OL、帝都へ

パシリュー子爵が大聖堂の正面に騎乗した私兵を配置し終えたのと、ミヤビが表に出てきたのはほぼ同時であった。


「貴様が貴族殺しの女か! 自ら捕まりに来るとは良い心がけだな」

「はぁ? なんであんたみたいな三下に捕まらないといけないのよ。たったそれだけの兵で私を捕まえられるとでも思ってるの?」


「貴様っ! たかが平民如きが貴族に向かって何たる口のききようかっ! おとなしく捕まれば命までは奪わないつもりであったが、ここで八つ裂きにしてくれるわっ!」

「ここに集まってる兵隊も逃げるつもりはないようね」


「愚かな、我が兵がたかが女ひとり相手に逃亡するなどあり得ぬわ!」

「じゃあ、さっさとかたずけちゃおうか」


(塵と化しなさい!)

ミヤビが腕を振ると、目の前にいたパシリュー子爵に向かい魔法が発動する。発動したのは、分子レベルで結合が崩壊しあらゆる物質が塵と化していく。


パシリュー子爵の乗っていた馬がまず最初の犠牲となる。ミヤビの魔法に触れた箇所から血すら流すことなく崩れ落ち塵となりかき消えていく。馬が崩れ落ちるのとパシリュー子爵も魔法に触れ塵となっていくのは、ほぼ同じタイミングであった。手綱を持つ腕が消えていくのを見て恐怖のあまり悲鳴を上げようとするが、その前に発声器官も消え落ちていく。


そしてパシリュー子爵だけでなく、その背後に整列していた私兵達も子爵と同じ運命をたどるのであった。何が起きたかわからない最前列の者たちは、子爵の姿が掻き消えるのに驚いている間に同じ運命をたどる。そしたその背後に居た者たちも馬が恐怖に怯え、立ち竦んでしまい逃げることも出来ずにその姿を塵に変えていった。



(上手くいったわね、退屈しのぎに考えてた魔法だけど大成功だわ)

これはさっきまで部屋で退屈しているときに思いついた魔法であった。これまでの経験上燃やせば臭いがひどいし、凍らせ砕いても結局時間が立てば溶け始め後かたずけが大変になることから、後かたずけの必要のない方法を考えていたのだ。


学生時代に習ったことがこんなところで役に立つとは、勉強はしておくものだなと、場違いな感想を思うミヤビに、司教が声をかける。



「せ、聖女様…。今の奇跡も聖女様がなされたのでしょうか…」

あまりにも現実離れした事象に司教は驚きつつ、ミヤビに問いかける。


「ええ、これなら後片付けが楽でしょ?」

「は、はい、それはそうなのですが…。あの者たちは一体どうなったのでしょう?」


「ああいう馬鹿な連中は跡形も残らないように消し去ったのよ」

「おお…、まさに神の奇跡、聖女様に感謝を…」


「そんな大したことはしてないわよ、大げさよね」

「いえ、このような事、まさに神罰が下ったといえましょうぞ」


「まあいいわ。それで馬鹿な連中はいなくなったけど、これからどうするの?」

「歓待の宴も途中ですが、聖女様もお疲れと思いますので、本日はこのままお休み頂ければと」


(確かに、戻ってあの食事を食べるのは嫌だよね…)

「ありがとう、折角だからそうさせてもらうわ。 それと軽く何か食べるものを部屋に持ってきてくれると嬉しいわ」

「畏まりました。先ほどのようなものでは無く、もう少し豪勢なものを運ばせます」



そうしてミヤビは与えられた部屋に戻り風呂に入ると、その間に用意されていた食事、肉とスープとパンにワインがひと瓶付いたものであった、を堪能しぐっすりと眠るのであった。



翌朝、出立の準備を終えたミヤビは司教に挨拶するために部屋をでる。廊下で出会った教徒に司教の所に案内してもらうと、礼を言って司教の部屋を訪ねる。


「おはよう、おかげでぐっすり眠れたわ、ありがとうね」

「とんでもない、聖女様にお泊り頂け我々としても晴れがましい思いです」


「ふふ、また聖女様に戻ったわね」

「ああ、失礼いたしましたミヤビ様」


「まあいいわ、それじゃあ私はこれで行くわね」

「誠に残念ではありますが、これ以上お引止めするのも心苦しいですからな。旅のご無事をお祈りさせて頂きます」




ミヤビが思った以上にあっさりと送り出してくれた司教、ミヤビにとって非常に好感の持てる対応であった。何となく弾む気分でカークブルの街を出るとグリフィスを呼び出す。


金色の光に包まれ、グリフィスが姿を現すとその頭を軽くたたく。

「昨日はいつの間にか消えてたわよね」

『あ、主…、我がいると、その、主に迷惑がかかるのではないかと、その、考えてだな…』


「ふふ、もういいわ。それより帝都に向かうわよ」

『すまない、主。では帝都に向かおう』


再びミヤビはグリフィスに乗り帝都に向かう。自身にかけられた賞金を撤回させ、のんびりと自由気ままに暮らすために…。



~~~~~~~~~~

いったん、ミヤビの活躍はここまで。

次回からもう一人の召喚者の話が始まります。


これまでとは少し趣が変わるかもしれませんが、引き続きお楽しみいただければ幸いです。


最期に現時点でのミヤビのステータスです。

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 クレイシ ミヤビ

 転移者

 人間


 職業:勇者


 LV:144 → 223

 HP:1549000 → 4673200

 MP:3189000 → 9477100


 体力:217800 →  637400

 知力:346200 →  1039700

 精神力:284600 → 820600

 耐久力:248900 → 783400

 俊敏性:295000 → 913000

 幸運:100


 スキル:

 言語理解

 剣術LV10

 槍術LV7

 魔力操作LV10

 全属性魔法LV10

 肉体強化LV9 → LV10

 気配察知LV10

 隠蔽LV10

 毒耐性LV10

 精神耐性LV10

 空間操作LV10

 鑑定:LV10

 無詠唱


 女神の加護

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