「鑑定士と顔のない依頼人」 ①傲慢な鑑定士
監督は、ジュゼッペ・トルナトーレ。
上映時間124分。
2013年の作品です。
トルナトーレ監督の他作品で有名なのは、シチリア島が舞台の「ニュー・シネマ・パラダイス」。この作品は、アカデミー賞外国語映画賞の受賞もあり、世界的な大ヒットに。
ローマ在住の映画監督が、戦後まもなくの頃の子供時代に、村の中心に位置する小さな映画館に出入りしていたことを回想する話です。
「鑑定士と顔のない依頼人」というタイトルですが、主人公の美術鑑定士ヴァージル・オールドマンは、傲慢でやり手。そのためにかなり裕福。
白髪染めを欠かさず、彼の通う高級レストランでサーブされる食器には、彼のイニシャル(V・О)が刻印されています。
趣味は女性の肖像画の収集で、自宅の広い隠し部屋の壁一面に、彼のコレクションが飾られています。
食事する際や、人と握手をするときにも、手袋をつけたままという一面も。
ここまでの説明で、松岡圭祐さんの「万能鑑定士Q」を思い浮かべた方も、いらっしゃるかもしれません。
しかし、「鑑定士と顔のない依頼人」は、美術ミステリではなく、ヴァージルとある依頼人の関係性が焦点となります。
依頼人の名は、クレア・イベットソン。
一年前に亡くなった両親が残したヴィラ(別荘)にある家具を、査定して欲しいというのです。
彼女が言うには、家具は価値のあるものばかりだとか。
しかし、彼がいざヴィラへ出向くと、門は閉まっているし、誰の姿もない。おまけに雨も降ってきますが、ヴァージルは携帯電話が嫌いで持っていない。
後日、彼は職場で電話越しにクレアに怒鳴ります。「雨の中、私を40分も待たせた者はいない」と。
ヴァージルが、今度はアシスタントを装い電話に出ると、彼女は泣いていて、車にはねられ入院していたと話します。明日には退院できると。
次にヴァージルがヴィラへ向かったときには、門が開いていて、管理人のフレッドという男に出迎えられます。しかし、クレアは夜中に熱が出て来られないと。
ヴィラの中を案内しながら、フレッドはヴァージルに、クレアが一人娘ということや、自分がクレアの両親の使用人だったことを話します。
またクレアからヴァージルに電話があり、作業を始めてから契約書にサインすると彼女は主張しますが、またもや彼女はヴァージルとの面会をすっぽかします。
午前8時半に面会の予定が、2時間半後の11時になっても彼女は現れない。
ついにヴァージルは、昼までにクレアがヴィラに現れなければ、作業はすべて中止し、手を引くと言い切ります。
すると、ヴァージルがヴィラにいるときに、クレアから電話がかかってきます。「サインするから、契約書を置いていって」と。
ヴィラへ行けないという今回の理由は、車が盗まれ、警察へ通報しにいったというもの。
電話の最中、ヴァージルの傍にある階段で、作業員がはしごを落とします。
すると「気をつけろ!」という怒鳴り声が、電話越しにも聞こえます。それも全く同じ声で。
ヴァージルの近くでドリルの音が聞こえると、電話の向こうでも、少し小さいながらも同じ音が聞こえてくる。
クレアが怒鳴ると、ヴィラのホール中に、同じ声が響いて聞こえます。
クレアが自分と同じ場所、ヴィラの中にいると確信したヴァージルが、「いるなら出てこい」と声をかけます。クレアは夜9時過ぎに電話してくれたら、説明すると言うだけ。
いざヴァージルが電話すると、なんとクレアは、もう手を引いて欲しいと彼に頼みます。
その電話の前に、ヴァージルはフレッドから情報を聞き出そうとして、バーへ誘い金を渡したのですが。フレッドはヴィラで11年働いているにも関わらず、クレアと会ったことがない。
得られた情報は、クレアが27歳くらいで、奇妙な病気にかかっていること。
次第にヴァージルは、依頼人のクレアに興味を抱きます。するとヴィラから離れがたくなり、仕事でのニューヨーク行きもキャンセルしてしまいます。
それからヴァージルはヴィラに向かい、クレアとドア越しに話をします。
クレアが言うには、彼女は15歳から外に出ていないと。
誰にも会わなかった。
他人がいる場所が怖い。
ヴィラの中では、誰もいないときに歩いている。
外へ出るのは、考えただけで恐ろしい。
しかしクレアは、ヴァージルに対しては心を開き始めたのか、こんな発言をするようになります。
「あなたもいつも手袋をしている」
「私たち二人は似た者同士」
ヴァージルは、契約書をテーブルの上に置いておきます。
その後、ヴィラで受け取った記入済みの契約書には、抜けている個人情報が。
その部分は、パスポートを参照して欲しいと言われたものの、クレアのパスポートは失効していて、写真は子供の頃のもの。
「髪の色をごまかす人は、最低よ」と罵られ、ヴァージルが怒って外に出ると、管理人のフレッドに会い、ヴィラの鍵を渡されます。
フレッドは、月曜から、買い物を届けているだけだと。
彼はヴァージルに、1つ忠告します。
「扉の開閉は音を立てて。でないと、クレアはパニックに」
この頃になるともう、ヴァージルはクレアのことが気になって仕方ない。
書店で広場恐怖症についての本を手に取り、せっかく染めていた髪は、白髪に戻すほどに。
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