第15話 勇者、神の神殿を参拝する

 日没寸前に街にたどり着き、アルフレッドたちはホッとした。

「やれやれ、助かった。明日は安息日だし、ゆっくりできるな」

 勇者パーティの面々もいいかげん野宿に慣れて来たけど、できることならやっぱり街の宿に泊まりたい。

 魔物や野獣の襲撃に怯えながら、防塵衣マント兼用の毛布にくるまって固い地面に寝る毎日。そんな生活、身体に良いわけがない。

 それに比べればたとえ田舎宿のわらのベッドでも、クッションがきいているだけで天上の寝心地だと言える。寝込みを襲ってくるのは強盗か痴漢ニンゲンしかいないし。

 今日は本当に一週間ぶりの街泊まりなだけに、皆が肩の荷が下りたような明るい顔をしている。アルフレッドもさっさと休みたいので、あてがわれた部屋にさっそく引きこもろうとした……ら、姫に待ったをかけられた。


「ちょっと、アルフレッド」

「俺ッ!? え、なんで⁉」

 どう考えても嫌な予感しかしないので引きつった返事をしたら、姫はその答え方がお気に召さなかったようだ。かなり不機嫌な顔で目を細める。

「……私が呼び止めただけで、なんでそんなに怯えるのかしら?」

「いや、まあ、なんというか……」

 今から休みに入ろうとした瞬間、上司に呼び止められる恐怖……生まれついての王族には、そんな下っ端の気持ちはたぶん一生分かるまい。


 ジトッとした目でしばらくアルフレッドを睨んでいたミリア姫は、そこは深く突っ込む気が無いのか本題に話を戻した。

「アルフレッド。一応念を押しておくけど、明日は安息日よね?」

「え? もちろんそうですが?」

 聖女ミリアが何を言いたいのか分からず、アルフレッドはとりあえず頷いた。

 勇者はその一日だけを楽しみに生きているのだ。絶対忘れるはずがない。

「安息日って、なんだか分かってる?」

「は? そりゃあ……」

 一瞬本気で“ニッポンへ行ける日”と言いかけ、慌ててアルフレッドは真面目な顔を取り繕って言い直す。

「神の恩寵おんちょうに感謝を捧げながら、心静かに過ごす日です」

「よろしい」

「?」

 神殿へ連れて行ってもらえるような年ごろの子供なら、誰でも答えられる質問だ。それをもう成年のアルフレッドが答えただけで、ミリアは重々しく頷いた。

 余計になんだか分からない。

「それが、なにか?」

「なにか? あなた、自覚がないようだから言っておくけど」

 アルフレッドのひたいに指を当てたミリアが……思いっきりぐりぐり指先を突き刺してくる。けっこう痛い。

「その! 神様に! 感謝して! おとなしく! すべき日に! あなたまさかまた抜け出して、へべれけになるまで飲み歩いたりしないでしょうね⁉」

「あ、あ~…………ははは」

「笑い事じゃないのよ⁉ 何回もやらかしてるじゃない! 小さい町に泊まった時でさえ! あなたどこでお酒の匂いを嗅ぎつけて来るのよ⁉ いい!? 一切飲むなと言わないけど! 神様に一心に祈るべき日に、勇者が不道徳極まりないマネをしないでよね!」

 姫の釘刺しに、他のメンバーも口々に同意する。

「こいつ毎回飯にも出て来ずに部屋に立てこもっているわりに、なんか隠れて大量に飲んだ形跡があるんだよな」

「確かに。神託の勇者が神聖なる安息日に何をやっているのだ……」

「初めての街でも、いったいどこから泥酔するほどの酒を買い込んでるのよ」

 言いたい放題言って、揃ってジト目で見て来る女性陣。


 マズい。


「大丈夫、分かってる! ちゃんと一日神に感謝を捧げておとなしくしてるから!」

「本当に?」

「もちろんだ! 信用しろ!」

 この問題、これ以上ツッコまれてはいけない。

(マズい、ニッポン行きを知られるわけにはいかん!)

