第84話 魔剣使いアルシュ先輩
食堂の横にある
放課後であるが、普段から暇を持て余せた生徒が
だが、今日は違っている。
生徒ではない部外者が2人。 不審者どころが生徒の誰もが知る有名人。
将軍と枢機卿。
学園内に悪魔教が入り込んいた。 さらには学園の地下には未確認の迷宮が広がっている。
どちらも両者の管轄となる仕事だ。
2人は不仲……どころか敵対関係と言われているが、それはあくまで立場上で
事であり、同じ年頃の娘を持つ父親同士。
「そう言えば、将軍の娘さんは武道武術を幼い頃から修めていると聞いたが……」
「あぁ、おたくの娘さんと立ち会ったそうだな。すまぬ、怪我を負わせたみたいで」
「それはお互い様……と言うよりもうちの娘から言い出した事です。謝るならば私が……いえ、それで気になる事があるのですが」
「うむ? それは?」
「将軍の娘で武の才があるとわかっていて、なぜ剣を教えなかったのですか?」
「むむむ……いや、それは……やはり、徒手空拳の戦いと武器を有しての戦いでは才が違うらしい」
「ほう、それは興味深い」
「ワシも幼いノアに剣を教えようとした。しかし、剣を渡してみせた所、素振りの1振り2振りした所で剣を落としてしまった」
バッドリッチ将軍は、どこか遠くを見るように思い出していた。
「なぁに、娘の日常は師範たちを相手に厳しい鍛錬。その日は、たまたま疲労が溜まっていたのだろうと、また数日後に試させてみたさ」
「その時も、また剣が振るえなかったのですか?」
「うむ、その後も幾度となく剣を振るわせてみた。しかし、すぐに剣を落としてしまう。まともに素振りができた事がなかったのだ」
「……それでご息女には剣を振る才能はないと?」
「そうであろう。素振りすらできぬのだ」
枢機卿はチラリと将軍の背中を見た。 そこには大柄の彼の身長と同じくらいの大剣が背負われていた。
「もしやと思いますが……将軍が普段使っている剣を渡したのですか?」
「ん? そう言えばそうだったな」
「……」と枢機卿。 人の身長と同じサイズの鉄の塊。
いや、規格外なのは長さだけではない。その剣幅も、通常の何倍なのだろうか?
「それはもはや、振る事ができる時点で超人の部類なのでは?」
果たして、枢機卿の呟きは将軍の耳まで届いただろうか?
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
魔剣研究部。
魔剣を構えたアルシュ先輩とノアは対峙していた。
無論、部活の練習試合形式。 互いの魔剣に殺傷力は消されている。
部員たちも鍛錬の手を止めて話合う。
「流石だ。アルシュ先輩の構え……堂に入っている。対してノア後輩は――――え?」
「あの構え……初めて見る。まるで素人のように見えるのだが……」
「いや、そんなはずはあるまい。あのバッドリッチ将軍のご息女。おそらく、初めて剣を握った時を再現しているのではないか!」
「な、なるほど? 深いな」
部員たちも、ノアの姿に騒めきと驚きを隠せない。
まさか、あのバットリッチ将軍の娘が剣を扱えないとは夢に思っていないのだ。
一方、ノア本人はと言うと――――
(~~~ッ! これは羞恥心ががが、早く終わらそう!)
前に出る。その動きに――――
「―――疾い!」とアルシュ先輩。
ノアは剣を振るのではない。
体当たりのような動き。
だが、その動き。
体を当てに行くのではない。体より前に剣を出して当てに行く。
受けるアルシュ先輩。
感じたのは衝撃と浮遊感。 地面に付けた両足が浮かび、後方へ吹き飛ばされる。
「受けた衝撃――――全国にだって、これほどの威力は!」
「フン!」とノアは追撃。 剣を持つ腕は、剣を振るうのではなく――――
「剣ではなく――――ッッッ! 剣を握ったままで殴りに来るのですか」
ノアは剣を握った状態での右ストレートを放った。
辛うじてアゴへの直撃を回避したのは全国最強の魔剣使いの反射神経ゆえか?
続けて、ノアの蹴りがアルシュ先輩の太ももに入る。
「くッ!」と初めて受ける痛み。 さらに同じ個所を狙っての蹴り。
しかし、それは放たれなかった。 弾かれたように後ろに下がるノア。
彼女が、数々の戦闘で磨き上げてきた実戦でのカンというものが、危険だと判断。
無理矢理、攻撃をキャンセルして後ろへ飛んだのだ。
「ん~ もしかして先輩、魔剣を使おうとしました? 今?」
「そりゃ、そうだよ。魔剣を使わないと君に勝てる気がしない……と言うか、余裕ぶって基礎的な魔剣なんて選んだ自分を殴りたいくらいだね」
「全国優勝者に、そう言われると照れますね。 じゃ、ここからが……」
「うん、今から本気で行かせてもらいますよ!」
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