1-9 亡国の姫君
──アルザーヌ門前にて
魔王軍が進駐しているアルザーヌに入る門の前では二体のゴブリン兵が会話していた──
「おい、お前知ってるかこの町を占領した理由」
「いや?王都を狙って西から進撃している本隊と挟撃するためじゃないのか?」
「それがそうじゃないらしいんだよ。何でも隣国に逃亡しようとしてる王室の関係者を捕らえるために──!?お、おい!!『あれ』なんだよ!?」
他愛もない会話をしているゴブリンの遠くに姿を現したのは、何か大声で叫びながら必死に抵抗する年端もいかない少女を抱えながらこちらに向かってくる筋肉モリモリマッチョマンだった!!
「なんだよあれ。に、人間か....?」
「いや...俺達を見てあんな悠然と近寄ってくる人間なんていないだろ普通....きっとオーク、オーガだろうよ....」
「そ、そうだよな..ハハーン、それじゃああの人間の女は獲物でこれから町の宿でお楽しみということか!」
そんな無意味な会話をしている間にも謎の筋肉モリモリマッチョマンが一歩また一歩と近づき、遂にゴブリン達の目の前に立ちはだかった!
「あ、あんたオークかオーガか?」
恐る恐るゴブリンは質問する──牙も角もなければ肌の色も薄橙色のオークかオーガらしき存在に、その圧倒的な自分達との実力の差を噛み締めながら──
「...人間だが...?」
「な、なんだと!?貴様何が目的でここに来た!!」
武器を構えるゴブリン達、ベロニカはただ嘆いた
「だから言ったじゃないですかぁぁぁぁ!?絶対こうなるってぇぇぇ!?迂回しようと言ったのにぃぃぃぃ!?」
そんな嘆きを無視してダリルは呟く
「....強い奴を出せ...」
「な、なんて言ったんだ貴様」
「いるんだろここに強い奴がな....そいつを出せと言っているッ!!」
「なっ!?!『エルヒガンテ』様の事を言っているのか、貴様に言われなくても呼んでやるわ!!」
ゴブリンの一人が手持ちの笛を強く吹こうとしたとき──
「ウィングショット!!」
「「ぐあっ!?」」
ダリルの後ろから詠唱が聞こえたと思ったら両脇を強力な風魔法が飛び交い、目の前のゴブリン達が散り散りの木っ端微塵となった...
「ひっ、ひぃぃぃ!?今度は何をやらかしたんですかダリルさん!?」
「貴方達こんなところで何をしているの!こっちに来なさい!」
ダリルが後ろを振り向くと同時にその白いローブを被っている女性らしき人物は手を掴みダリル達を近くの茂みへと連れていった。
「ど、どなたか知りませんがありがとうございましたぁ....」
「気にしなくてはいいわ、国民を助けるのは君主の役目ですもの」
息も途切れ途切れのベロニカが礼を言うと、女性はそのローブを脱ぎその少女の華やかさと大人の艶やかさを兼ね揃えた美しい顔を露にした──
その、女性いや少女は腰まで届きそうな銀色の髪を靡かせながら、その凛とした灰色の目でこちらを見つめて来ながら、ダリル達に語り始めた。
「見ての通り町は魔王軍に占領されているわ..なのに貴方達は何が目的であんなふざけた格好で町に入ろうとしたのよ....!」
少女の言葉にはダリル達の心配しながらも場違いな雰囲気を出す二人に対して僅かな怒りが込められていた...
しかし、当のダリルはあくまで大真面目だったので意にも返さず、そしてベロニカも少女の顔を見てゾルトラと初遭遇したときと負けずとも劣らない顔面蒼白カタカタモードに入っており何も耳に入っていなかった
「それはこっちのセリフだ、どうして『あんた』が護衛も無しにこんな所に──」
その無礼は発言を聞いたベロニカは突如正気を取り戻したと思ったら鬼の表情をし口調を荒らげながら雄弁に喋り始めた
「控えろぉぉ!?この場におわす方を何方と心得る!恐れ多くもロイ王朝現国王の子女!マリー·ロイ様であら─」
「ちょっと大声出さないでよ!聞こえるでしょあいつらに!
少女はベロニカの口を塞ぐと、深いため息をつきながら再び麗しい瞳でダリアを見つめる
「どうやらお互いの目的を知る前に自己紹介が必要なようね.....私の名前はマリー·ロイ、この子の言うとおりこの国の国王、フィリップス·ロイの娘よ、それで貴方達は何者なのかしら?」──
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