 監視の為に誰かが一日付いているとか言われる前に、逃げ切らねば!


 アルフレッドは疑惑の視線を向けて来る仲間たちに早口で約束して、返事も聞かずに急いで部屋に閉じこもった。


   ◆


 一晩寝てからニッポンへ移動したアルフレッドは、街を歩きながらため息をついた。

「あー、参ったな……しばらくは酔いを残さずに帰るようにしないとな」

 そもそも自分の世界で一晩寝るタイミングで帰るようにしているのだけど、ニッポンでの自由が名残惜しくてギリギリの時間まで飲んでしまうことが時々ある。それがまたハッピーアワーヒャッハータイムの楽しさでもあるのだけど……まあ、つまり自業自得なのだが。

「あんなこと言わなくても……俺だって、神様には深く感謝しているのにな」

 なにしろ、ニッポンというステキな世界に週一送り込んでくれるのだ。パーティのメンバーの誰よりも、アルフレッドは感謝していると言っても良い。


 なにか彼女たちの目に見える形で、信心深いところを見せないとならないかも。


「やれやれ、面倒なことになったな……」

 どうしたらいいか途方に暮れて、アルフレッドはため息をまたついた。




 そんな憂鬱な気分を引きずったままアルフレッドが広場駅前を歩いていると、道端に大型の箱馬車バスが扉を開いたまま停まっていた。

「おっ、馬無し馬車自動車だ」


 アルフレッドは異世界ニッポンへ何度も遊びに来ていて、この乗り物がずっと気になっている。

「見ていると、凄い速く走っていくんだよな」

 大きいのも小さいのもあるが、どれも馬を全速力で走らせるくらいに速い。どんな動物が中でいているのか知らないが、あんな速さで走らせてすぐに疲弊しないのだろうか?


 まあ馬車の構造はアルフレッドの知った事ではないが、面白そうなので出来れば一度乗ってみたい。

「特にこの大人数で乗ってるやつ、乗合馬車っぽいからシステムが分かれば乗れそうなんだけどなあ」

 でも乗り方が分からない。


 これの乗り方を知っているニッポン人を羨ましく思いながら、そのまま通り過ぎようとしたアルフレッドは……正面のガラスに書いてある文字を見て、思わずそのまま動きを止めた。

「……ビール、園!?」


 ビール園行き。


 箱馬車の正面には、確かにそう書いてある。

「ビールの園ってなんだ⁉ ビールを称える庭園!? いや、そんなまさか……待てよ? そもそもこのビールって、俺の考えるビール麦酒の事なのか⁉ 同じ名前の別の物を指してるって事も……それならそれで、そのビールなる者の正体が気になる!」

 ビールに対する興味に関しては、アルフレッドはニッポン人の誰にも負けない自負がある。思いがけないところで思いがけない文字を見て、飲みクズ勇者は激しく混乱した。


 これは自分だけでは、答えの出ない問題だ。


「この問題、知らずに素通りはできないぞ」

 どうしても答えを知りたい。今を逃したら、答えを得る機会は二度とないだろう。

 ちなみにこんなマジメさ、勇者は魔王討伐で発揮したことがない。


 大いに悩んだアルフレッドは、意を決して中にいるニッポン人に声をかけてみることにした。

「あのう……」

「はい、見学希望の方ですか?」

「その、たまたま見かけて気になったのだが……」

「次の便はまだ空席がございますよ。間もなく発車です。お乗りになりますか?」

「乗って良いのか!?」

 アルフレッドは馬車バスの人間の言葉に驚いた。

 “ビール園”がどんなものかを聞きたかっただけなのに、この不思議な乗り物で連れて行ってくれるという。 

「あ、あの……料金は?」

 財布が厳しい勇者にとって、そこ大事。

「もちろん無料ですよ。わが社のビールを皆様に知っていただくため、広報の一環でお招きしておりますので」

「なんと!」

 具体的にどういうことだか分からないが、どうやら“ビール”の布教の為にビール園とかいう施設をタダで見せているらしい。


 ……無料タダ

 何かをしてくれるのにタダで良いと言われると、なんだか怪しい気がしてくる。


(俺の知ってるビールとは別物で、なんかヤバい団体じゃないだろうな?)

