多英
「獅子というのは
シュウシュウが膨れっ面で
「獅子の御守り」
と言ったら笑われたのだ。
涙袋の大きい、小柄な多英は小太りの年寄だった。彼女は呆れたように、シュウシュウを見る。
「いいんですよ、シュウ様。私の言う獅子というのは確かにあの猿のことです。呼び名が違うだけでございます。誰がなんといったか分かりませんが…」
「ジア様よ」
「全く、あんなに恐ろしい家に入り浸っていたとは」
呆れたように
多英は飲み水を使った。
「後でシュウシュウ様の部屋に食事を運びます」
「
「召し使いは一緒には食べません」
「教育係でしょう?」
「教育係も一緒に食べません」
「乳母なら食べるわ」
「食べません」
それでも多英はシュウシュウを可愛がっていた。
「多英。あなたは本当に召し使いなの?他の皆があなたのこと、『多英様』と呼んでるのを知ってるのよ」
多英は驚いた顔をした。
「あなたは皆から尊敬されてるのよね。私、嬉しいのよ。正直に言ってちょうだい。あなたは、きっと、占い師か何かでしょう」
多英はのけぞって笑った。歯が数本しかない。いつもはそれを見せまいとして笑わないでいるので、シュウシュウはそれを見て嬉しくなった。
「つまらないこと言ってないで、食事をすませたら湯浴みですよ。全く女の子が湯浴みが嫌いとはねぇ」
多英はぶつぶつ言っていた。
「何でジア様の家が恐ろしいの?何で?幽霊でもでるの?多英。多英ったら…」
「全く、シュウシュウ様が黙るときは寝てるときだけ…」
「多英、お願い。誰にも言わないから!」
シュウシュウは多英について回り、また叱られるのであった。
シュウシュウは母親が早世しており、
シュウシュウは寂しくはなかった。
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