1-14 王女姉妹の確執

「へへへ~、もう食べれないですよ~」


一等クラスの宿泊施設に泊まり幸せな夢を見ているベロニカに無慈悲な手刀が襲うッ!


「いい加減に起きろ、この阿呆」


「あいたぁ! な、何するんですかダリルさん!!」


あの激闘のあとアルザーヌの町長が町を救った感謝の印としてダリル一向は用意して貰った、町一番の宿泊施設に寝泊まりしていた。それに加え馬車と馬2頭まで譲って貰い、マリーが感謝を述べるとダリル一向はアルザーヌを後にするのだった。




「えぇぇぇぇ! あの亡命は催眠魔法掛けられたせいだったのですか!?」


「リアクションでかすぎるぞ、あとお前は何でもあっさりと人の話を信じるんだな(....俺も人のことは言えないがな)」


「しかも、その犯人がカルミア元王女だなんて....」


「い、いやまだ確定はしてないけど。だけど姉は私を恨んでいるはずだからね....」


「恨んでる? あんた達に何があったんだ」


マリーは歯切れの悪い表情を浮かべ、ベロニカはそれを察した。


「い、言いたくなければ言わなくて───」


「ダメだ、知ってることは全部言え」


「ええ~、この雰囲気でそれ言っちゃいますか普通?」


「....そうよね、巻き込んでいて教えない訳にはいかないよね....5年前の姉が王室から追放された事件覚えてる?」


「あの事件ですか~ 正直なところあんまり印象に残ってないんですよね~ 何だか追放理由も『王室にそぐわない行動のため』とかですっごい曖昧だったですし」


「それに加えカルミア元王女は元々素行不良で評判が悪く誰も疑問に思っていなかったからな」


「....それは表沙汰に出来なかったからよ。本当の罪状は......父と私の暗殺未遂、それも魔王の部下を手引きしようとしてのね」


その爆弾発言に流石のダリルも驚きを隠せなかった。


「....何でまたそんなことを。それにそれほどの凶行を計画しといて良く王室追放ですんだな....」


「正直なところ動機は分かってないわ。姉は元々支配欲や権力欲の権化のような人物、王室を追放される前は政治中枢において大派閥を形成していたから黙っていても王冠はいずれ回ってくるはずなのにね」


「なんにせよ、恨まれてるってことはあんたがその凶行を防いだということか?」


「正解。ある日匿名の密告文が私の部屋にあってその内容を全て話したの大臣達と父にね....直ぐに秘密裁判が開かれたわ、誰もが極刑やむ無しという雰囲気だったけど唯一父だけが助命を嘆願したのよ....」


「国王の娘への溺愛ぶりは有名だからな....それで今の軟禁状態に至るというわけか....」


ダリルは口では納得していたが、頭の中では疑問符が飛び回っていた───


何故この時局で、何故国王ではなくマリーを、何故殺す訳ではなく『捕まえる』ことに拘り、そしてなんの権力もない元王女の『協力者』達はどれ程いるのか──


様々な憶測を想像しダリルが導き出した答えは──







考えるのを辞めたッッ!!!




(国王と面会し俺の『願い』を叶えさせるためにも、マリーの協力と身の安全は必須。向かってくる驚異があるのなら全て打ち砕けばいいだけのこと......しかし、王女による暗殺未遂に勇者達の反乱、そして地方有力諸侯の王国からの離脱危機....例え今回の王都防衛が成功しても今の王政はそう長続きはしないだろうな....)




───同時刻、ダリル達が目指している次の町、メッサにて



「準備はできたようだな、お前たち....」


きらびやかな服装を着ている貴族風貌の中年の男が問いかけると大小二つの陰が頷く....


「『あの方』からの指令だ、もうすぐこの町にやってくるマリーを捕まえろとのことだ。手段は問わない、護衛の取り巻きが抵抗するようだったら殺せ、いいな?」


「承知しましたご主人様、このプルム命を掛けて任務遂行いたします」


「クカカカカ! 俺は早く殺しが出来ればそれでいいさ」




ダリル達に新たな驚異が襲いかかろうとしているのだったッッ!!!

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