第5話 頑張れ若き勇者達その2

「ああ、今日も暇だ~」



 わたしは、ザーマ神殿の自室のベッドに寝っ転がって天井を見つめていた。そう、暇なのだ。ザーマ神殿には、ひっきりなしに冒険者が訪れ、治療を受けていっている。しかし、



「同じ治療受けるんなら、あの巨乳の若い姉ちゃんが良いよね」


 とか、


「わたしは、あのイケメン神父が良いわ」


 とか。



 そういうわけで、若くもなく、イケメンでもない自分は暇なのだ。




「あ~あ、暇だ。悪霊か、悪魔か、死者出ないかな~」



 まだ、キャットハウスも開いていない。さて、この暇な時間をどうしようかと、体を起こした瞬間、廊下を走ってくる物凄い足音がした。そして、わたしの部屋の扉が凄い勢いで開く。



「ち、ちんぷ。変態です!」


「わたしは、陳腐でも、変態でもありません」


「あっ、神父、大変です!」



 入って来たのは、ザーマ神殿につかえるシスターの一人だった。



「えーと、戦士タクが変態で、勇者アオが飛んでます」


「すみません、少し落ち着いて、ちゃんとしゃべってもらって良いですか?」


「はい、すみません! スーハー、スーハー、スーハー。えーと、何だっけ? あっ、そうだ! 勇者アオからの魔導通信で、戦士タクが大怪我を負って大変だそうです」


「早く言ってください! 急ぎましょう!」



 わたしは、慌てて立ち上がると、部屋を飛び出した。わたしは、走りながらたずねる。



「場所は、どこですか?」


「えっ、ここはザーマ神殿ですが?」


「ふざけてるんですか? 戦士タクが大怪我をして、現在いる場所を聞いているのです!」


「す、すみません! ザーマシティの南の森です!」


「えっ、南の森にそんな強い魔物、居ましたっけ?」


「そ、それが、勇者カミヤにやられたと」


「えっ、勇者カミヤにやられたって、さすがにあの人でも、人は攻撃しないでしょ。まあ、行ってみれば分かるか」






 わたし達は、ザーマ神殿を出る、そして、馬に乗ると南に向かった。南の森に入り、馬を飛ばすと、木々が吹き飛び更地になっている場所に、たどり着いた。



 そこには、膝を抱え半裸になっている、勇者アオと、魔術師ユナがいた。



「もう、お嫁にいけない。あの馬鹿勇者カミヤ。死ね! 死ね!」


「ごめん俺が、頼まなければ、こんなことには、ごめんタク!」



 勇者アオは、虚空を見つめ、戦士タクに謝っていて。魔術師ユナは、泣きながら勇者カミヤを呪っていた。



「戦士タクは、どこ?」


「あっち!」



 魔術師ユナが、指で指ししめす。わたしは、そちらに視線を向ける。



 すると、勇者カミヤが、戦士タクの取れた頭をもって一生懸命、くっつけようとしているのか。木に寄りかからせた首のない胴体の上に頭を置いている。そして、転がり落ちた。



 わたしは、そちらに向かった。



「カミヤさん、戦士タクの頭を下さい」


「ああ、先生、わざわざごめんね。取れちゃって、首」


 カミヤさんは、僕に戦士タクの生首を渡してきた。



 わたしは、場所を合わせ、前後を確認すると、神聖魔法をかける。すると、傷がみるみるふさがっていき、戦士タクの顔色も戻ってくる。



「ごめんね、先生。一杯おごるからさ」


「いくらカミヤさんでも、やって良いことと、悪いことがありますよ。魔術師ユナを襲おうとしたんですか?」


「違うよ先生。あの娘胸ないから、興味ないよ。あれなのよ。勇者アオ達が強くなりたいって言うから、訓練してあげたのよ、そしたらさ、熱入っちゃって、タクの首がポロって。ハハハ!」


「笑いごとじゃねえだろ、このくそカミヤ!」


 振り返ると、半裸の2人がそばにきていた。そして、魔術師ユナが怒りを爆発させる。


「いや、本当にごめん。こんなに弱いって思わなくてさ。一杯おごるからさ、許して」


「ウックッ!」



 魔術師ユナが、顔を真っ赤にしてつかみかかろうとした時。戦士タクの意識が戻る。


「あれっ? 先生、俺?」


「気づきましたね。もう大丈夫です」


「タク!」



 勇者アオと、魔術師ユナが戦士タクに飛びつく。


「良かった、タク。生き返って」


「本当に駄目だと思ったよ、これも先生のおかげだ」


「えっ、俺死んだの?」


「あっ、ごめんねタク。おもいっきり殴ったら、首取れちゃってさ。大丈夫?」


「大丈夫? じゃないだろ!」


「あれっ、ユナちゃん。ちっちゃい胸が見えちゃってるよ」


「こ、こ、こ、この、変態、くそ、勇者!」


「ねえ、先生。なんで怒っているんだろうユナちゃん?」


「カミヤさん、ちゃんと謝って下さいね。後、これ治療費です。では、後程キャットハウスで」


「えっ、先生。ちょっと、先生~!」

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