1-18 喪剣
10年以上前、王都を震撼させた事件があった....
最初の犠牲者は夜道を襲われたうら若き女性で刺し傷が数十ヶ所にも及び、しかも時間を掛けて殺された変死体が見つかったのだ....
しかし、この事件には奇妙な点が一つあった。殺人現場は貧民街のど真ん中で有るのにも関わらず、一切『悲鳴』や争う『声』を聞いた者がいなかったのだ。
更に増えていく同じ刺し傷の犠牲者.... やがて11名目の犠牲者が出た時点で一人の男が容疑者に上がる──
その男の名はギレム、グランオルドルの一級騎士であり容疑の決め手になったのは男の『喪剣』と云われる特殊な魔法攻撃のためであった。
男を捕縛するのに、憲兵隊では力不足のためグランオルドルより一級騎士3名、二級騎士以下10名を派遣したが、尽く全滅。
結果ギレムの足取りは失ってしまい、未だ人々の心の中に恐怖を残すことになったのだ───
プルムは片足の機動力こそ失ってはいたが、まだ自らの死を悟ったわけではなかった。
「片足封じた位で勝った気になってんじゃないよ!!」
彼は脚部に風魔法を発動させ自身を加速させると、ギレムに向かって一直線特攻を開始したッッ!!
「なんだ? もう破れかぶれか」
ギレム薄気味悪い笑みを浮かべながら、これを迎撃すべく再び突きの構えを取る!!
二人が激突したしようとするまさに瞬間!! プルムはトップスピードを維持しまたまま左へと急カーブしたッッ!!!
そう!! 逃亡であるッッ!!!
(痛~!! 流石に切れた方の足にも風魔法発動させるのは無茶だったか~ 呪印装術を施している以上、まともに闘り合っても返り討ちに遭うのが必至! お嬢様置いてきたのは悪いけど、そろそろあの悲鳴を聴いた筋肉達磨の騎士サマが来るハ──)
林の木々を掻き分けて移動するプルムの視界が突如、巨大な何かがで覆い隠される!!──
「痛っ!! 何だよいきなり──」
否ッ!!
プルムは自分が『喋れる』こと、そして周囲を見渡して何も見えないことでやっと気が付いた!! 視界を何かで『封じ』られたのではなく、そもそも『奪われた』ということに!!
「クカカカカ、奇遇だねぇ さっきお別れしたばかりなのにまた会えるなんてなぁ」
そして聴こえて来る声は今プルムが遭遇したくないNo.1の男、ギレムッッ!!
「嘘ぉ~、アンタの一太刀目を食らうと一時的に『声』を奪われると聞いてたんだけど『視界』を奪われるとは聞いてねえぞ! 噂と違うじゃねえか!」
ギレムは満足そうに尻餅を突き視界を失ったプルムを見下ろしながら語り始める。
「世間じゃそういう事になっているが、俺の特殊魔法『ロストセンス』は『声』だけじゃなくて『視界』、『聴覚』、『触覚』を自由に太刀を浴びさせる毎に一時的に奪うことができるんだよ」
プルムは納得いかない様子で子供が駄々をこねる時のように地面に大の字になり暴れだす。
「なんだよそれチートじゃなえか! だがなあ これで勝ったと思うじゃねえぞ! オレには取って置きがあるんだからな!!」
「クカカカカ、ハッタリもここまで──」
「──状況がイマイチわからんが取り敢えずお前から仕留めるか....」
突如鳴り響く第三者の声....ギレムがその声の方向へ目を向けると、そこには大樹と変わらんばかりの太い腕から繰り出された拳が今まさにギレム顔面を撃ち抜かんと迫っていたッッ!!
(なッッ!!重ッッッッッ!!)
ダリルから放たれた一撃は首尾良くギレムのこめかみに直撃!!! ダリル必殺の拳による哀れな犠牲者はまるでピンボールの様に木から木へと体をバウンドさせ、茂みの中に落ちていった.....
プルムは分かっていたのだ、ダリルに仕組んだ追跡魔法でこちらに全力で向かって来ているのを──
故に万全を帰して低い姿勢を取ったのだ! 自身が最初にダリルの視界に入ってロックオンされないように!!
「Foooooo~、見えてないけど気持ちいぃぃぃぃ!! 信じて待ってたぜ相棒!!」
全力ガッツポーズをしてスカッとするプルムをダリル右手で指をさしながら冷たく語りかける。
「誰が相棒だこの阿呆が....人のお嬢様を傷物にしやがって、お前のせいで今も呪文のようなものを繰り返し呟いてんだぞ。元々はお前を締め上げるためにここまで来たんだ、あいつが済んだら次はお前の番だからそこで神妙に余命を数えながら待っていろ」
「何だよ一難去ってまた一難かよ! ま、あんな変態殺人鬼よりアンタの方がまだ話が出来そうだからヨシとするか!」
ジョーダンを飛ばし合ってるのも束の間、再び気味の悪い声が二人の耳に届くッッ!!!
「....クカ.. カカ..カ、今宵はなんて幸せ何だ....メインディッシュとデザート....どちらも超一流の一品だ....!」
ギレムは三回転ぐらいした首を元の位置に戻しながら、茂みの中から立ち上がったのである!!!
「....なんだあれ、気持ち悪。おいプルム、説明しろ」
「ま、不死身に近い化け物だと思ってくれ! あとあいつの太刀は絶対受けるなよ、オレみたいに視界奪われるから! あ、因みに今のは貸しだからな! これを情状酌量の根拠にしてくれ」
「お前に掛ける慈悲などないッ!!!....あと、その情報はもう無価値だぞ」
そう言いながらダリルは二の腕を目の見えないプルムに見せつけるッッ!!
「さっきの一撃の瞬間、撃った拳の反対側の二の腕に刺し傷を貰ってしまったからな....」
「....マジで?」
「マジだ」
「クカカ、そういう訳だ、あと30秒後にはお前も同じように視界を──!?!?!」
「──なら30秒で仕留めさせてもらうぞ」
瞬間、ギレムは信じられない光景を目撃したッ!!
突如現れたのだ!!ダリルが目の前に!!
ギレムは咄嗟に右斜め方向に切り上げようとしたが、間合いを支配しているダリルに脇を抑えられ不発!!!
その直後ダリルによる致命的な一撃が──
否ッッ!!!
致命的な連撃がギレムに襲いかかるッッッッッ!!!
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