第4話 頑張れ若き勇者達
「乾杯!」
わたしが店に入ると同時に、賑やかな声が聞こえる。見ると、勇者アオ、戦士タク、そして魔術師ユナを中心に、数名の冒険者達が席を囲んで盛り上がっている。
「どうしたの彼ら?」
「先生、お疲れ様です。彼らお祝いらしいです。何でも、オークジェネラルを倒したとかで」
「へー、凄いね」
「ええ、若いやつらの成長を見てると、涙が出そうですよ」
そう言えば、オークの上位種のオークジェネラルが出現し、大きな被害が出ていると言う、話を聞いた。それを勇者アオ達が討伐したのだろう。
「そうだね。お祝いに、彼らに何かご馳走してあげてよ」
「先生、ありがとうございます。おい! 馬鹿タク! 先生がご馳走してくれるってよ。アオとユナちゃんもお礼言ってね」
「えっ、マジっすか、あざっす!」
「先生、ありがとうございます」
「お心遣い感謝します」
彼らは、本当に楽しそうに飲んでいる。すると、
「あちー! マスターお疲れ!」
勇者カミヤが入ってきた。
「お疲れ様です。カミヤさん、何飲まれます?」
「ビールちょうだい!」
「はい」
そう言うと、カウンター席に、ドカッと座ると、まわりを見回した。
「先生も、お疲れ様! 今日暑いっすね」
「カミヤさん、お疲れ様です。本当に暑いですね」
そして、ビールが置かれると、勇者カミヤは
「じゃ、先生、マスターお疲れ! 乾杯!」
「乾杯!」
そして、飲み始めた。
「ゴクゴクゴキュ。ぷはー! うまい! 夏にビールうまっ!」
「本当に旨そうに、飲みますね」
「やー、本当に旨いのよ先生、仕事の後の一杯は、最高だよ」
「今日の仕事も大変だったんですか?」
「いや、なんだっけ? あの豚のやつ?」
「オークですか?」
「先生、それだ! なんかオークが大量発生したからって、国から討伐依頼がきてさ!」
さすが勇者カミヤ、国からの依頼とは。普通は、冒険者ギルドからの依頼だろうけど。そして、この話は続けるべきか? なんか怪しくなってきた。
「それで、オーク討伐したんですか? 数多いと大変ですね」
「それがさ、マスター。そうでもないのよ。あんなの数が多くてもしょせん、豚じゃない? 俺が剣振り回してたら、綺麗に消滅しちゃってさ」
「えっ、凄いですね」
「ん? そう? そしたら、それを耐えたちょっと大きい豚が4・5匹出てきてさ、そいつら、愚かにもさ、集団で襲いかかってきてさ」
「それは、大変ですね。ピンチですか?」
「いやいや、先生違うのよ。弱いやつが群れてもしょせん雑魚は雑魚! チャチャチャと首を飛ばしてやったのよ。そしたらさ、親玉出てきてさ」
「親玉? オークキングですか? それは、一大事ですね」
「マスター、オークキングだっけ? あんなの魔王に比べたら、弱っちいものでさ。でも、倒すのに1分もかかちゃったよ。俺も弱くなったよね。ハハハ!」
ふと、奥の方をみると、勇者アオ達がしずまりかえって、勇者カミヤを見ている。そりゃそうだ。自分たちが苦労して倒した、オークジェネラルを雑魚扱い、オークキングも簡単に倒しましたって、話を聞かされたらそりゃね。
「で、マスター。勇者アオ達、なんかお祝い?」
「えっ、えっと、その、えーと。オークジェネラル倒したって、祝勝会をって」
「へー、凄いね! オークジェネラルってなんだっけ? まあ、いいや。でも、俺は、勇者アオ達の年齢の時には魔王倒してっからね!」
「カミヤさん、それ以上は言わないであげて下さい」
「ん? なんで? 」
勇者アオ達は、下を向きながら歯をくいしばっている。
頑張れ! 若き勇者達!
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