どんでん返しのミステリ好きが、二度観必死の映画を勧めてみる

「エスター」 監督：ジャウム・コレット＝セラ

　上映時間123分。

　2009年にアメリカで上映された、サイコロジカルホラーです。

　もうね、怖い怖い。

　スペイン人の監督、ジャウム・コレット＝セラは、どちらもリーアム・ニーソン主演のサスペンスアクション「フライト・ゲーム」やアクションスリラーの「アンノウン」で知られています。

　製作には、レオナルド・ディカプリオの名もあり、アメリカにあるホラー映画専門の製作会社、ダークキャッスル･エンタテインメントも加わっています。

　ダークキャッスル･エンタテインメントは、「バック・トゥ・ザ・フューチャー 」シリーズに、「フォレスト・ガンプ/一期一会 」、「ザ・ウォーク」を監督したロバート・ゼメキスと「ダイ・ハード」や「マトリックス」シリーズを製作したジョエル・シルバが、共同で設立しています。

　この映画のタイトルの原題は、「Orphan（オーファン）」。

　つまり、孤児です。

　孤児の名前が、邦題になっているエスター。

　彼女は、国際養子縁組によって、ロシアからきた９才の美少女です。

　引き取り手の一家が暮らす地元にある、聖マリア女子孤児院のシスターいわく、とても個性的で年齢よりも大人な子。

　余談ですが、2017年に、ロシアとアメリカ間の養子縁組は禁止されています。

　さて、エスターを引き取ったのは、とある郊外の立派な二階建て住宅に暮らす、４人家族のコールマン一家。

　音楽教師の母ケイト、その夫ジョン。12才の長男ダニエルに、5才の娘マックス。

　ケイト役のヴェラ・ファーミガは、「縞模様のパジャマの少年」で主人公の母親を演じ、アカデミー賞作品賞を授賞した「ディパーテッド」では、ヒロインのマドリン役を。ジョージ・クルーニー主演の「マイレージ、マイライフ」においては、アカデミー賞とゴールデングローブ賞で、助演女優賞にノミネートされています。

　２人も子供がいるのに、夫妻が孤児を迎えようと決心したのは、ケイトが３人目の子供を流産し、精神的に不安定になったから。

　補聴器を使用しているマックスは、すぐに手話を覚えたエスターに懐（なつ）きます。聞き分けが良く、マックスの面倒も見るため、ケイトとも良好な関係を築き始める。

　しかし、ダニエルは頑（かたく）なに、エスターに心を開きません。

　エスターの転校初日、教室に入った彼女に対し、クラスメートの女子が、「おばあちゃんの服みたい」と馬鹿にします。

　笑い声をあげる、他の子供たち。

　睨（にら）みはしますが、エスターは言い返しません。

　それは、初日だからなのか。

　彼女の性格ゆえなのか。

　一緒に暮らす日が増えるにつれて、エスターの言動や行動に、違和感を覚え始める母親のケイト。

　なぜ、手首と首にいつもリボンをつけていて、それらを外すのを極端に嫌がるのか。単なるこだわりなのか。そうでないなら、なぜ？

　９才にしては、性の知識があり過ぎるのではないか。どこでそんな言葉を覚えたのか。

　まだ子供なのに、なぜ入浴の際に、いつも鍵をかけるのか。単に、ませているだけなのか。

　どうして頑（かたく）なに、歯医者に行きたがらないのか。

　前日に教えたばかりなのに、ピアノの腕が上達し過ぎている。「あなたが教えたがっていたから」と答えるエスターに、ケイトは返す言葉がありません。以前どこかで教わっていたなら、それはどこなのか。

　そんな風に膨らむケイトの疑問を、夫のジョンは意に介（かい）しません。

　なぜなら、まだエスターは、ジョンに対しては猫をかぶっているから。

　ある日、ケイトは、エスターが大切にしている聖書を盗み見ます。そこには、北ヨーロッパの国エストニアにある精神病院の記述が。

　ケイトはその病院に連絡を入れますが、「エスターの記録はない」と言われてしまいます。だったらどうして、彼女はこの病院のことをメモしていたのか。

　真実は残酷で、ラストシーンは圧巻です。

　実際にあることらしく、リアルエスターで検索すると、色々と出てきます。

　某（ぼう）人気少年漫画で、題材に使用されたこともあるため、ご存じの方もいらっしゃるかもしれません。