第8話 氷の神殿

 

 ある朝の事である。


 『雪の聖女』三姉妹が真剣な表情で御神木に向かう。


 大きな雪の結晶が地上に落ちると


 『姫様の居場所が分かりました。北の国にある。凍結湖です』


「氷の天界からのメッセージの様ね」


 マヤが呟くと三人は旅支度を始める。


「義元も付いて来い」


 サナが微妙な事を言い出す。リアもマヤも首を縦に振るう。この目で真実を見届けろとのこと……。俺も冬物を取り出して庭先で待つと三人が手をかざす。五メートル程の雪の結晶が現れて三姉妹は上に乗る。


「安全は保障出来ないけどスピードは出るわ」


 恐る恐る、雪の結晶に乗ると浮かび上がり、冬目神社を後にする。雲が下に見えてプライベートジェット機に乗った気分だ。『雪の聖女』の力でバリヤーが張られて風や寒さは無い。しばしの旅行気分だ。北に向かう俺は景色の変化を楽しんでいた。やがて、氷が現れ始めて目的地が近い事を感じる。


「着いたわ」


クレーター状のへこみに氷山と水が確認できた。


「『凍結湖』が融けている……」


 俺が皆に訊ねると。


「この湖は夏でも融けないはずなのよ」


 リアの言葉を聞きながらクレーターの中央に向かう。神殿の様な建物が現れて入口の近くに降りる事にした。周りが氷に包まれているから気候変動などでは理由にならない。『雪の聖女』三姉妹と共に氷の神殿の中に入るのであった。


 氷の神殿に入るとマヤとサナの姿が消えていた。


「これは『雪の聖女』の試練です。三人の聖女が地界、空界、地上界の三つの世界の試練をクリアしないといけません」


 俺が辺りを見回すと平坦なフロワーが広がっていた。ここは地上界らしい。


「義元、あなたも冬目神社の者ならその目で真実を見なさい」


 リアの言葉を受けて俺も、リアの試練を見る事にした。とにかく前に進まねば。それから、ひたすら前に進むが何も見えてこない。そう、空間が歪んでいるのだ。

階段も壁も無い、氷柱だけがある試練だ。リアは所々にある氷柱に祈りを捧げていた。


「リア……その祈りは報われるのか?」

「分からない……階段も壁も無い世界で、この氷柱だけがわたしがわたしである証拠です」


 さらに進むと氷像が現れる。俺は本能的に危険を察知して背中にある弓道部の弓を取り出す。


「ここは俺に任せろ」


 氷像の巨体が動く瞬間に矢で貫くと氷像は崩れ落ちる。


「かなり危険な試練のようね」


 リアは息を呑む。うん?リアが祈りを込めた氷柱が光りだして崩れた氷像の下に階段が現れる。


「地上界をクリアしたようね」


 階段を降りるとマヤとサナが待っていた。地界のサナはひたすら階段を降りる試練で、空界のマヤはひたすら上がる試練だったらしい。危ない氷像が居たのは地上界の俺達だけらしい。


 ふう~


 俺は思いっ切り息を吐き役に立てたと思うのであった。


「さ、この奥に姫様がいるはずです」


 この氷の神殿は聖域である。三人の『雪の聖女』と同じ力を持つ姫様しか入れないとの事からである。





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