王宮への旅路

 シュウシュウの婚姻は半年も先だが、王の命によって王宮で暮らすようにと使いがきた。


 シュウシュウは一番いい衣装を着た。空が高く、日も短い。寒い季節へと移ろいゆく頃であり、物さみしさがシュウシュウの胸をついた。


 だがそれは一時のことで、道のりは長いのでシュウシュウは年老いた多英たえいを心配した。野営しながらなので付き添いの人も多く雇い、荷物も人も多かった。シュウシュウは薄黄緑の縁どりをした着物を優雅に着こなし、花の蕾のような愛らしい顔に化粧を施された。


シュウシュウは何より目が力強く美しかった。そして、心根の美しさがそのまま表れている今にも花が咲きこぼれそうな美しさであった。多英に連れられ、輿に乗るように促されると、シュウシュウはその前でふと立ち止まった。


多英たえい。一緒に輿に乗る?広いわよ」


 シュウシュウがそう言うと、多英たえいはシュウシュウの予想通り怒るのだった。シュウシュウはため息をついた。


「これからは王宮の決まりを守るのです。下じもの者にそんなお心遣いは無用です。凛々しくあってください。バカにされてはなりません。隙を見せてもいけませんよ」


「でも、多英たえい…」


「私はそんなに年老いてません。必ずや、シュウシュウ様と、シュウシュウ様の子供の面倒も私が見ます」


 シュウシュウはやっと笑顔を見せ、輿にのった。



 やれやれ、シュウ様が他の婦人達から苛められないようにと思っていたが、これでは召し使い達からも侮られるかもしれない。多英たえいは心配した。




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