OL、成長から目を逸らす…
ステファンと話した翌日、ぐっすり眠り気持ちのいい目覚めで朝を迎えたミヤビは、朝風呂を済ませて部屋でくつろいでいた。
(確か今日ドラゴンのお肉が手に入るのよね、でも連日だと値打ちがないかな?
うーんここは悩みどころねぇ…)
と、平和な悩みで頭を悩ませてもいた。
(あっ、そういえばステータス確認するのを忘れてたわね、ダンジョンで大分上がったから自分の状態はわかっておいた方がいいよね)
「ステータス」
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クレイシ ミヤビ
転移者
人間
職業:勇者
LV:2 → 68
HP:3000 → 763000
MP:5000 → 1430000
体力:400 → 98400
知力:750 → 167200
精神力:620 → 138900
耐久力:500 → 114000
俊敏性:620 → 147800
幸運:100
スキル:
言語理解
剣術LV8 → LV9
槍術LV7
魔力操作LV10
全属性魔法LV10
肉体強化LV9
気配察知LV10
隠蔽LV10
毒耐性LV10
精神耐性LV10
空間操作LV9 → LV10
鑑定:LV10
無詠唱
女神の加護
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100階層のダンジョンを中盤以降ほぼ単独で攻略したため、レベルがとんでもない勢いで上がっていた。
そしてそれに伴いステータスのパラメータも、大変なことになっていたのだ。
(あー…、もはや人外ね…、見なかったことにしておこうか…)
すでに最強種であるエンシェントドラゴンですら瞬殺できるのだ、まともなステータスなど期待していなかったが、それでも想像をはるかに超える値だった。
(わたしって何を目指してるんだろう?たぶん国相手でも一人で楽勝な気がしてきた…)
(とりあえずドラゴンのお肉を取りに行こうかな?こんな時は美味しいもの食べて気分転換がいちばんよね?)
そしてミヤビは自身が手配されていることなど想像もせず、冒険者ギルドに向かうのだった。
冒険者ギルドの扉をミヤビがくぐると、それまで騒がしかったのが嘘のように静寂に包まれる。
(姐さん、普通にやって来たぞ?)
(まだあの張り紙を見てないのかもな?)
(ひとまず安心てことでいいよな?)
いつも通りのひそひそ話が交わされるが、ミヤビはそんな事よりもドラゴンの肉と訓練場に足を向ける。
訓練場には半分ほど解体されたドラゴンが、今なおその威容を誇っていた。
「よう嬢ちゃん、早速来たな。こっちは総がかりで徹夜したんだがまだ半分ってとこだな」
「ご苦労様、ありがとね。それでお肉はどうなったの?」
「ふふふ、これだけのドラゴンを前にして肉の話とはな。普通は皮やら鱗やらの素材に気が向くんだがなぁ」
「べつにそんなの食べれないしどうだっていでしょ?」
「いやいや食べるんじゃなくて素材にして武器や防具をあつらえるのさ。
とくにこれだけのドラゴンだ、とんでもない効果の付いた装備になるぞ」
「ふうん、装備ってそんなに大事なの?」
「おいおい嬢ちゃんよ、冒険者は体が資本だぞ。その身体を守る防具は誰もケチったりせずに最高のものを求めるもんだ。
武器にしても同じようなもんだな」
「じゃあ、私ももってたほうがいいのかな?」
「そりゃ当たり前だろ、いくら嬢ちゃんが強くても不意打ちなんかで怪我する事もあるかもしれん。
そういったことから身を守るためにもいい装備はあった方がいいぞ」
「じゃあ、そこから一番いいところを使って私専用のを作ってもらえる?