 そんな考えが一瞬頭をかすめたけれど……。

「いや、後学のためだ! チャンスを逃してどうする!」

 結局、アルフレッドは勧められるままに怪しい“ビール園”なるものの送迎車に乗ってみた。


 だって、馬無車バスに乗ってみたかったんだもの。


 もっともアルフレッドも、何の考えも無しに乗ったわけじゃない。

(まあ怪しい団体だったとしても、ヤバかったら神に祈って自分の世界に逃げ帰ってしまえば大丈夫! 来週来た時は近寄らないようにすればいいんだし)

 それでいいのか勇者。


 好奇心を押さえきれなかった、異世界の勇者を乗せて。

 ビール園の無料送迎バスは、定刻通りに駅前を出発して行った。


   ◆


「……やっぱり、ビールか!」

 馬無車にしばらく揺られ、たどり着いたその場所は……“ビール園”は、やはり麦酒ビールの園だった。

「この壁に燦然さんぜんと輝く紋章エンブレム! 間違いなくジョッキに書いてあるあの紋章ロゴマークだ」

 それだけは絶対に見間違いはしない。

 居酒屋で。スーパーで。コンビニで見慣れた、このマーク。

「しかし、ビールと庭園? が結びつかないな」

 そんな疑問が浮かぶものの……他の客と一緒にぞろぞろ歩きながら壁のパネルを眺めているうちに、アルフレッドはこのビールのロゴを掲示した施設が何かを理解した。

「こ、ここは……あのビールを作っている工房なのか!」


 確かにビールをつくる現場を、いつかは見てみたいと思っていた。

 だがまさか、そんな夢にも見れぬイベントが本当に起こるとは!


 自分の身に起きた衝撃の出来事に、アルフレッドは思わずうろたえてしまう。

「なんということだ……」

 頬を流れる汗を手首で拭い、周囲のギルド員従業員たちの様子をこっそり見回す。今のところ、アルフレッドを疑っている様子はない。

「……まさか、ニッポンこの異世界でもの実態を見ることができるとは……いかん。俺が他の銘柄ともよしみを通じただという事がバレたら、生きて帰れないかもしれん!」

 工房の秘密特許を盗もうとした者は殺されても文句は言えない。これはアルフレッドの世界なら、どの技術者ギルドでも鉄の掟だ。

 アルフレッドが、ビールならどこのブランドでも構わず飲んでしまうような節操無しとバレたら……良くて袋叩き、最悪なら広場に繋がれて投石刑リンチで死刑になるかも知れない!

「慎重に、慎重に! うまくやれアルフレッド。ぼろを出さないようにな……」

 無理なことを言っている異世界の勇者は、逆に挙動不審になっていた。



 

 なんとか裏切り者二股野郎だとバレずに集合場所まで潜り込んだアルフレッドは、講堂らしいところで『ビールができるまで』の過程を映画で見せられた。

(なるほど、基本はウラガンのエールづくりと変わらないのだな)

