第25話 勇者カミヤの最期?
外の戦いはあっさりと終わった。魔物軍団は、マスターと、オサダさんによって壊滅されていた。わたしは、特にやることなし。3人で、洞窟の前に座って皆を待っていた。
「皆大丈夫ですかね?」
「大丈夫ですよ、マスター。駄目だったら、わたしが生き返らせれば良いだけですし」
「まあ、そうだね。先生いたら死んでても平気だよマスター」
「オサダさんも、豪胆ですね。わたしは、お客さんが減ってしまうんじゃないかと心配で、心配で」
そんなことを話していると、勇者アオ達が出てきた。勇者アオに、魔術師ユナ、そして誰だ?
「親父さん!」
「おお、マスター久しぶり」
低く、少し渋い声が響く。
「マスター、どなたですか?」
「失礼しました。先生も、オサダさんもご存知なかったですね。こちら勇者アオの親父さんで、剣聖シロ。昔はよくお店来てくれてたんですよ」
「はじめまして、ザーマ神殿で神父やってます」
「オサダです。武闘家ですね冒険者やってます。よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします。先生、オサダさん」
しばらく、他愛のない会話しつつ、わたしは勇者アオと、魔術師ユナの怪我を治していると、狩人マスターゴトーが狩人ハッタを担いで出てきた。
わたしは、慌ててハッタを蘇生させる。話によると、大魔王3巨頭の1人スナイパーアサシンリョーと戦ったそうだ。すごい腕だ、延髄を的確に撃ち抜いてあった。
最後に勇者カミヤが出てきた。勇者カミヤは、無傷。
「カミヤさん、大魔王は?」
「紙一重だけど、勝ったぜ! いやー強かった」
「さすが、カミヤさん」
「さあ帰ろうぜ! 1杯やらねえと死んじまうぜ!」
そう言うと、勇者カミヤは先頭にたって、歩き始めた。そして、島の海岸線ヘ、そしてそのまま海の上を走る。マスター、オサダさん、そして剣聖シロも続き、勇者アオも真似をして進む。魔術師ユナも、浮遊魔法で続く。
狩人マスターゴトーは、行きと同じように矢を射ると、ロープを渡って渡過を開始した。続く狩人ハッタ。見事なものだ。
わたしは、何か忘れている気がして、洞窟を振り返った。まあ、皆が良いなら良いか。わたしもふわふわと浮いて海の上を進んだ。遠くで声が聞こえた気がした。
「いや、ちょっと待って、先生」
全員が渡り終え、フォズーガの街中に歩きだそうとした瞬間、マスターが大声を出す。それに対して、オサダさん、勇者アオ、勇者カミヤが反応する。
「あれっ。そう言えば、戦士タクはどうしました?」
「戦士タク?」
「あっ、タク忘れてた! 親父のことで頭いっぱいで」
「タクなんて良いじゃん! そんなことより飲み行こうぜ!」
すると、狩人マスターゴトーが、目をこらして、海上を見る。そして、
「回収可能ですね。回収しますか?」
「お願いします」
そうマスターが返事をすると、狩人マスターゴトーは、矢筒から矢を取り出し、ロープを結んで矢を放った。
「よし命中。回収します」
そう言って、ハッタと共にロープを引き始めた。狩人マスターゴトー曰く、ロープの引き方のコツがあるらしく、我々は邪魔にならないように見ていた。そして、十分ほどで、ゴミと海藻まみれの物体が引き揚げられた。
わたしは、近づいて蘇生魔法をかける。ロープで引く間に、動かないように、戦士タクは、正確に心臓を射抜かれていた。
「先生! 矢を抜いてからじゃないと!」
「えっ!」
ゴトー君のの少し慌てたような声がする。ゴミが少し動き、うめき声が聞こえ、また静かになった。
「ウグッ、ウウェ!」
ゴトー君と、ハッタ君は、ゴミを取り除きつつ矢を回収する。そして、わたしは蘇生魔法をかける。
「俺って何なの? アオ達は倒れてた俺放っておくし、先生は声かけても無視するし、矢で射抜かれて海の中引っ張られるし」
「まあまあ、良いじゃないですか。生き返ったんですから」
「そうだけどさ、マスター」
「そんなことより、行くぞ! タクのせいで飲み時間減っちまったじゃねぇーか!」
そう言って、カミヤさんは歩き出した。その時、戦士タクが何かに気づいて勇者カミヤに駆け寄る。
「カミヤ何かついてっぞ!」
戦士タクが、兜の端から出ていた。唯一の髪の毛を引き抜く。すると、
「グアーー」
勇者カミヤは、白い灰となり、風に吹かれて消えていった。
《勇者カミヤの暴言 了》
じゃないから! カミヤさん、魔族かよ。最後の髪の毛が抜かれたぐらいで消えるなよ。もしかして、勇者カミヤの本体は髪の毛なのか?
などとくだらないことを考えている。茫然としていた皆も、意識を取り戻した。そして、マスターが
「先生、なんとかなりませんか!」
「えっと、やってみます」
わたしは、勇者カミヤの意識を探す。そして、
「冥界神の名において命ず、開け冥界の門。
勇者カミヤが復活した!
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