第2話

 翌日、僕たちはあの絢爛豪奢な大部屋ーー後で聞いたところ王の間らしいし、あのしゃべってた人は王らしいーーに呼ばれた。なんでも、この世界の現状について教えてくれるらしいが……。


「では、順を追って説明させていただく! まず、勇士様方はステータスというものをご存知かな? 」


 ステータス、か。漫画や小説なんかでよく見る、あれだろうか。


「ステータスというのは現在の勇士様方の強さを数値化したものとなります。ステータス表示のためにはこの紙が必要ですので、今からお配りいたします」


 僕たちの手元に少しざらついた紙が配られる。


「その紙を持ったまま『ステータス表示』と、言葉にしてくだされ。」


「……ステータス表示?」


 その言葉によって、紙に文字が浮かび上がってくる。



名前 桜花 錬

種族 人間


LV 1


STR 56

DEF 63

AGI 78

INT 42

LUK 80


SKILL

状態異常無効 A

アイテムボックス S

絶対守護領域 SS+

正負反転 A

直感 B+



 ……強いのかどうかもわからないな。ただ、この絶対守護領域というのはずいぶん強そうだ。どういうスキルなんだろうか……。


「平均的には、能力値は20前後、スキルはランクBがあれば上々といったところでございます。どうでしたでしょうか?」


 ……あー、強いのか。なるほど。


「うおっ! おれ、Sランクとかあるぞ!」


「私なんか、Sランクが2つよ!」

 

 ……ま、俺ばかりがとびぬけてるわけでもないか。


「おお! それはすごい! さすがは勇士様方です!」


「は、はは! やっぱすごいんだ、俺たち」


 颯太、完全に増長してんな……。


「では、皆様方、これからについて話したいと思います!」


 王様がそう声を上げる。


「まず、皆様方には3か月ほど修業を積んでもらいます! いくらなんでも、いきなり実戦というのは重すぎますからな! その後、戦闘に参加していただきたいと考えておりますので、その時はぜひお願いいたします!」


 ……三か月。それまでは、実戦は、ない。


 なら、もしかしたら、それまでに僕がこの状況をひっくり返せるほど、強くなれば。


 みんなを、救える?


 ……これはうぬぼれかもしれない。だが、もし、僕にそれができるなら……。


 僕しかできないとすれば。


 きっと僕がやるべきなんだ。


 手元の紙にあるスキルの一つ、正負反転を見る。早速僕のスキルの、直感が告げている。このスキルを使えと。


 さあ、ここからだ。ここから僕は。


 僕をやめるんだ。


「……ぐっ!?」


 スキル、正負反転を使う。そうすると#俺__・__#の中の何かがひっくり返ったことが分かった。ああ、なるほど、こうなるわけか。だが、これは俺にとって好都合だ。


「お、おいどうしたんだよ、錬?」


 いきなり苦しんだ俺を颯太が心配する。だが、俺はそんな颯太を……。


「触るな」


 突き飛ばす。


「・・・えっ?」


 突き飛ばされた颯太は、何が起こったかわからない顔をしている。ああ、悪いな颯太。


「く、くくく、はははははは!!」


 その場で俺は高笑いをする。


「ど、どうしたの錬くん……?」

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