第11話 ギルド職員ミマラ

「先生、お久しぶり」


「あれっ、お久しぶりですミマラさん。珍しいですね。今日は、若い女性の冒険者連れてセクハラしてないんですね」


「先生。さあ、僕のこと、そういう風に見てたの?」


「えっ、違いました?」


「先生、さらっと毒吐くね~」




 ある日のこと、わたしが仕事を終え、ザーマ神殿から、キャットハウスに来ると、ギルド職員のミマラさんがいた。しかも一人で、珍しいこともあるものだ。



「先生、お疲れ様! いつもので良いですか?」


「うん、マスターもお疲れ様。よろしくお願いします」


「はい」



 僕は、カウンターミマラさんの隣に腰をかける。ふと見ると、カミヤさんの奥のカウンター席が空いている。



「ミマラさん、わざわざ一席空けているんですね」


「ああ、うん、ほら、カミヤさん、いつもカウンターの端の席座っているじゃないですか。だから、とっておこうかなって」


「なるほど、優しいですね。ミマラさん」



 久しぶりにミマラさんと話す。わたしも好きな漫画の話で、盛り上がっていると、勇者カミヤが入ってきた。



「お疲れ! マスター、先生もお疲れ!」


「カミヤさん、お疲れ様です」


「カミヤさん、お疲れ様。何にしますか?」


「う~ん、ビールっしょ。仕事終わりの一杯は、格別だよ」


「はい」



 そして、カミヤさんは僕の隣に腰かけようと、椅子を引く。


「あっ、カミヤさんお疲れ様です。ここカミヤさん、空けておきましたよ」


「あん? 何でお前の隣に座んないと、いけないんだよ」


「カミヤさん、冷たいな~。僕のこと嫌いですか?」


「ああ、嫌いだよ。おめえ、臭いんだよ」


「えっ、先生、俺臭いですか?」


「いや、特には」


「そうじゃねぇよ。胡散臭いんだよ」




 そう言いながら、カミヤさんは、僕の隣に座る。居心地悪いな~。



 だけど、酒が入り飲み進めていくうちに、3人で、話が盛り上がる。まあ、とても下らない話だけどね。そして、突然ミマラさんが、カミヤさんに話をふる。



「そう言えば、カミヤさんって苦手なものないんですか?」


「えっ、俺? 苦手なものね~。う~ん?」


「ほら、嫌いな食べ物とか? 嫌いな魔物とか? 嫌いな戦い方とか?」



 ずいぶん変な質問だな? 食べ物は良いとして、いきなり魔物とか、戦い方ってどういうことだ?



「う~ん、食べ物はねぇなあ。魔物は、悪霊系は、剣で倒せないから嫌だけど。まあ、それは先生に依頼すれば良いし。戦い方か~。チマチマした、ゲリラ戦法嫌いだな。周囲ごと、破壊したくなる」


「そうですか。他にはありますか?」


「やっぱり匂いきついのは苦手だな。エルフとか」


「カミヤさん、ストップ!」



 わたしは、慌てて会話を止める。奥のテーブルから、すごい目で、ミドリーヌが睨んでいる。



「やっぱり、匂いか、そうか匂いだよな」



 ミマラさんは、ぶつぶつ呟きながら虚空を見上げている。どうしたんだ? ミマラさん?



 そして、ミマラさんは、突然立ち上がると、飲み物のグラスを持って、奥に移動していく。



「カミヤさん、先生、楽しかったです。また、飲みましょう」


「ああ」


「えーと、ミマラさんどちらへ?」


「先生、僕ちょっと、ゴトー君と話してきます」


「そうですか。では、また」


「先生、なんなんだろうな? あいつ」


「カミヤさん、そうですね」






 ミマラさんは、奥のテーブルに移動すると、ミドリーヌさんと話していた、狩人マスターゴトーの隣に座って、話始める。しかし、視線は、チラチラと、ミドリーヌの胸へ。



「なんなんですの? 気持ち悪いですわね、あなた」

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