1-45 雷撃
ベルモントの放った『神空斬』は真っ直ぐと恐るべきスピードで接近するストレリチアに向かう。
だがッッ!! ストレリチアはこの致命的な一刃が放たれた事実すら認識していないッッ!!!
(風魔法のマナを放つ『真空斬』と違い、『神空斬』はまさに空気の斬撃を放つ技ッッ! やはり見えないかストレリチアッッ!!!)
『神空斬』ただの鎌鼬と思うなかれ。呪印装術で強化されたこの恐るべき空気の斬撃は鉄処かオリハルコンすら両断する程の切断力を誇る。
目視不可×防御不可=死あるのみッッ!!
ベルモントは勝利を確信し吼えるッッ!!!
たがッッッ!!!
男は誤解していた。『雷撃』とはただ距離を詰めるだけの移動法では非ず。
『雷撃』とは対人戦を意図して編み出された技で非ず。
ストレリチアは剣の道の限界を感じていた──
同じサイズである敵に対しては有効だが、ゴリアテ族やゴーレムのような超巨大な敵に対しては余りにも無力な武術体系であると──
剣聖としてならばそれでも良いかもしれない、だが剣聖とはフランシアの力の象徴。その象徴がどんな敵であっても後れはとって良いはずがないとッッ!!
そして、彼女は剣から離れたシンプルな発想で『雷撃』を思い至る。
彼女はそれを······ 人類が生み出した偉大なる破壊兵器『大砲』を見てたどり着いた──
自身が大砲の如き働きをすればいいのだとッッ!!
この馬鹿げた発想を実現すべく彼女は馬鹿げた修練を人知れず積み始める。
修練内容は実にシンプル、自分が得意とする雷魔法で自身の五体全てを強化し最速のスピードをもって対象に体当たりしし、粉砕する。
最初は木に──
次に岩に──
その次は隠れて城壁に──
時には目測を誤り大怪我することもあった、余りの辛さに一昼夜気絶することもあった──
それでも彼女はこの修練を辞めようとしなかったッッ!!
彼女は確信していたのだ、これこそが最も自分の能力に最適な必殺技であるとッッ!!
やがて彼女の狂気な迄の修練が実を結び始める──
ある時は青銅をッ!
またある時には鋼鉄をッッ!!
果てにはオリハルコンすらもッッッ!!!
彼女は遂に成し遂げたのでる、もはや彼女の特攻を止められる物質な少なかれこの王都からは無くなった──
そう、『雷撃』とは砲撃ッ!! 雷魔法で全身を武装したストレリチア自身が砲弾でありッッ!!
雷速で駆ける砲弾はッッッ!!!!
「!?!? バッ、バカッ──!?」
進路上のありとあらゆる物を打ち砕くッッッッ!!
ベルモントは最大の一撃が目の前で霧散するのを見届けると、その無防備な首には刃が食い込み間髪入れず目撃するとになる·····
首の無い胴体から噴水の様に血液が飛び散る様を····· それが自分の体であることを理解しながら······
『雷撃』は本来その五体全てを武器と化し相手に体当たり、破壊する技。
しかしその威力と方向は無差別的であり、ベルモントの後ろにあるマリーの寝室までも破壊する可能性を考慮してストレリチアは直前で減速し、剣で男の首を切り落としたのである。
「な、なぜだ····· ただ強さを求め、すべての者を、私を信じる者ですら裏切ってまでも力を手に入れたのに····」
首だけのベルモントは既に右半分が燃え始め、消滅寸前であった。本来なら首を切り落とされた程度なら呪印装術で再生させるが、己の渾身の一撃がまるで通用しなかった時点でストレリチアに対して致命的な敗北を痛感していたのである。
勝者であるストレリチアは、敗者であるベルモントを見下ろし言い放った。
「·····団長、貴方は既に終わっていたんだ····· 入隊試験の時、私との試合から逃げたときからね」
「なん····だと····?」
「あの時貴方は私の挑発に乗り戦うべきだった、例え敗北して恥辱にまみれようともな···· 強さだけを目指していると謳っておきながら名声と名誉に縛られていた貴方は余裕を取り繕い闘いから逃げたした。その時にフランシアの力の象徴、『剣聖』ベルモントはもう死んでいたんだよ······」
「ふ、ふふ····· 最後まで手厳しい奴だな、お前は······教えろ、お前はその規格外の力を持っていながら何を目指そうとしているのだ····」
ストレリチアは剣を鞘にしまい、顔に飛び散った反り血を片手で拭うと言い放つ。
「無論、最強に至ることのみ」
その一言でベルモントは消滅した──
しかし、ストレリチアを見つめる最後の眼差しさ恨みや嫉妬を抱いておらず──
かつての自分が登れなかった頂きに挑戦しようとする、ストレリチアを羨望しながら消滅したのだった──
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