 やはりエールとビールは近い親戚であった。

 でも故郷異世界のエールは、出来上がりの飲み口がビールほどさわやかではない。

 見た目もあんな透き通った金色ではなく、赤茶けて軽く濁った色をしている。

「途中の製法にどこか違いがあるのかな。原料は同じ麦だろ? おそらく何か、別の段階を踏んでいるからああなるんだと思うけど……」

 難しい顔で考え込んだ男爵家の跡取り息子(一応)は、しばらく沈思黙考して顔を上げた。

「良く考えたら俺、エールの作り方もちゃんと知らないわ」

 研究するだけ無駄である。


   ◆


 ラーメンを食べて食後の一休みをしたくらいの時間で上映時間は終わり、映画を見る為に暗くなっていた部屋の明るさが元に戻った。

 スクリーンの横に待機していた係員が、笑顔で開いた扉を指し示す。

「それでは皆様、実際に醸造工程のほうを簡単に見て廻りたいと思います」

 何をやっているかの説明だけじゃなく、実地の見学もあるらしい。

「なんと!? 本当に作っている現場を見せてくれるのか!」

 ニッポンに何度も来て、街で見られるものは色々見たつもりだったけど……工場見学特別な場所は初めてだ。

「ウラガンではよっぽど親しくなければ、工房の中なんか見せてくれないからな……これは凄い貴重な体験だぞ!?」

 あちらでは領主の息子末端貴族だから、鍛冶屋やエール醸造所も見せてもらったことはあるけれど。ただの旅行者の身分でしかないニッポンで、大事な製造現場を見せてもらえるとは……。

 皆に続いて立ち上がりながら、思わず悪い顔になるアルフレッド。

「ククク……これでノウハウ企業秘密を盗み取れば、俺の世界でもビールを作ることが……そうなったら、いつでも飲めるようになるぞ!」




 ────なんて思った時が、アルフレッドにもありました。


   ◆


 講堂のあった建物から回廊に出て、青い空と芝生の広がる綺麗な庭を見ながらぞろぞろ歩く。

 景色を見ていて気がついたが、どうやら一行は行く先にある大きな建物に向かっているらしい。

「あれは……ウラガン王都の大聖堂よりデカいかもな。なんだろう?」

 横幅でいったら映画を見る街中の建物ショッピングセンターより狭いが、高さは遜色ないぐらいある。こちらは周りがひらけている分、余計に空高くそびえているように見える。

(本当に大聖堂みたいな建物だな)

 そんなことを思いながら歩いて行った、三分後。


「こ、これは……」

 内部の見学スペースに到着し、ガラスの窓越しに広がる光景を眺めたアルフレッドは言葉を失った。


 このものすごく背が高い建物、一階建てだった。

 一階建てというか、建物のほとんどのスペースが一部屋に見える。

 実際にはいくつかの工程に分かれているのだけど、初見のアルフレッドにはそう思えた。


 吹き抜けのとんでもなく天井が高い空間に鎮座する巨大な円筒形のタンク。

 それがいくつも並び、きれいに整頓された空間を歩き回る人間がはるかに小さく見える。

「これ、まさかビールの醸造槽か……?」

 疑問形で言いつつも、アルフレッド自身直感で分かっていた。

 ニッポンで日々飲まれているビールの量から考えて、これぐらいの大きさは必要だろうと。

「それにしたって、俺のところの醸造所と違い過ぎるぞ」

 アルフレッドの知っているエールの醸造所は、もっとこじんまりしていて農家の裏に立っていたりする。

 醸造小屋の中も色々散らかっている中に、はるかに小さい醸造桶がいくつか置いてあっただけだ。従業員だって薄汚れた作業着だけど、ここの従業員は全く汚れの見えない全身一体の特殊な服ツナギを着ている。


 製造環境の違いに開いた口が塞がらない勇者の横で、一緒に見学しているおっさんが手を上げた。

「このタンクで、全国のビールを作っとるんですかね?」

「いえ」

 案内係のお姉さんは、にっこり笑って質問を否定する。


「今見ていただいているのは地域限定商品の醸造用でして、通常製品の仕込釜はこんなに小さくありません」

  

(こんなに!?)

 驚いているアルフレッドを置き去りに説明はさらに続いていく。

「こちらのパネルにもありますが、仕込んだ麦汁はこのような発酵槽で……」

 示された絵を見るとこの建物が描かれて……よく見ているうちに、アルフレッドは気がついてしまった。


 たぶん、アルフレッドたちが今いるのは背が低い部分だ。

 そして背が高いところはたくさんの円筒形でできていて……。

「あの、まさか……建物のこの部分て……」

「あ、はい。そこが発酵中のビールを保管している場所になります」


 え? 待って? ウラガン王都の大聖堂よりデカいタンクに、目いっぱいビールが詰まっているの?


