思いがけない再会
医務室に、いつもいる小太りの医務官も王に使える医師もいなかった。
誰もいないといろんな物が置いてあるにも関わらず、医務室も広く感じるとシュウシュウは思った。
シュウシュウは砂瑠璃にはもう会えないと思った。静かに医務室の中を眺めながら歩いた。だが、その先にじっと座ってる人間が見えた。
あまりにも静か過ぎて、シュウシュウはその男の存在に気がつかなかったのだ。慌てて部屋を出ようとすると、男がシュウシュウに気がついた。シュウシュウは付き人も付けずに王宮を歩いてることがばれてしまうと慌てたが、なんと、その男は砂瑠璃であった!
「シュウシュウ様! ご無事で何よりです」
砂瑠璃が長椅子から立ち上がり、拳を合わせてシュウシュウに頭を下げた。シュウシュウは驚いて砂瑠璃を見た。
「砂瑠璃様」
拳を下げて砂瑠璃が顔を上げた。シュウシュウにとって愛しいその顔面には赤黒い線が真っ直ぐに引いてある。はっとしてシュウシュウは自分の口元に手を当てた。
「砂瑠璃様、そのお怪我は」
砂瑠璃が慌てて顔を背けた。「失礼致しました。醜い傷を」
「まさか、そんな」
シュウシュウは何も言えずに、よそよそしい砂瑠璃を眺めていると、いつの間にか泣き出してしまった。そしてしゃがみこんだ。嗚咽で喋れず、砂瑠璃の顔も見られない。ただ子供のように泣いて、そしてやっとのことで「心配したのです」と一言囁いた。
「私は、ずっと貴方様を心配していたのです」
シュウシュウはやっと囁いたと思うと、同時に火がついたようにわっと泣き出した。砂瑠璃が駆けよりつつも戸惑った。「どこか痛むのですか?」
「いいえ、いいえ。砂瑠璃様が怪我を負ったのかと心配でした。でも、誰にも聞けずに不安で、辛かったのです」
肩を持つ砂瑠璃の腕をシュウシュウは掴んだ。離れないように。
「私は大丈夫です。シュウシュウ様、貴女様を守れずに私は…」
「私のことはいいのです! ハク隊長が守ってくれました、大丈夫です。私は皆に迷惑を」
砂瑠璃がハクの名に顔を背けた。「砂瑠璃様?」
「私に敬称などいりません」
砂瑠璃がシュウシュウの手を自分の腕から外し、少しだけ離れる。シュウシュウは傷ついた。
「なぜです。何がいけないのです。私が砂瑠璃様を心配してはいけないのですか? 迷惑でしたか? 」
「いや、まさか、そんな」
砂瑠璃は黙って立ち上がると寝台にまた腰をかけた。そして両手で頭を抱え込んだ。シュウシュウはそれを悲しげに見た。呆然と、泣きはらした顔で砂瑠璃に呟いた。
「砂瑠璃様。私はいつも砂瑠璃様に迷惑をかけているのでしょうか…」
シュウシュウの心はもうぼろぼろだった。砂瑠璃がはっと顔を上げ、首を振った。「いいえ、そんな。まさか」
シュウシュウは立ち上がると砂瑠璃の側へ近づいた。だが、砂瑠璃の隣に腰をかける勇気がなく、立ったままだった。砂瑠璃が立ち上がり、「お掛けください」といった。そしてシュウシュウが座ると自分は膝をついてシュウシュウの前に座った。
二人は向き合う形となった。
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