「ゴーン・ガール」 監督:デヴィッド・フィンチャー

 上映時間は、149分。

 原題は「Gone Girl 」で、GoneはGoの過去分詞形。

 つまり、とか、、などを意味します。


 2014年9月26日に、リンカーン・センター映画協会が主催する、ニューヨーク映画祭で、ワールド・プレミア上映された、ミステリーかつサイコスリラー作品です。


 原作は、2012年にアメリカで出版された、ギリアン・フリンによるベストセラー同名小説。全米では、600万部を売り上げたそうです。

 日本でも評価されて、2014年の「このミステリーがすごい」海外編では、9位にランクイン。また、文庫翻訳ミステリー・ベストでは、6位になりました。

 ちなみに、この年の「このミステリーがすごい」国内編で、1位に輝いたのは、法月綸太郎さんの「ノックス・マシン」。2位が、長岡弘樹さんの「教場」です。


 映画「ゴーン・ガール」は、先行公開も含めてですが、北米での公開初日に1320万ドルという興行収入を叩き出し、公開されて初の週末には、北米興行収入1位に輝いたかと思うと、全世界では3億6933万ドルを売り上げる大ヒット作となりました。

 アメリカのローリング・ストーン紙でも、2014年の映画ベスト5にランクイン。

 監督のデヴィッド・フィンチャー作品としては、2002年に公開された「パニック・ルーム」を超える最大の興行成績です。


 デヴィッド・フィンチャーは、1992年に「エイリアン3」で映画監督デビューを果たし、「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」と「ソーシャル・ネットワーク」では、アカデミー賞監督賞にノミネートされました。

 ヒット作が多く、「ドラゴン・タトゥーの女」や「ゾディアック」、ブラット・ピット主演の「ファイト・クラブ」や「セブン」、「ゲーム」などを、ご覧になった方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 テレビシリーズの製作総指揮や、ミュージックビデオの監督なども務めています。

 


 さて、本作「ゴーン・ガール」の始まりは、「アルゴ」でアカデミー賞作品賞を授賞した、ベン・アフレック演じる34才のニック・ダンと、ロザムンド・パイク演じる妻エイミーの、結婚5周年記念日である7月5日の朝。

 毎年この日には、エイミーが家の中のどこかにヒントを隠し、クイズ形式になっているそれらをニックが捜すという、プレゼント交換。通称「記念日の宝探し」が行われます。

 2人が暮らすのは、ニックの故郷、ミズーリ州ノース・カーサジという架空の町。

 ミズーリ州は、ミシシッピ川沿いにある内陸の州で、州の愛称は、「疑い深い州」。


 元々、ニューヨークで雑誌のライターをしていたニックですが、電子書籍の波に押されて失職。エイミーはニューヨーク育ちですが、夫について来ることに。


 彼らははたから見る分には、庭付きの戸建こだてに住む、美男美女の理想的な夫婦に見えます。

 しかし内情は…。

 結婚記念日にニックが帰宅すると、玄関は施錠せじょうされておらず、妻の姿がどこにもない。加えて、室内には荒らされた形跡が。ひっくり返され、割れたガラステーブルを見て、ニックは動揺します。


 ニックは当然、警察に通報。

 駆けつけた彼らが、室内を調べたところ、台所で血液反応が検出されて。それも、大量の血液がき取られたようだと。鈍器で殴られたような。

 果たして、他殺か失踪か。

 エイミーの生命保険の補償額が引き上げられていたり、出てくる証拠は、どれもニックを疑えというようなものばかり。高額な支払いは、すべてエイミーの名義になっている。つまり、金目当てなのか。

 

 エイミーの両親が、名の知られた児童文学作家であり、人気作「アメージング・エイミー」のモデルが娘だったものだから、マスコミの報道は過熱します。

 ニックは、妻の捜索を呼び掛けるために、笑顔で妻の写真とカメラの前に出ますが。これがあだとなる。どうして笑っていられるんだと。


 その後、ニックは世間でソシオパス精神病質呼ばわりされることになり、バーで働く双子の妹、マーゴにさえも、妻に何をしたんだと疑われるようになります。


 エイミーはどこへ行ったのか。

 まだ生きているのか。

 無事でいてくれ。


 ニックが事情聴取で知らされるのは、妻に関する知らない面ばかり。

 実際、彼はエイミーについて、ほとんど何も知らなかったことを思い知らされます。

 普段の行動や友人など。

 近所の人でさえ、彼女の妊娠を知っていたのに。

 夫であるにも関わらず、血液型さえ知らない。


 「記念日の宝探し」のために、エイミーが作った「ヒント1」と書かれたカードも家の中で見つかりますが。


 エイミーが失踪した翌日、彼女の両親は記者会見を開きます。

 そこで広く情報をつのったところ、エイミーが過去に付き合った男の中で、怪しい人物が2人いました。

 振られて自殺未遂を起こした、ストーカーのデジー。

 もう1人は暴力を振るい、レイプ疑惑まで掛けられていた。

 学生時代、みんなの憧れのまとだったエイミー。

 

 しかし逮捕されたのは、ニックでした。


 警察が、宝探しのヒントを辿たどっていくと、「ヒント2」の封筒があったのは、大学で執筆方法を教えているニックのオフィス。

 そこにはなぜか、女性用の赤いパンティーもあって。


 発見された、「ヒント3」のカード。

 エイミーの日記や、使用された凶器。


 話が二転三転するうちに、観客のニックに対する印象だけでなく、エイミーに対する印象も変わっていきます。



 実は、この話には、元ネタとなったという、妻のレイシーが失踪した事件があります。興味のある方は、ぜひ調べてみて下さい。


 フランスのミステリー作家ピエール・ルメートルの作品がお好きな方には、特に「ゴーン・ガール」は観て頂きたいです。




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