「鑑定士と顔のない依頼人」 ②謎の女性クレア
空港でクレアと電話すると、競売にかける家具は匿名にしてほしい、とヴァージルは頼まれます。
テレビで白髪に戻したあなたを見た。今の方が素敵よ、とも。
競売後、ヴァージルはクレアに電話しますが、何日も彼女は出ないまま。
不安になったヴァージルは、フレッドに連絡しますが、フレッドのところにもクレアから連絡はきていない。
しかも何と、フレッドは肺炎で寝込んでいる。
だとしたら、今は誰が、クレアに食料を運んでいるのか。
ヴァージルは不安に駆られます。
ヴィラへ食料を持って行った、ヴァージルの目に飛び込んだのは、血の付いたタオルに倒れた椅子。
一体何があったのか。
クレアのいる隠し部屋のドアを叩くと、聞こえてきたのは喘ぎ声と叫び。
出ていくように拒絶されますが、ヴァージルは諦めません。
つまずいて転んで、頭を打った。
食料は、誰に電話しても出なかった。
医者には診せたくない。
クレアの悲痛な言葉に、ヴァージルは後悔します。
自分の出張中に、何ということが起きてしまったのか。
ヴァージルは遂に、携帯電話の購入を決意します。彼女のためだけに。
自宅の隠し部屋に、新たな女性の肖像画を飾っていたところ、ヴァージルにクレアから電話がかかってきます。
怪我はもう大丈夫。
目録に目を通したが、売ろうか迷っている。
家も売ろうか迷っているが、離れてよそへ行くなんて怖い。
家が大きすぎる。
実はクレアは、自宅で働いていて、小説や読み物を書いている物書きだとヴァージルに打ち明けます。ペンネームを使っていると。
そして、将来について考えるのが、一番の苦痛だとも。
またヴァージルがヴィラへ向かうと、クレアは、家具や絵画の写真撮影は、スタジオでして欲しいと頼みます。人が家に来るのは嫌だと。
ヴァージルは、この日一計を案じ、わざと音を立ててドアを閉めた上で、こっそりと室内に残ります。隠し部屋から出てきたクレアの姿を、彫像の陰から、初めて覗き見るヴァージル。
次にヴァージルがヴィラへ向かったとき、門の鍵が変えられていました。
ヴィラの向いのカフェで、クレアに電話をかけたものの、繋がらない。
しかしヴィラの門から、袋を持った男が出てくる。
ヴァージルは慌てて、頼んだ紅茶を飲まずにヴィラへ向かいます。
家具と絵画の査定を、隠し部屋の隙間から差し入れたヴァージル。
査定に目を通すよう頼むヴァージルに、クレアはヴァージルが、よくヴィラの地下にいることについて言及します。
門の鍵については、交換するのは半年ごとだと。
テーブルの上に、新しい鍵があるから持っていくよう、クレアはヴァージルに告げもします。
「人生を台無しにしている」
クレアを憐れむヴァージルの発言に、彼女は遂に告白します。
病気になったのは、エッフェル塔で。
広い空間でも、怖れに負けなかった場所は、14才のときに修学旅行で行ったプラハ。天文時計のある広場で、何度もそこを歩いた。美しかった。
奇妙な内装のレストランがあった。今でも懐かしく思うのは、あの店だけ。
店の名は、【ナイト&デイ】。一度も再訪していない。
バラの花束を持って、ヴィラへ向かったヴァージルですが、クレアは査定資料を読むなり、安すぎると言って激怒します。
「高値の品でバランスを取り、もっと高く落札される」とヴァージルは説得を試みるものの、聞き耳を持たないクレアは、そんなのギャンブルだと言い捨てます。
それだけでなく、ヴァージルを泥棒扱いするは、もらったバラの花をその場に捨てるは、酷いもの。
しかし、ヴァージルが1人でレストランへ向かうと、クレアから電話がかかってきます。
「誰かから花を贈られたのは初めて」
そう言って泣き出すクレアに、ヴァージルが怒ってないと告げると、クレアは「あなたが私を変えた」と。
玄関の扉を開けて、庭を眺めた。
扉まで行けたのは、初めて。
ここまで言われたヴァージルは、すぐにヴィラへ向かいます。
新しい治療法が効くかもしれないと言うヴァージルに、クレアは「あなたと話している方がいい」と。
スタジオで写真撮影をして欲しいと頼まれた日と同様に、ヴァージルはわざと音を立ててドアを閉めた上で、室内に残ります。
隠し部屋から出てきたクレア。
彼女に電話がかかってきて、クレアは電話の相手に対し、ヴァージルのことを「信頼できる」と褒めています。
しかし、ヴァージルは、携帯電話を落としてしまう。
当然クレアは怯え、隠し部屋に戻ってしまいます。
ヴァージルがヴィラから走り出て、門を閉め、塀の外まで来たときに、クレアから電話が。
「お願い、助けて」と。
ヴァージルは、しばらく付近をうろついた後、ヴィラに戻ります。
「誰かいるの、追い出して」
ヴァージルが、その正体が自分で、一目姿を見たかったと打ち明けると、クレアは彼を追い出します。
「監視していたのね。出て行って。もうこれきりよ」と。
仕方なく、ヴァージルが階段を下りて帰ろうとすると、クレアに引き留められます。
「お願い、ヴァージル。行かないで」
彼女は喘いでいて、後ろを向いているため、ヴァージルからは顔が見えない。
「あなたを傷つけるつもりはない。どうしても我慢できなかった。あなたを見たい」
クレアはヴァージルの方を向き、このとき初めて、ヴァージルは彼女に触れます。彼女の頬に。
あらすじを書き過ぎだと、お思いでしょうか?
しかし、これだけ書いても、決して真相にはたどり着けないと確信します。
何しろ、二度観しないと分からない伏線が多すぎて、一度観ただけでは、観客はただ呆気にとられることしか出来ないからです。
この作品は、小林泰三さんの「アリス殺し」や麻耶雄嵩さんの「蛍」をお好きな方には、気に入って頂けるんじゃないでしょうか。
ホラーが苦手な方や、残酷なシーンに目を背けてしまう方でも、安心してお勧めすることの出来るミステリー映画です。
もちろん、個々人の好みもありますし、大嫌いだという方もいらっしゃるでしょう。それでいいのです。
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