費用は残りの素材で足りる?」
「エンシェントドラゴンの最高部位からの装備とは剛毅だな。
もちろん他の素材がもらえるなら足りないどころか十分すぎるお釣りが出るぞ」
「じゃあ、お肉とその装備を頂くことにするわ。余ったら私の口座に振り込んどいてくれる?」
「了解した。こんな素材で装備が作れるなんて連中気合が入るだろうよ。
装備の方はさすがに今日明日ってもんじゃないから完成したら連絡するよ。
それとお待ちかねの肉だが、そっちにあるのが最高級とされる部位だ。
その横に高級なとこから順に並べておいてあるから持っていきな。
まだ半分残ってるが、こっちは少し落ちる部位になる。良いところを優先的にばらしたからしかたがねえな。
こっちもいるなら明日…はちょっと厳しいか、明後日以降取りに来い」
「ありがとうね!最高級なんてどんな味なんだろう?楽しみだわ」
「よかったら少しだけ分けてもらえないか?
それで解体費用はチャラにしてやるから、どうだ?」
「いいわよ、こんな何十キロもあるんだから何キロかおすそ分けするわ」
「よっしゃぁ!これでやる気が漲ってきたな。
こんな高級肉、この機会を逃したら死ぬまで目にすることがないだろうからな」
「ふふふ、ギルマスも好きなのねぇ」
「おっと、忘れるところだった。嬢ちゃん、あんた手配されてるみたいだぞ。
受付の誰かに声をかけて詳細を聞いておいた方がいい。
なんか面倒な臭いがプンプンするから気を付けるんだな」
「何だろう?ありがとう確認しておくわ」
ミヤビは並べられてドラゴンの肉を次々に収納していくと、手配の情報をもらいに受付に戻って行った。
「まあ、嬢ちゃん相手に何かできる奴なんざいねえだろうけどな…」
「ねえ?私の手配がどうとかって情報を教えてくれる?」
受付につくなりミヤビは手近に居た受付嬢に声をかける。
「あっ、ミヤビ様ですね。今朝張り出されたのですが、おそらくミヤビ様のことだと思われる内容がかかれています」
そういって受付嬢はミヤビに張り紙の内容をまとめたものを手渡す。
「なんで私が不届き者扱いなの?手を出してきた馬鹿が悪いんじゃない!」
ミヤビは受け取った内容に目を通すと、受付嬢に怒鳴り散らす。
「す、すみません!で、でも私が書いたものでは…」
ミヤビの剣幕に受付嬢がたじろぐのを見て、ミヤビも冷静に戻る。
「あ、ごめんね。お姉さんが悪いわけないのにね。
で、ギルドはこれで何か私にするの?」
「いえ、ギルドは中立をうたっていますのでこのような問題には基本的に介入しません。
ただ冒険者が独自で動くのは別ですので、その様な動きがあってもギルドが止めることはありませんが」
「じゃあ、この手配はここに書いてる領主の一族?みたいなやつがやった事で、ギルドは無関係ってことでいい?」
「はい、その認識であっています」
「で、ここにいる冒険者が勝手に私を狙ったとしてもギルドは止めたりはしないと」
「はい、そのとおりです。その場合は冒険者同士の私闘扱い、ミヤビ様は冒険者ではありませんので一方的に冒険者側の罪になります。
ですのでその規則にのっとった処置を取るだけです」
「ああ、こないだ絡まれたのと同じってことね。じゃあ向ってくる冒険者が居たら好きにしてもいいんだよね」
「ええ、追い払うもよし、殺してしまうのも問題ございません」
「ほんっと、冒険者の命って軽いよね」
「その分、力さえあればいい暮らしができるのも間違いありませんから。
この世界に入ることを選択した自己責任ですわ」
「なるほどね、わかり易くてそういうの好きだわ」
そして何気なく周りを見渡したミヤビから慌てて視線を逸らす冒険者たち。
「なんか、力の無さそうなのばっかりね。いい暮らしまでの道のりが長そうだわ」
「ふふ、そういった自身の成長も冒険者の醍醐味なのではないでしょうか?」
「物はいいようって訳ね。お姉さんも結構腹黒いよね」
「あら、これぐらいでないと受付業務はできませんから」
女性二人の会話に耳をそばだてていた冒険者たちは、ひとまず危機が去ったことを喜べばいいのか、
ミヤビの相手にすらならないことを嘆けばいいのか、頭を悩ますのだった。
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