第19話 マンドラゴラ取り
ある日の事、わたしがキャットハウスに行くと、カウンターには、誰もおらず。奥のテーブルでは、狩人マスターゴトーと、狩人ハッタが何やら真剣に話している。
「先生、いらっしゃい、飲み物はいつもので良いですか?」
「はい、お願いします」
マスターは、ワインボトルを開けると、グラスに注ぎ、わたしの前に置く。
「マスターお疲れ様、乾杯!」
マスターは、料理を作っている最中。聞くとはなしに奥の2人の会話が耳に入ってきた。どうやら狩人マスターゴトーが、後輩のハッタに、指導をしているようだ。
「返事はイエスサーか、ノーサーしか認めん」
「イエスサー」
「では、サバイバルの極意を伝授する」
「イエスサー」
マスターの手が空いたようなので聞いてみる。
「マスター。ゴトー君とハッタ君どうしたの?」
「ああ、何でも、この間、閉じこめられたのがショックだったらしくって、ゴトー君に、脱出法とか、サバイバルテクニックとかを教えてもらっているみたいですよ」
「ヘー。偉いね」
「偉くはないですよ。あの時は、鍵開けて外に出て、いろいろ方法考えれば良かったんですからね」
「まあ、そうだけど」
「そうだ、で、ゴトー君なんですが、ああ見えて、元カナリア王国特殊部隊員だったそうなんですよ。この前も、カミヤさんに1km離れて、トリカブトの毒矢を打ち込んでいたんだそうですよ。いつもは、麻痺性の毒使っているみたいですけどね」
「えっ!」
いやいや、1km先から矢って届くんだ。そして、トリカブトって結構な毒だよな。こちらも、カミヤさん殺す気だったのかな?
「ハッタも、良い師匠と思って、頑張って欲しいですね」
なんてことを話していると、狩人マスターゴトーが寄ってきた。
「マスター、マンドラゴラって食べたことありますか?」
「一応わたしも料理人のはしくれ、食べたことは、ありますよ」
「ヘー、マンドラゴラって食べれるんだ」
「そうなんすよ、先生。うちの実家の方では、この時期採取して、刺身で食べたり、醤油出汁で煮て食べたり、旨いっすよ!」
「ゴトー君、良いね〜。で、どうしたの?」
「いや、練習がてらハッタと取りに行こうと思って、取れたら持ってきますね」
「ごちそうさまです!」
マスターの、テンションが上がる。
何でも採取方法は難しいそうで、ただ抜いてしまうと根の部分にある口から、奇声が発せられ、聞いたものは精神に異常をきたしてしまうそうだ。
なので、最近は100m位離れて、茎を突き刺すように矢を射て、木の幹に貼り付け、その後その上に封魔の布を撃ち込み。その後近づいて、ナイフで口を刺して、血抜きすると食べれるようになるそうだ。なるほどね。
その時、勇者カミヤが入ってきた。
「お疲れ! マスター、先生、おっゴトー君もね。で、どうしたの?」
「お疲れ様です。カミヤさん。いや、ゴトー君達マンドラゴラ採取に行くそうで」
「ふーん、マンドラゴラねぇ」
狩人マスターゴトーと、狩人ハッタによる、マンドラゴラ採取の日。噂を聞きつけた。オサダさんや、勇者アオや、賢者グレンのグループなどでお店はいっぱいになった。空いているのは、予約席、もちろん、ゴトー君と、ハッタ君の席、そして、勇者カミヤの席だ。
わたしも、もちろんカウンター席で待っている。
「マスター、遅いですね」
「そうですね。でも、準備は万端なので、来たら料理出来ますよ」
「楽しみだね」
「そうですね」
と、その時、扉が開く。狩人マスターゴトーが、狩人ハッタを担いで入ってきた。ただ、ハッタ君の顔は真っ青だ。マスターが急いで駆け寄る。
「ゴトー君、マンドラゴラは、いっぱい取れました?」
「えっ、はい、これをお願いします」
ゴトー君が、大きな布袋いっぱいのマンドラゴラをマスターに渡す。マスターは、急いでカウンターの中に戻り調理に入る。
「良いマンドラゴラですね〜。腕がなります」
そして、茫然としていた、ゴトー君が、周囲を見回す。
「良かった先生いた。すみません、ハッタのやつが、マンドラゴラの血抜きに失敗してしまって」
「わかりました。治療しましょう」
わたしは神に祈りを捧げた。狩人ハッタは、天上からの光に包まれ、そして、少しずつ浮き上がっていった。ゴトー君は、それを見て慌てる。
「えっ、先生。ハッタのやつ、天上に昇って行っちゃうんですか?」
ん? 周囲を見回すと、魔術師ユナが浮遊魔法をニヤニヤ笑いながらかけている。まあ、治ったし、意識取り戻すだろ。
「えっ、ここどこ?」
ハッタ君は、意識を取り戻して暴れたために、バランスを崩し床に落ちた。
で、マンドラゴラはとても美味しかった。適度に固い食感と、なんとも言えない、風味。最高でした。
と、その時、勇者カミヤが入ってきた。
「マスターお疲れ! おお、みんな食べてるね! 俺もとって来たのよマンドラゴラ」
カミヤさんは、封魔袋に手を突っ込んだ、そして、マンドラゴラを取り出した。そう、生きたまま。
「キエエエエエエエエエエエエエエエー」
凄まじい、奇声が聞こえ、わたしと、マスター、カミヤさん以外全て昏倒した。
「どったのみんな?」
勇者カミヤの声が響く。
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