ジアとガンム

 ガンムはしばらくぶりに家に戻った。


 東新とうしんの国と西海せいかいとの小競り合いが続いていた。東新はガンム率いる大軍もあって、他のどの国よりも強くもあったが、西海も大国であり勝負が長年つかずにいた。


 眞という小さな国も海の近くにあった。物資の豊かな国だ。東新と西海の二つの国を挟んだ所にあるが東新との友好関係を長くとっていた。眞はもともと東新の王家と婚姻関係も多く、従属しているとみなされいた。


 ただ、戦には東新へは武器などはよこすが兵は出さないとしていた。


近年は戦が多くガンムは面倒ではあったが、ガンムにとって、戦は生きるために必要なものとなっていた。今さら、狩りでもして生きるのか?牛飼いにでも?無理に決まっている。


 ジアは何も言わないが、死ぬほど自分を心配している。また、この長い留守の間に暗く落ち込んでいなければいいが。体に差し障る。ガンムはジアを思うと何年経っても胸が弾むのだった。


 王宮で血を洗い流したものの、ジアは鼻がきく。すぐに着替えてまた湯浴みでもしなくてはならないが、とにかくジアに会いたい。


 ガンムは妻をジア一人としていた。それ以外の女人など考えられない。ジアを少年の頃から愛していて、今もそれは変わらない。何人なんぴともジアの代わりにはならない。そして、あの美しいジアが容貌が優れてもない自分を愛していることがいまだに信じられないでいた。ガンムは自分の邸宅へと馬ごと入っていった。


 馬からおり、急いで庭の隅の小屋に馬を繋ぎながら叫んだ。


「ジア!」


 ガンムが喜びに満ちた低い声が響く。家の中から美しいジアが飛び出してきた。そして、履物も履かずに外にいるガンムめがけ駆け寄って、ジアはガンムに抱きついた。


「ジア、まだ体が汚れている」


 ガンムが嬉しそうに、そしてジアの顔色をいつものように調べる。体調を崩してないか。きちんと食事をとっていたのか。


 ジアは泣いていた。ガンムが驚いた。


「何かあったのか!」


「あなたが、長く留守にしていました」


 ガンムはジアのいってる意味が分からずおたおたとジアを見るばかりだった。


「嬉しくても人は泣くのですよ」


 ジアが笑ってガンムを見上げると、ガンムはその笑顔に魅せられたままジアを抱きかかえ、しっかりとした足取りで部屋へと入っていった。

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