　上映時間は106分。

　 2014年のベルリン国際映画祭で、最高賞である金熊賞と、最優秀男優賞を授賞した傑作スリラーです。製作国は中国。

　原題は、「白日焰火（バイリヤンフオ）」。白日（バイリ）を翻訳すると、太陽や真昼、白昼（はくちゅう）という意味のようです。焰火（ヤンフオ）は、花火。つまり「真昼の花火」でしょうか。

　英語題は、「Black Coal（ブラックコール）, Thin Ice（シンアイス）」。「黒い石炭、薄い氷（つまり薄氷（はくひょう））」ですね。

　ディアオ監督は、女優のチャン・ツィイーが17才で入学した、北京にある中国屈指の演劇大学・中央戯劇学院（ちゅうおうぎげきがくいん）の卒業生です。

　卒業後、彼は脚本家としてキャリアをスタートし、2003年に長編作品「制服」で映画監督デビューしました。その作品で、ロッテルダム国際映画祭で特別表彰を２つ、バンクーバー国際映画祭でも賞を受けています。

　2007年には、2作目の「夜行列車」で、ワルシャワ国際映画祭でグランプリを受賞。また、カンヌ国際映画祭で、同作品は、ある視点部門に出品されました。

　物語の始まりは、1999年の黒龍江省（こくりゅうこうしょう）。中国の最北東部に位置する省で、省都（しょうと）はハルビン市。北はアムール川を挟（はさ）んで、ロシアと国境を接しています。雪国ですね。

　全国６都市15か所の石炭工場で、運ばれてきた積み荷から、バラバラになった遺体の一部が相次いで見つかります。離れたところだと、互いに100キロ以上も距離がある。

　だとしたら、これは複数犯による犯行なのか。

　遺留品（いりゅうひん）から身元が特定されますが、リアン・ジージュンという、石炭工場の計量部で働く男でした。各地で見つかった手や足、それに肉片などは、すべて彼のもの。

　事件の捜査を任（まかさ）されたのは、チャン・ジリー捜査官。彼を演じたリャオ・ファンが、ベルリン国際映画祭で最優秀男優賞を授賞しました。

　ちなみにベルリン国際映画祭は、2020年8月24日に、性別による区別をなくすとして、男優賞と女優賞の廃止を発表しています。

　さて、事件の参考人として浮かんだのが、トラック運転手のリウ・ファーインという男。なぜなら彼は、事件発覚の２日前に、仕事を辞めていたからです。

　チャン捜査官と相棒のワン・シェビン捜査官、それに他の捜査員たちは、リウの元へ赴（おもむき）きます。

　一旦（いったん）は、捜査員たちがリウを拘束（こうそく）しますが、リウは隠し持っていた銃を発砲し、二人の捜査官を射殺。リウはチャンによって射殺されますが、チャン自身も撃たれて負傷します。

　捜査官のチャンとワンは、ロン・ロン・ランドリーというクリーニング店で働く、リウの妻ウーに、リウの遺骨を返しに行きます。

　ウーは、勤務先のすぐ傍（そば）に立つ街路樹の根元に、遺骨を埋める。

　５年後の2004年、事件によるトラウマから、チャンは飲んだくれの警備員になっていました。

　しかし、車中で張り込みをするワン捜査官と再会し、2001年から続く２件のバラバラ殺人事件が、1999年に起きた事件と同じ手口だと聞かされる。

　かつての参考人、リウ・ファーインは、1999年に亡くなっている。

　だとしたら、犯人は誰なのか。

　切ないラブストーリーでもあり、丹念（たんねん）なドラマもあります。

　何といっても、野外スケート場のシーンは、美しく、静謐（せいひつ）で、恐怖と哀しみも連れてくる。

　果たしてチャンとワンは、犯人を捕まえられるのか。

　犯人の動機は何なのか。

　この作品のミステリーとしての魅力は、フーダニッド（犯人は誰なのか）ではなく、間違いなくハウダニッド（どうやって成し遂げたのか）でしょう。

　中国名を片仮名で表記するのは難しく、チャンにするのかジャンにするのか迷いました。チャン・ツィイーも、チャン・ツーイーと表記する方がいいのかな、とか。

　いまだに迷ってます。

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