ガンムの強さ

 ガンムは屋敷近くへ来ると、木々の合間から家や門へとさっと目を走らせた。この屋敷を手に入れたのはこれも理由のひとつだった。外のとある場所から屋敷の様子がわかるのだ。賊からジアを守りたかったのだ。


 ガンムは見慣れた庭に、見知らぬ男を見つけた。数秒黙ると、するりと剣を鞘から抜いた。砂瑠璃さるりが驚いた。


「馬の蹄の音がする」


 シュウシュウはジアに小声で囁いた。


「ガンム様かもしれない。ジア様?」


 シュウシュウが小声で呼びかける。ジアはなにも答えない。シュウシュウがジアを振り替えると、ジアは息が出来ないのか、苦しそうに喘いでいる。混乱しているようで返事かない。「ガンム、ガンムに…」ジアが囁いている。


 シュウシュウは小刀を握りしめ、入り口へと向き直る。早く、ガンム様。多英たえい。気がついて、と祈りながら小刀をまた構えた。


 ガンムは馬で一気に屋敷まで駆けた。庭の男が気づいたときには、もう男は肩をざっくり切られていた。ガンムは馬から降りて叫んだ。


「ジア!」


 そのまま屋敷の中に入ると、下働きの女や男が死んでいた。そして、二人の男を見つけた。


 ガンムは相手が剣を抜く間もなく切りつけ、もう一人も容赦なく切りつけた。

 だが、一人には致命的なものを与えなかった。



「楽に死にたくば、ここの女主人がどこにいるか言え。言えば楽にしてやる」


 男は痛みにぎゃあぎゃあと喚くのでガンムはさらに男の二の腕に剣を突き刺した。男が一際大きな悲鳴をあげた。


「次は足だぞ。女主人は生きてるのか?」


「生きてるっ、生きてるっ!ここにはいなかっ…」


 ガンムは男の胸に剣を突き刺した。


「ジア!」


 振り替えると目を丸くしている砂瑠璃さるりと目があった。砂瑠璃は血を吹き出して倒れてる男を見ている。


「叔父上…」


「ジアをさがせ!」


 大股でガンムは部屋を出ると、また茂みにいる男を見つけてすぐさま砂瑠璃に叫んだ。


「矢をはなて。外したらお前を殺す」


 砂瑠璃は、さきほどまでの動揺はどこへやら。命令されるとともに、硬くなった手足が心とは逆に動き出した。冷静に男に狙いをつけてすぐさま放った。砂琉璃は矢に自信があった。逃げようとした男の腰に当たり、男は倒れた。ガンムは大股で近寄った。そして倒れてる男に剣を突きつけた。


「ここの女主人はどこだ」


「知らん!まだ見てもいない!」


「お前達はいつ、ここへきた。何が目的だ」


「少し前だ。お願いだ、俺は頼まれただけだ…」


 そういって、若い男ははっとした。いうべき言葉を間違えたのだ。


「誰にだ」


 ガンムが恐ろしく静かに問う。細い目付きも感情の読み取れない顔も、男を震え上らせた。


「それは」


「叔父上!」


 ガンムは砂瑠璃に呼ばれ、男の脇腹にまた剣を突き刺したがそれは逃がさないためだった。急所を外したのだ。そして砂瑠璃さるりが馬小屋へと手招きするのでそこへと向かった。

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