第5話 恋愛のある日常

 リアが図書室で本を読んでいる。暑いので涼んでいるとのこと。


 氷の天界の『雪の聖女』だから暑いのは苦手らしい。リアの白い肌は『雪の聖女』にピッタリだ。俺は何も考えずにリアの近くに座ると、リアが近づいてくる。


「わたしは孤独だ、許されるなら、わたしの側にいてくれ」


 理由を聞くと怖い夢を見たそうな。暗い深海の様な場所で独りになる夢らしい。

リアが隣に座ると息づかいを感じる。このまま、キスでもするのかと言う気分になる。


 ここで、冷静さを失っては困る。俺は本棚に向かい、何かないかと本を探す。地球の図鑑を見つけて開いてみる。高校の図書室には幼稚かもしれないが面白そうだ。


 席に戻り図鑑を開いていると、リアも文庫本を読みだす。


 やはり、吐息が近い。そんな事を考えていると時間は簡単に過ぎて行く。


「リア、帰るか?」

「義元はこの時間が嫌いか?」

「違う、帰って、夕食を作らないと……」

「そうか……」


 俺達が席を立つと図書委員の女子生徒が「デートなら他でしてくれる」と言ってくる。


 やはり、距離が近すぎたようだ。俺はリアと少し離れて歩く。しかし、自然と距離は小さくなる。これがしあわせと言う気持ちなのかもしれない。


 俺は学校の帰りにスーパーに寄っていた。リアに先に帰るように言っても付いてきたのである。


「うぎゅ~」


 リアはポッキーを見つめて謎の唸り声をあげる。


「むぎゅ~」


 簡単に言えば欲しいらしい。


「一つ買うか?」

「おぉ」


 俺はかごにポッキーを入れると、リアは嬉しそうにするのであった。子供の様に素直なリアは普段は見せない姿である。買い物を終えてスーパーから出るとポッキーを取り出すと。リアは駐輪場までの間でポリポリと食べ始めるのであった。


 しかし、ポッキーとはまたいやらしい物が好みだなと妄想する。


 そう妄想である。淡い色の口もとにポッキーが運ばれる姿は……。


 それから自転車に乗り家に着くと、残りのポッキーを再び食べ始める。マヤが近づいてきて。


「義元、ポッキーゲームしない?」


 アホか!何故、猫とポッキーゲームをするのだ。俺が不機嫌になると。


「はい、はい、本命はリアですよ」


 そう言う問題ではない!しかも、本命とかナイーブな言葉を使いよって。


「マヤの言う事です、ポッキーでも一本食べて下さい」


 リアの右手がポッキーを片手に口もとに近づいてくる。


 上半身は固まり、思考のブレーカーが落ちた気分だ。そして、口だけがポリポリとポッキーを食べる。


「まーあ、いやらしい」


 マヤが変な目で見ている。


「マヤ、ポッキーですよ」

 

 リアの反論に、俺はただのポッキーだと改めて思うのであった。


 しかし、ポッキーとは実に微妙な食べ物だと思うのであった。

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