想い通じて
「恐れながら、もう、シュウシュウ様はお亡くなりなったことになってるはずでは…」
砂瑠璃が言う。侍女達は驚きつつ、皆声も出せないでいた。一体彼女は何者なのかと。
多英は周りのものに「下がりなさい!!」っと小さな体に似合わない、大きな声で叫んだ。
ぴょんとびっくりした周りのものは飛び上がり、頭を下げ、皆は下がったものの、展開が気になりそこまで遠くに離れずにいた。
砂瑠璃、シュウシュウ、多英は屋敷の広い廊下にて、シュウシュウはずっと泣いて砂瑠璃は顔を床に伏せたまま。多英は怒りで今にも爆発しそうだった。
「お前のようなものに、何がわかる! シュウ様はこの国の王女となられるのですよ」
シュウシュウはばっと顔をあげた。
「多英!何を…おかしなことを!」
「シュウシュウ様は黙っていてください!多英に任せていればいいのです、あなた様の運命は…」
「運命は!私の運命はこの方です!」
泣きながらシュウシュウが言う。
「それは感情です、あなたは若いから何も分かっておられない」
「若い?若い?もう嫁ぐには遅すぎて、私のような者は誰も…多英。でも、わたくしは、砂瑠璃殿と結ばれるのなら、いいえ、もう、結ばれないのなら生きていても仕方ないのです。義務を果たしてきました、果たしてきました。でも一度死んだ身。我がままを言っては駄目とわかっております、砂瑠璃殿も本当はわたしを望んでないとも思います、ですが、ですが」
「…私は、シュウシュウ様の立場を思って、こんな申し出はしてはならないと思っておりました。シュウシュウ様以外、誰とも夫婦になるつもりなどありません。生涯一人でいいと。ですが、シュウシュウ様が一度死んだ身となった今、私の申し出に賛成なさっているのなら…隠れてでも、二人で生きていきたいのです」
シュウシュウは多英の足にすがった。
「私はこれまで何でも多英、あなたの言うことを聞いてきました。お願いです、このまま砂瑠璃殿といられるのなら、私は身分など…」
「身分? 身分どころか、死罪です、死罪です。貴女は何にもわかってない。わかってないのです、シュウシュウ様」
多英がへたりと床に座る。シュウシュウが慌てて叫び、周りの侍女達に助けを乞うと、侍女達が慌てて多英を抱えて部屋に連れて行った。多英は多英らしく、「一人で歩けます!」と弱々しく叫んでいた。
下男や残った侍女達は、砂瑠璃と目が合うとさっとその場から離れていった。
砂瑠璃は泣きぬれたシュウシュウを見た。
「私は、こんな身体となりました。ですがあなたが今、他の方に求婚されて、それを喜ぶべきと分かっている。分かっていますが、もう、心が引き裂かれてしまい喜べない。私と一緒にいてくれませんか。世迷言だと思われるかもしれない、ですが…」
砂瑠璃は、泣きぬれたシュウシュウの側へいき、愛しい顔を見ている内に、自分の話してる言葉を忘れた。そして、可愛らしい唇を見つけて強く自分の唇を押し付けた。
戻ってきた数人の侍女達はその光景をみて、慌ててまた頭を下げてその場を離れた。
二人は床に座りながら、まるで一つの石であるかのようにぴったりと二人は唇を重ねながら固く抱き合った。
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