 思考停止しているアルフレッドの耳に、案内係の声が響いた。


「我が社では全国の工場でビールを生産しており……」


「……この規模の工場がまだあるのか……?」

 もう一回ぐるっと生産設備を見回したアルフレッドは、一つの結論に達した。


 ────うん。こんなの、どうやったって真似できんわ。


   ◆


 ニッポンとウラガンのあまりの違いに、呆然としたアルフレッドだったが。

 最後に案内された部屋では、多数の係員とカゴ盛りのお菓子乾き物が待っていた。


 一行を連れ回した案内係が笑顔でカウンターを指し示した。

「それでは皆様、本日は見学ツアーお疲れ様でした。最後にこちらで当社製品のご案内を聴きながら、それぞれの味わいをお楽しみください」


 味わいを、──。


 ハッとしてよく見れば、見学客たちはわらわらと透明な軽いプラカップを受け取ってカウンターに群がって行く。そこでは並んだ係員が愛想よくカップに黄金色の液体を……。

「いかん! 出遅れる!?」

 アルフレッドも慌ててその列に加わる。


 作る方は、アルフレッドごときではどうしようもない。

 だが、飲む方ならばニッポン人にも……。

「負けてたまるか!」


 俺はハッピーアワーに十五杯を飲んだ男、勇者アルフレッドだぞ!


 先を争うように突き出したカップに入れられたビールを、アルフレッドは光にかざしてみた。


 受け取った大ぶりなカップになみなみ入った、輝く金色の美酒。

 きれいに雲のような泡の王冠もかぶったその姿は、実に神々しい。


 口をつけようとして、そのほれぼれする姿をうっとり眺めていた勇者は脳裏で……今日見たバラバラの情報が、不意にかちりとはまり込むのを感じた。


 勇者が来るのを待っていたかのような無料の馬無車送迎バス

 整備された庭園にそびえたつ巨大な醸造所。

 丁寧に磨き上げられたかのような製造環境に、丁寧な応対。

 そしてこの美味くて美しすぎるビール……。


「そうか」

 理解したアルフレッドの背筋が、感動に打ち震える。

「それで神はニッポンへ来れるようにしてくれたんだな」

 神託の勇者は悟った。


「ニッポンこそが神の本当に治める世界。そしてこのビール殿こそが、神の住まわれる神殿なのか! そこで作られるビールが素晴らしく、そしてニッポン中に配らねばならないのを考えると……ニッポンのビールは、実は神界の酒ネクターなのかも!? うむ、そう考えればニッポンのビールの異常なまでの美しさと味わいにも納得がいく! 俺は、本当に神がおわす聖地にもうでたんだ!」


 違う。


   ◆


 安息日の翌朝。

 いつもなら眠そうに来るアルフレッドが普通に起きて来たので、先に食卓に着いていたエルザがからかうように声をかけた。

「今日はまともに起きて来たじゃない、アル。昨日はちゃんと神様の前でおとなしくしていたみたいね」

「ああ。貴重な体験だった」

「……ん?」

 なんだか勇者の受け答えがおかしい。


 座ったアルフレッドを皆が見やると、なぜか勇者は夢見るように微笑んで遠くを見つめている。

「神のご加護は本当にありがたい。常日頃ニッポン滞在御恩一万円も感謝してもし足りないが、神の世界工場見学をわずかでも垣間見て……その偉大さ巨大工場に心を打たれたよ」

「え、ちょ……アル?」

「俺は決めたぞ。魔王討伐の暁には、我がウラガン王国にも神を称える大神殿ニッポンのビール工場を建てるんだと! この大願、きっと成就して見せる!」

 アルフレッドの意志は、神への感謝なのかビールへの欲求なのか……それはおそらく本人も分からない。


 キラキラした瞳で神の愛を語る勇者……を遠巻きに。

(いったいどうしたんだ、アルフレッドのヤツは!?)

(なんでだらしないか狂信的かの二択しかないのよ……)

(どうして両極端なことしかできないのかしら、このバカ)

(いつもバカだバカだと思っていたが、今日のは思いっきり気持ち悪いな)

 女性陣はヒソヒソ声でぼやき合い、どうしたものかと頭を悩ませた。

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