ガビ
ガビは集落で親同士が約束した相手である農家の息子、エイマの事はそれまですっかり忘れていた。
エイマは大きな体にのっぺりした優しそうな顔をした、呑気そうな男であった。ガビはエイマしか知らない時はエイマを焦らし、自分に恋焦がれるよう仕向けては楽しんでいた。
だが家族の為にこっそりとお屋敷の仕事に出てからは新しい世界に夢中であった。新しく出会う人間は洗練されているように見えた。
そして、屋敷の人間は匪賊の人達とも仲良くしていた。匪賊に若者はいた。ガビにとってそこは天国であった。だが、匪賊と夫婦となれば親が何というか。そこへトバリの登場である。
トバリはアカツキや砂瑠璃に比べて小柄で顔もぱっとしないが、体を重ねていくうちにガビはすっかりトバリを気に入っていた。
ガビは今までの戯れの男と同じようにトバリを誘い、そして焦らし、駆け引きを楽しんでいた。ガビが思ったよりもトバリに早く体を許してしまったが、砂琉璃やアカツキが手に入らないことにがっかりしていたので仕方がないとガビは自分を慰めた。
そしてガビはトバリが、自分を蓮っ葉な女ではなく、姫様のように扱うのがうれしかった。今までの男ではこうはいかない。
この男の妻になれば食うに困らない。そしてこの男は死ぬまで自分の思い通りに動く、そう思った。その思いはガビを少しは満足させた。少しだけ。欲を言えばアカツキのような二枚目か、砂瑠璃のような権威を持ちそうな男がいい。
だが、それは難しいかもしれない。トバリでいいじゃないか?
それにこのことを知れば自分の親も兄弟たちも喜ぶ。それを思うとガビは自然に口元が緩むのだった。
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