第9話
「……なるほどな」
「それで聞きたいことは全部か?」
「あぁ、これで全部だ」
あの後、レイにひたすら質問を続けたところ、かなり多くの情報を得られた。
まず、この世界の勢力について。
この世界は大きく6つの大陸に分かれており、国は10ヶ国存在する。俺のいた世界から考えると、かなり少なく思えるが、侵略などが普通に起きているらしく、周りの国が喰われていったことにより、この少なさになったのだろう。
国は、ザハル帝国、パレオン神国、ティファレーゼ妖精国、大和国、アガリア魔国、デリマ武国、テミラン小国、クスマ獣国、アルゼッド小国、そして俺の今いるガリア王国。
このうち、テミラン小国と、アルゼッド小国、クスマ獣国、ガリア王国は同じ大陸に存在しており、同じように大和国とアガリア魔国も別の大陸で同じ大陸に存在している。
残りは一つの大陸を一つの国が治めているそうだ。それほどの規模で国を成り立たせているとは、大したものだ。
それと、テミラン小国とアルゼッド小国は、ガリア王国の植民地のようなものらしい。各国に、王はいても、傀儡であるとのことだ。
というか、この話を聞いたとき驚いたのは、魔王のいる魔国が、そもそも違う大陸にあるということだな。そこまで離れていては、相手が攻めることなどできないのは、すぐにわかることだ。あの王たちは、いつまでその嘘を続けられるのだろうか?
また、他にも聞きたかったこととして、迷宮の話だが、やはり予想通り、一つの街に一つあるものらしい。というよりは、迷宮のある場所に街ができている、というのが正しいようだがな。しかも迷宮が突然現れた、なんてこともあるようだしな。
迷宮というのは、素材の生産場所だ。迷宮内の魔物を倒せば、魔石が手に入り、場合によっては食材さえも手に入る。どういう仕組みかはわからないが、魔物が尽きることもない、らしい。
ただ、迷宮というのは層ごとに分かれているらしく、迷宮によって階層の数も、難易度もまるで違うらしいのだが、その最下層に存在するボスを倒せば、迷宮は沈黙する。つまり、魔物も湧かなくなり、ただの広い空間と化す。
ごくまれに、入り口を守るゴーレムがやられることもあるらしく、いくつもの迷宮を管理するのは難しいことであるため、突然現れた迷宮というのは最下層まで攻略されるものらしい。それをやれる冒険者は、どれほど簡単な迷宮であってもエメラルド以上が最低限らしい。かなりの難易度なんだろうという予想はつく。
ランク、と言えばこの世界にプラチナは3人しかいないと、レイは言っていた。なんでも、プラチナというのは一人で万の敵を相手にできるほどの強さらしく、規格外すぎる存在に付けられる称号なのだということだ。
エメラルド、ルビーも一つの国に、一人か二人が精々らしく、そんなに大勢はいないらしい。
……と、まあ、得られた情報はかなりの量だ。もっと細かいことも聞いたので、この世界において、常識を知らずに困るということはまずないだろう。
あぁ、だが、1番大事というか、有益な情報は、スキルが増えるということだな。
なんでも、レベルが上がれば、スキルも増えていくものらしいのだ。10レベルにつき、一つのスキルが増えるらしい。さらに、スキルの書なんてものもあり、金さえ払えば、スキルを覚えられるらしい。そんなに貴重なスキルは、売ってないらしいがな。
「満足したか、坊や?」
俺のことをからかいながら笑みを浮かべるレイ。その笑顔を何度も見せられている俺としては、この無駄に美人な女に馬鹿にされている感を否めない。
「あぁ、満足した。1日で得られる情報の量としては十分だ」
「そうか、じゃあ次は私のお願いを聞いてほしい」
「……お願い? なんだ?」
「私と、セラを助けてくれないか?」
先ほどまでのニヤついた笑みは消え、真剣な顔で俺にそう、レイは告げた。
既に、ここにきてから4時間が経ち、日も暮れ、空が暗くなってきた頃だった。
異世界転移、悪の道 白村 @whitte
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