第23話 大魔王3巨頭

 ヨコファーメ島の決戦が始まった。洞窟の手前まで埋め尽くす魔物軍団。だが、魔物軍団は襲いかかってこない。いや、襲いかかれないようだ。数が多すぎて身動きが取れない。



「では、我々に任して下さい!」



 そう言うと、マスターは、体に力をこめた。マスターの服がちぎれ飛ぶ。ズボンはそのままだ。そして、マスターの体は、2倍程の大きさになり、全身は黒い固い毛に覆われ。そして、顔は、口から固く尖った牙がはえ、目は、猛獣そのものになった。



 そして、愛用の双刃の斧を振り回しながら、魔物軍団に突っ込んでっていった。魔物達は、ミキサーに投入されたかのように細切れになり、飛ばされていく。



「今度は俺ですね! カミヤさん道開きますので、洞窟向かって下さい!」


「了解」



 バッカスオサダは、酒瓶をあおる。



「ウエッ、きたきた〜! 嘔吐爆炎砲! ウッ、オエッ、ゴーーーーー!」



 凄まじい熱量の爆炎が、魔物軍団の中央を走り抜ける。爆炎は、魔物を焼き尽くし、洞窟までの道ができる。



「オサダさん! ありがっとね!」



 そう言うと、勇者カミヤ達は走り抜けた。そして、バッカスオサダは、構えをとり、魔物軍団に殴りこんだ。


「さて、やりますか!」


 そして、わたしは、ふわふわ浮いたまま、戦いを見ていた。


「頑張れ〜マスター、頑張れ〜オサダさん」









 勇者カミヤ達は、洞窟の前に到達した。入ろうとした時、狩人マスターゴトーが、みんなを止める。


「待って下さい!」


「どったのゴトー君?」



 狩人マスターゴトーは、背中に背負った矢筒から矢を一本取り出すと、魔術師ユナに矢を渡す。



「ユナちゃん、矢尻を舐めて下さい!」


「えっ、なんで! 気持ち悪い」


「いいから、急ぐんです!」


「えー、わかったわよ」



 魔術師ユナは、恐る恐る矢尻を舐める。


「もっと、ペロペロと、いっぱい唾液をつけて下さい!」


 魔術師ユナは、ペロペロと矢尻を舐める。それを取り囲みなんとも言えない表情で見る、男性陣。勇者カミヤが、ぼそっとつぶやき、勇者アオが同意する。



「ゴトー君も、結構な変態だね〜」


「ですね」




 狩人マスターゴトーは、ユナちゃんが舐めた、矢を受け取ると、洞窟の中に打ち込んだ。



「さあ、お待たせしました。行きましょう!」






 勇者カミヤ達は、洞窟に駆け込んだ。洞窟の中には、敵は出てこなかった。そして、洞窟が広くなり、大きな空間に出た。そこには、大きく口を開け、その口の中に矢が刺さり、突き抜けて幸せそうな顔で絶命している、冒険者ギルド職員こと、悪魔神官ミマラがいた。



「なんて顔してんだよ、こいつはよ!」


「ええ、ユナ汁を舐めて幸せなまま逝ったようですね」


「えっ、気持ち悪い」



 勇者カミヤの言葉を受け、狩人マスターゴトーが、答える。それを聞いて心底気持ち悪そうに、魔術師ユナが震える。




「さあ、次行こうぜ! 次!」





 勇者カミヤ達は、先を急いだ。そして、再び大きな空間に出た。中央には、白いローブをかぶって、顔まで隠した男がいた。腰には日本刀を差し、その構えにすきはなかった。


「よく来ましたね、勇者カミヤと、その仲間たち。どうやら大魔王3巨頭の1番手、悪魔神官ミマラは、負けてしまったようですね。わたしは、大魔王3巨頭の2番手悪魔騎士ホワイトです」


「強えーぞ、こいつ」



 勇者カミヤが、珍しく躊躇する。すると、勇者アオが、声を出す。



「カミヤさん、先を急いで下さい! ここは俺達がやります!」


「俺達って、俺もかよ!」


「えっ、強そうじゃない? 大丈夫アオ?」


 戦士タクも、魔術師ユナもやる気だ。




「わかった! アオじゃ後は任せた!」



 そう言うと、勇者カミヤは、先を急いだ。ホワイトも、動かない。あっさりと見逃すようだ。



 勇者カミヤがいなくなると、ホワイトは、ローブを脱いだ。そして、



「大きくなったな、アオ」


「えっ、その声、その顔親父?」


「えっ、アオの親父さんて、確か」


「剣聖シロ」



 勇者アオが、魔術師ユナが、戦士タクが茫然と呟く。そこにいたのは、数年前に行方の分からなくなった、勇者アオの父親、剣聖シロであった。だが、大きくなったなって、アオの成長期は終わっている。



「親父生きてて」


「ああ、すまんな。強い敵と戦っていたら、時を忘れてな。お金も無くなった所で、良いバイトがあったから、応募したわけだ。では、アオ行くぞ! どのくらい強くなった、お前は?」


「親父戦わないといけないのか?」


「ああ、バイト代分は働かないとな」


「わかったよ」



 勇者アオも、剣聖シロも剣を抜き構えた。そして、戦士タク、魔術師ユナも構える。激しい戦いが始まろうとしていた。







 その頃、勇者カミヤ達は、次の広間に到達した。



「誰もいねーな、この部屋」


「カミヤさん、危ない!」


 狩人マスターゴトーが、思いっきり勇者カミヤを突き飛ばす。そして、自分も転がる。


「キィーン!」



 甲高い金属音がして、勇者カミヤが立っていた辺りの、場所で火花が飛ぶ。狩人マスターゴトーは、転がりながら、矢を放つ。



「キン!」



「外したか」


「ククク、良く避けたな、俺は大魔王3巨頭の3番手、スナイパーアサシンリョーだ。貴様達もここで終わりだ」



 すると、狩人マスターゴトーは、弓矢を構えつつ、勇者カミヤに言う。


「カミヤさん、そのまま先に、行ってください!」


「わかったよ、よろしく!」



 わざとなのか、勇者カミヤは、広間の出口付近まで転がっていた。そのまま、先を急ぐ、勇者カミヤ。そして、



「ハッタ。俺たちで倒すぞ」


「は、はい!」

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