第27話 賢者グレンの冒険
「逃げちゃだめだ、逃げちゃだめだ、逃げちゃだめだ」
「お客さーん、お・ま・た・せ」
薄いピンクのネグリジェを着た女性が、入ってくる。下着が透けて見えている。心臓が、バクバクと、音をたてる。
女性が近づいてきて、濃密な女性の香りが、鼻をつく。心臓が爆音を奏でる。そして、女性が隣に座る。
すると、わたしは、意識を失った。
「ギャハハハ! こいつさ気失ったんだぜ!」
「良いじゃないですか、純情なんですよ、グレンさんは」
「純情ったって、いい歳のくせによ」
「まだ、30歳です! これからです!」
「かー、俺が30歳の頃なんて、すでに結婚して、子供出来て離婚したあとだぜ!」
「えっ、カミヤさん、お子さんいるんですか?」
「ああ、女の子だけどな! 言ってなかったっけ?」
「初耳ですよ」
「俺のことは良いんだよ! こいつだよ、心配なのは」
「わかりました。自分で、問題解決してきます」
「へっ?」
「どうにかなるんかよ? お前はよ!」
「はい、頑張ります」
「ふーん」
わたしの名は、賢者グレン。今日わたしは、大人の階段を登る。
「今日はようこそおいで下さいました」
「よ、よ、よろしくお願いします」
「あんまり、緊張なさらずリラックスしてくださいね」
「は、はい」
目の前には、自分と同じ位の年齢の女性が座る。とても美しい女性ではないが、柔和な笑顔に、清潔感あふれる格好。付き合うなら、こういう相手も良いかな?
「では、グレンさん、まずは、年齢、生年月日からお願いします」
「はい、年齢は、30歳、生年月日は、大陸歴1109年9月9日生まれです」
「ありがとうございます。では、続いて職業、身長、体重、血液型をお願いします」
「はい、職業は冒険者で、賢者をやっています。身長は175cm、体重は50kg、血液型はA型です」
「冒険者は、若い方々の人気職業じゃないですか! しかも賢者だなんて! 頭良いんですね」
「いえ、それほどでも」
「ご謙遜なさらずに、身長も十分ですし、痩せてらっしゃいますし、引く手あまたですよ」
「そうですか、良かった」
「では、続いて、趣味や、平均年収をお願い致します」
「趣味は、星空観察で、平均年収は、1200万ゴールドです」
「えっ、1200万ゴールドですか! 結婚してなかったら、私が付き合いたいくらいですね」
ガク。結婚しているのかこの人。
「ですが、趣味は他にもありますか?」
「えっ、他の趣味ですか? そうですね、う〜ん。飲みに行くことと、読書ですかね」
「そうですか。えーと、趣味は食べ歩きと、星空観察で」
「はい?」
「では、お相手の女性に望みたいことはありますか?」
「そうですね。顔は綺麗系より、可愛い系が、痩せてるよりは、少しぽっちゃりとしていて、ああ胸は大きい方が良いですね。性格は、穏やかで優しくて、できれば聖女のような」
「グレンさん、ストップ」
「はい?」
「理想の女性像ではなくて、お相手に望むことです。まあ、1番に望むのは、外見なのか?、性格なのか? そして、体型にこだわるならば、太っている方が良いのか? 痩せている方が良いのか? それともこだわらないのか?」
「はあ? う〜ん。外見よりは性格ですね。穏やかで優しいことが良いですね。そうなると、体型はこだわらないですが。顔は、可愛い系が」
「はい、ストップ!」
「はい」
「では、結婚したらどういう家庭を築きたいかですね」
「はい、結婚したら子供はいっぱい欲しいです。わたしが頑張って働くので、奥さんには家で、頑張って子供を」
「ストップ。えーと、ちょっと前時代的になっているので、少しまとめましょうか」
「はあ?」
「お子さんが、好きなんですね?」
「好きというよりは、わたしのような優秀な遺伝子は、後世に残さないといけないと」
「ストップ! 話を変えますね。奥さんは、家庭にいて欲しいと」
「はい。わたしが出歩くことが多い職業なので、出来れば」
「良いじゃないですか。グレンさんもちゃんと言えるじゃないですか」
「はい?」
「では、どんな家庭にしたいですか? そうですね、奥さんと子供達と一緒にいる所を想像してみてください」
「えーと、うん。子供達が、元気に遊んで、奥さんが笑って」
「はい、良いですね。笑いの絶えない明るい家庭を築きたいと。はい、オッケーですこれで、プロフィール登録終わりました」
「よろしくお願い致します」
こうして、わたしは、結婚相談所に登録して、第一歩を踏みだした!
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