どんでん返しのミステリ好きが、二度観必死の映画を勧めてみる

更級ちか

「明日、君がいない」 監督:ムラーリ・K・タルリ

 上映時間99分。


 オーストラリアの作品で、監督が脚本を書きあげたのは、19歳のとき。

 2006年、監督が21歳のときに、カンヌ国際映画祭で上映され話題になりました。

 他にもオーストラリア国際映画祭など、各国の映画祭で公開されることに。


 原題は、「2:37」。

 というのも、ある平日の午後2時37分に、高校のトイレで生徒が1人自殺するからです。


 亡くなったのは誰なのか。

 なぜ自殺してしまったのか。


 そんなあらすじを知ると、辻村深月さんのデビュー作「冷たい校舎の時は止まる」を連想される方もいらっしゃるかもしれません。


 しかし、鑑賞後の後味は、個人的には違うものになりました。


 主な登場人物は、目立たないが誰にでも親切で、聞き上手のケリー。

 弁護士を父に持ち、成績優秀なマーカスと、その妹メロディ。

 両親には溺愛されているものの、学校では1人で過ごす、眼鏡をかけて少しぽっちゃりしたスティーブン。

 身体能力に優れ、サッカーが得意だが勉強が不得手で、女子生徒からの人気が高いルークと、その美人な彼女サラ。

 髪を肩近くまで伸ばし、校内でもニット帽をかぶっているショーンは、はっきりと自己主張をする。


 身体的な障害を抱え、学校でいじめを受けている者。

 ゲイだとからかわれ、ストレスからマリファナに手を染める者。

 近親相姦により妊娠してしまい、摂食障害になった者。

 何がなんでも恋人を失いたくない者。

 ゲイであることを必死に隠そうとする者。

 両親に期待されていない者。

 他人を馬鹿にし孤立した上、現状の自分に満足できない者。

 

 彼らそれぞれの悩みが明らかになっていくと同時に、間に挟まれる一人ひとりのインタビュー映像はどんな意味を持つのか。


 出来ることなら、若いうち、学生のうちに観て頂きたい。


 のですが、気持ちが落ち込んでいるときは、鑑賞をお勧めしません。


 我孫子武丸さんの「殺戮にいたる病」や道尾秀介さんの「向日葵の咲かない夏」、もしくは歌野晶午さんの「葉桜の季節に君を想うということ」を読まれても怒りを覚えなかった方。

 それらの作品が大好きだという方には、ぜひ観て頂きたいですし、何ならコメント欄に作品の感想を頂けたらと思います。


 ちなみに、監督はガス・ヴァン・サント監督の「エレファント」の撮影手法を真似たそうです。「エレファント」も高校が舞台で、スクールシューティング(学校での銃乱射)を題材にしています。


 

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