悪い予感ほどよく当たる
屋敷についた砂琉璃とアカツキは盛り上がってる男達と次々に挨拶を交わした。
だが、二人がトバリの姿を探すと物静かな所にいるトバリをみつけた。人か壁かわからないほどで生気がないのをみて二人は驚いた。
そして、アカツキと砂瑠璃はさっきまでの会話からガビとの間に何かあったのではと考えたが、ここにガビはいない。
匪賊長のゴスはアカツキ達に会いご機嫌であった。砂瑠璃達は彼の機嫌を今損ねるのは避けたかった。そして、ゴスが陽気に二人に話しかける内にトバリはいつの間にかどこかへ消えていた。
小柄で筋肉隆々のゴスに、アカツキは西海を責める作戦を話し始めていた。そして、西海の何点かの重要な拠点を打ち破る褒美として、ゴスとアーレンは仲間を連れて東新の武官として帰り咲けると聞いて喜んだ。
伝報を走らせていた為、宮中からもちゃんと返事がきていた。その文をアカツキがゴスに渡すとゴスは皆の前でそれを読み上げた。
匪賊として生きるしかなかったゴスはこれに心底喜んだ。そしてまた、東新の武士達がこれからは集落を守るということで、それは名誉なことだと集落の村長は喜んだ。
そして隙を見て、砂琉璃はそっと部屋を出た。ゴスは宮中の手紙に喜び酔いしれていたので気付かないでいたが、アカツキも砂琉璃の後を追った。
長い廊下を二人が早歩きで歩いていると反対側からもこの村の出身のような、身なりのいい青年も歩いてきていた。ゴスの部下の匪賊は身なりや髪型も違う。そして、頭の横をそりあげるか縛り、髪を長く垂らした者が多い。
だが目の前の男は肩くらいまでの髪を一つに縛ってるだけで恰好も農民風であった。馬に似た顔をして、にこにこしている。
アカツキが横手に空いていた部屋を横目でみて、慌てて後じさった。だがすぐさま、中へ入った。砂琉璃も後を追った。砂琉璃の目には、真っ直ぐにトバリの方へ向かうアカツキと、腹を刺されて真っ赤に服をそめて苦しみながら手を空でかいているガビの姿が映った。
ガビはひたすら片方の手で空中の何かを掴もうとしていたが、それはいつしか痙攣となり、腕も顔も震え始めた。
すると後ろから叫び声が聞こえた。さきほどのおだやかそうな男が真っ赤な顔をして叫んだ。「ガビ。俺のガビ! 」
宙をみてぼんやりとしていたトバリの目が怪しく力を宿した。
「俺のガビ? 俺のガビだと? 」
「あんた、何をした!? 俺のカビだ! 12の頃から俺の嫁になるって決まっていた! 最近会いにも来なかったのは、仕事が忙しいとばかりに・・・」
「え、え、え、エイマ・・・・。たすけ」
ガビが痙攣した状態でも喋ったことに砂琉璃は驚いた。
「待ってろ、待ってろ、俺が助ける! 」
涙でぐじゃぐじゃな顔で振り向いたエイマは、助けを呼ぶかと思いきや、トバリに向突進していった。トバリはぼやんとした顔になった。まずい、このままではと砂琉璃が思うと同時に、アカツキは腰の刀を抜き、さっとエイマを切った。
そしてそのまま振り向きざまに、ずっとぴくぴくと動いて「エイマエイマエイ・・・エ、エ」と壊れた玩具のようだったガビの胸をひとつきした。
ガビが事切れると、トバリはとすんと腰を落とし、ガビを眺めながら泣き始めた。
「私を愛してなどないと・・・。ガビが言ったんだ。私は弄ばれたんだ・・・。だから、私は・・・」
「トバリ、黙れ! 」
アカツキがそう叫ぶと同時に、ゴスや集落の者達が部屋へと入ってきた。
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