砂琉璃の凱旋
シュウシュウが王への挨拶をすませ、席へと戻ろうとすると、遠くで声が響く。まぎれもなく「砂琉璃」と呼んだ。
初めは聞き間違いかと思った。
シュウシュウが遠くに、王へと向かい歩く甲冑をつけた男を見る。それは紛れもなくあの砂琉璃であった!
まさか、そんな。シュウシュウは砂琉璃が死んだものだと思っていた。
心臓は高鳴り、眩暈がして倒れそうになったが、シュウシュウは前を向き、目を見開き、手を固く結び直して顎をあげて真っ直ぐに歩いた。高い檀丈の席へ着くなり、砂琉璃を真っ直ぐに見下ろしたのだった。
後方に仕えている多英は砂琉璃の名前を聞き驚いて思わず顔を上げた。葉月もだった。
シュウシュウの側近である二人はシュウシュウ同様、砂琉璃は落馬して亡くなったものだと思っていたのだ。
多英はシュウシュウを慌てて見た。見ると言っても少し離れている。
シュウシュウは顔色ひとつかえずにしずしずと歩いて、席に戻って優雅に腰をかけた。
多英はほっとした。だがすぐさま眉間に皺が寄った。砂琉璃に対して親しみを持つシュウシュウを多英は気にしていたので、多英は砂琉璃が亡くなったと聞いてほっとしていたのに。
だが、何と、生きていた!
砂琉璃は王から戦の功績を褒め称えられていた。
シュウシュウの伸びた美しい背中からは、多英は何の感情も読み取れなかった。
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