ハクの秘密の護衛
そこにいたのは、ハクにつけられた護衛の一人リャンだった。ハクの養父である多喜大臣は王に内密でハクに護衛をつけていた。護衛であり、ハクの部下だった。黒っぽい衣装に顔に黒い頭巾もしている。
「いつからそこにいた」
ハクが怒りに燃えた目を隠さずにリャンを睨み付けながら尋ねる。
「ハク様、私は…」
「いつからだ? 」
「慈恵安泰婦人が気を失う少し前です。灯りが…」
ハクはゆっくりシュウシュウを横にして立ち上がって、脇腹が痛むのにも構わず黒装束に近づき、顔をはたいた。頭巾が外れる。彼は兎口であった。
「ハク様、慈恵安泰婦人は頭から出血なさってます。早く王宮へと戻りましょう。手当てをしなければ」
頭巾を直しながら黒装束のリャンが言う。
「今、我々はハク様を見つけましたが、王宮の者も先程見かけました。ここに辿りつくのも時間の問題。誤解があっては…」
「誤解。誤解か。どういう風にお前には俺と慈恵安太婦人が見えたというのだ」
ハクはわざとゆったりと聞いた。シュウシュウをまた抱き抱えた。
「…」
「言ってみろ」
「親密に見えました」
「親密、か。そうだ。その通り、我々は親密だ」
ハクは答えた。リャンはハクが何が言いたいか分からず戸惑ったまま膝をついていた。
「この方は私の妻となる。東新の国王の妻ではなく、眞の国王の妻となる」
リャンはハクの言ってることがわからなかったが、すぐさま顔をあげた。
「では、ハク様。決心なさったのですね」
またハクが護衛を睨む。
「もう決まっていることだ。運命ははじめからこうと決まっていたのだ。何を今さら驚く事がある。早く己龍達を呼べ。シュウシュウ様を運ぶ! リャン、お前は運ぶのを手伝ってから戻れ。機を待つ」
護衛は頭を地につけていった。
「あなた様は二つの国の王!どこまでも従います」
そういって洞窟の外に出たかと思うと数人、人を連れて戻ってきた。
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