第18話 帰ってきましたキャットハウスに

 こうして魔王カミヤ事件は幕を閉じた。さらにカミヤさんを操っていた大魔王の討伐をと、みんなで張りきったのだが、復活したカナリア王国軍が湾岸警備船と協力して、ヨコファーメ島に向かったが、どこにも誰もいないもぬけの殻だったという報告を受けた。



 カミヤさんは、とても悔しがっていた。そして、冒険者ギルドの職員ミマラさんが、大魔王の配下だったそうで、絶対に探し出すと、息巻いていた。ただ、今回のことで懲りたのか。



「大魔王討伐する時は、手貸してね、マスターも、先生も、オサダさんも、ゴトー君も」


「俺達もいつでも手を貸しますよ!」


「ああん? 雑魚はいらねぇよ!」


「カミヤさん!」





 そんなこんなで、わたし達は、久しぶりにザーマシティーに戻ってきた。




「皆さん、夕方になりましたし、食べ物はありませんけど、酒はありますから、キャットハウスに来ませんか?」


「おっ、良いね! みんなに一杯ずつおごるね!」


「あの俺、なんか食べ物買って持ち込んで良いですか?」



 戦士タクが言うと、マスターも賛同して、皆で適当に持ち寄って、食べることになった。


 皆それぞれ解散して、再集合することになり、別れる。わたしは、途中ザーマ神殿に荷物を放り込むと、マスターと共に、キャットハウスに向かった。



「マスター、早く飲みたい」


「先生、焦らないで下さいよ。今、扉開けますから」



 マスターは、鍵を取り出し、扉を開ける。すると、中からすえた匂いがした。ん?  



「マスター、何この匂い?」


「おかしいですね? 腐るような物は、置いてなかったのですが」



 わたし達は、中に入り、電気をつける、するとそこには、狩人ハッタが倒れていた。髪はテカテカと光り、前見たときよりかなり痩せている。そして、匂いはそこから匂ってきていた。



 マスターは、持っていた斧の柄の部分で、突っつく。反応なし。少し強めに突っつく。反応なし。そして、



 ドゴッ!



 マスターは、思いっきり膝を狩人ハッタの頭に落とす。



「グフッ!」




 狩人ハッタは、頭蓋骨が陥没し、血を吹き出しながら、壁にぶつかって、下に落ちた。



「あれっ? 生きてましたね」


「マスター、結構良い音しましたね。わたし、傷治しますね。それに匂いも」



 わたしは、呪文を唱え空中に大きな水球を出し、狩人ハッタを入れ、かき混ぜる。水が赤くなってくる。しまった、傷を治してから、やるべきだった。



 わたしは、水球を解き、今度は、熱風を当てる。頭から血がドクドクと、吹き出している。急がないと。



 最後に神に祈りを捧げる。



「天にまします我らが父よ、治して!」



 こうして、狩人ハッタは、意識を取り戻した。



「マスター、ひどいじゃないですか。俺がトイレ入って出てきたら、電気消えて、誰もいないし、鍵は閉まっているし」


「えっ! あの時お前いたの? ちょっと待ってろ」



 そう言うと、マスターはカウンターに入っていき、伝票を確認する。そして、


「3200ゴールドな」


「えっ?」


「お会計だよ」


「えっと、もう少し飲んで行くので後で良いですか?」


「はいよ!」






 わたしはカウンターに座り、マスターはワインを注いでわたしの目の前に置く。そして、狩人ハッタの前にはビールを置く。



「みんなまだだけど、先飲んじゃいますね。ハッタ君、マスター乾杯!」



 わたしは、ワインで喉を潤わせると、疑問に思っていたことをぶつける。



「ハッタ君、帰らないで、ずっとキャットハウスにいたの?」


「えっ! というか、ずっと閉じこめられていたので、出れなかったんです」


「へっ?」



 わたしは、キャットハウスの扉を見る。そこには鍵穴でなく、扉の内側に良くある、回して開ける鍵がついていた。



「鍵開けて出れば良かったんじゃないの?」


「いや、そうですけど。ほら、鍵開けっ放しだと不用心だし」


「でも、命のが大事だよ?」


「でも、水出るし。水飲んでれば1週間は人間死にませんよ」



 だめだ、若い子の感覚は、いまいちよく分からない。




 そのうちにみんなが集まってきた。店の中は、にぎやかに。そして、



「いや〜、久しぶりのキャットハウスは良いね〜!」



 久しぶりに、勇者カミヤの大声が店に響く。今日は、暴言はなし!




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