砂瑠璃のその後

砂瑠璃は、シュウシュウの壮大な葬儀の最中、王宮から消えた。



軍隊から消えることは死を意味する。叔父のガンムが血眼になって探したが、誰も行方を知らなかった。



ガンムは王に暫くして砂瑠璃は「亡くなった」と報告した。



戦地へ向かう途中、崖から落ちてしまい、遺体も引き上げられなかったと。その話は当時、体が回復していたハクの耳にも入った。



ハクは当時、シュウシュウの死を聞いて、葬儀にと動揺していた。だからそんな話は気にもとめなかったが、シュウシュウが生きてるとなると話は別だった。だが、ハクは東新の国王であるハルを倒し、西海を鎮圧しなくてはならない。



堂々とシュウシュウを迎えにいく。それがハクの希望だった。




王は病が進み、迫力がなくなっていた。そして病でなく、不吉な予感に恐れ、怖がりながら生きていた。次の国王候補は第一婦人の瑠璃の息子だ。




瑠璃は王の側にいた。そして王の加減を聞きながら、毎度反応のないぼうっとしている王に憎しみの目を向けて、はっきりと言った。



「結局のところ、最後まで隣にいるのは、私です。誰でもない。私、瑠璃なのですよ、王様」



その言葉に王は振り返った。テンそっくりな瑠璃がじっと恨みがましく自分を見ている。


最後までパナンや更紗のように愛せなかった性格のきつい女の顔を、王は初めて見たかのようにしげしげと眺めた。




ーーー




砂瑠璃は山奥にいた。


砂瑠璃自身も自分がどこにいるかわからず、山の獣を殺しては生き抜いていた。



「将軍」であった頃の砂瑠璃とはうってかわり、浮浪者そのものの姿であり、背が高く逞しさはそのままであるが体は汚れており、汗、獣の匂いで臭かった。



髪はからまるので一つで縛っていた。元々綺麗好きであったはずの砂瑠璃であったにも関わらず、無頓着であった。自分の身に構わなくなっていた。何ヵ月も水で体を洗わず、痒くなればたまに川にいく。



何も考えずに過ごしていた。腹が減ると罠を仕掛けた山に出る。水をくみ、山に掘っ立て小屋を作り、誰にも会わずに住んでいた。一年近くそんな生活だった。



そんな砂瑠璃とたまに会う人間といえば、迷い混んだ旅人か、薬草取りや漁師であった。だが、砂瑠璃の姿を見ると、皆慌てて逃げていった。








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