1-17 災厄の子
人気のない林の中、地面に倒れ痙攣をしているマリーに呟く様に冷たく語りかける。
「悪いねお嬢様、こっちも仕事だから恨まないでくれよ...それと──」
プルムは近くにあった木を強く睨む。
「ギレム....何でこっちに居やがる。アンタの標的は小屋に残っている二人だろうが」
木の陰から出てきたのはダリル達が昼頃に出会った青白い不気味な男だった。
「クカカカカ、お前が上手くやっているか心配で来てやったんだよ」
プルムはその言葉を聞くと鼻で笑った。
「アンタみたいな気持ち悪い奴にお優しい言葉を掛けて貰えるとは思わなかったよ。あとはその殺気だけでも隠してりゃあ上出来ナンだけどね」
ギレムは不気味な笑みを浮かべながら腰にあった細身の刀を抜きプルムにゆっくりと近づく。
「すまんな、これも『新しい雇用主』から依頼の仕事何でね。それにお前には個人的興味もあってな....」
「なんだ、シリアルキラーだけじゃなくてペトフィリアも追加か! いよいよ救いようがねえな、アンタ」
「クカカカカ、減らず口もそこまでにするんだな、余り俺を興奮させてないでくれ。初めて何でな...エルフの肉を切るのは──」
その不穏な発言と同時に地面を蹴り上げ、脳天をぶち抜くべく右手の細剣で突きを繰り出すッッ!!
「切れるもんなら切ってみなっと!」
向かってくる剣先に対して目潰しと云わんばかりに足下にある小石と砂をプルムは蹴り飛ばす!
「! チッ、小癪な」
微かに見えるプルの影が上空へと消え、その剣先は空を切るッッ!!
「上かッ!」
ギレムが視線と剣先を上に向けるとそこには軽やかに宙をまうプルムの影が───
「──残念」
否ッ!!宙に舞っているのは服のみ!肝心の本体は──
「正解は下だよ──」
足下から裸の死神の声が鳴り響くと、鈍い光を放つナイフによってへその下から首もと近くまでかち上げられる様にかっ裂かれ、ギレムは赤い血潮をぶちまけながらゆっくりとまずは両膝をつき、やがて体全体を地に押し付けた──
「何だ、ブランクあったけどまだまだやれるもんじゃん、『オレ』」
この時、体の自由は効かないがしっかりとマリーは『戦慄』の光景を目撃していたッ!
それは未だ大量の血液を大地に染み込ませてるギレムではなく──
はたまたその鮮血を浴びているプルムの姿でもない──
「.....あ、あ、あ.....」
彼女は見たことが無かったのだッ! 父以外のものを!! プルムの股下にある『エレファント』を!!!
「きやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「な、何だ! 嘘だろ! 術は完璧だったのに!」
プルムは急いでマリーの元に近づき今度は気絶させようと比較的強度が強めの拘束魔法をかける。
「ふぅ、これでヨシッと。何にそんなに驚いたのかね~」
プルムは一安心と思いながら軽く息を吐くと、今後の自身の身の振り方を案じた。
「高い金出すからって、せっかくあいつの趣味のメイドキャラを買って出たのにまさか裏切るとはね~ ....この国にいても、もう将来なさそうだから取り敢えずあのクソ貴族にケジメでもつけたら、隣国に行っちゃおうかな~」
「───なんだ....その貴族の旦那なら─」
「! 痛ッッ!!」
──気が付いた時には遅かった、地を這うが如く超低空移動する黒い影が逃げれないようプルムの片足の腱を切断すると、交差した影はゆっくりと立ち上がり月明かりに当たる──
「───もう俺の方で処分しといたぞ。 だからゆっくり遊ぼうか....!」
ギレムの先ほどまであった、致命的な一撃による即死級の傷はグチュグチュと不気味な音をたてながは繋がり初めており、その真っ二つになった服から露になっている彼の肉体にはぎっしりと禍々しい魔方陣が書かれていた。
「....なるほどねそれが『新しい雇用主』からの前金ってやつか....?」
プルムはよく知っていた、その魔方陣のことを。何故なら──
「そうさ、お前の作った『呪印装術』は体に良く馴染むよ....エルフ最悪の魔術研究家『災厄の子』のプルムさんよぉ」
「....気に入ってもらって何よりだよ、元グランオルドル最悪の殺人鬼、『喪剣』のギレムよ」───
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます