜の厚い皮膚に弾かれている。



「カミヤさん、聖剣使わないんですか?」


「ああん? 俺は余計な殺生はしないの! だって、肉固くてまずいんだろ? こいつら」


「まあ、そうですが」






「お待たせしました!」


 マスターが、愛用の双刃の斧を持って、店から出てきた。そして、古代竜の子供を捌き始める。羽が取り除かれ、腹を裂き、内臓を取り出し、骨を外す。全身血まみれで、嬉しそうに捌くマスター。



 勇者アオ達や、オサダさん、そして、賢者グレン達まで加わって、撃退するために戦う。剣聖シロは、マスターのお手伝いで、切れにくい筋を日本刀で断っていた。



 徐々に捌かれていく、子供を見て耐えられなくなったのか、母親が、一声大きく鳴く。



「ギュワーーーーー!」



 すると、2匹は、羽ばたき去っていった。鳴き声をあげながら。その声がわたしには、こう聞こえた。


「勇者カミヤ許すまじ!」


「魔獣王ウーマ・ジョー許すまじ!」





 店の中に、肉の焼ける、美味しそうな匂いが漂う。しかし、皆の顔は複雑だ。しかし、良い香りと、空腹には勝てない。



 わたしも、目の前に置かれた、ドラゴン肉のステーキに、ナイフを入れる。溢れ出す肉汁。そして、口に入れる。美味しい赤身肉だ。くせもなく、味も濃厚でジューシー。


「美味い!」


「だろ! また、取ってくるからさ!」


「いえ、結構です!」



 皆の声がはもる。

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